第2話
なんてことだ!
とにかく何とかしてここを出なければ!
慌てて、ドアを探す。
さっきまでは、気が付かなかったが、
改めて見ると、ここは間違いなく、
ハムスターの檻の中のようだ。
しかしそんなことに構っている暇はない。
外に出れば、何か理由が分かるかもしれないのだ。
出入り口を見つけ、ドンドンと叩いてみる。
全く、ビクともしない。
今度は、思い切り体当たりをかましてみる。
ガタガタと音を立てるが、開きそうにない。
こうなったら、もうヤケクソだ。
檻をガジガジとかじったり、何度も体当たりを繰り返す、
30分ほど奮闘したが、扉はビクともしない。
疲れて、その場にぐったりと倒れこむ。
「ああ・・・なんてことだ・・・夢なら早くさめてくれ。」
すっかり途方に暮れる俺。
その時、ふっと美味しいニオイが漂って来た。
無意識に鼻をひくつかせてしまう。
「何だ?初めて嗅ぐニオイだ。」
ニオイの元をたどると、そこには・・・。
「これは!!ヒマワリの種だ!!」
ラグビーボールよりも大きいが、それは紛れもなくヒマワリの種だ。
こんなうまそうなニオイをさせてるなんて、
今まで気がつかなかったぞ。
「・・・」
思わず手を伸ばす。一口食べてみたい衝動に駆られる。
いや!何をやってるんだ俺は!
俺は人間だぞ?!いくらうまそうでも、
これはハムスターのエサなんだ!
慌ててヒマワリの種を放り投げる。
それにしてもすっかり疲れてしまった。
気が付けば、喉がカラカラだ。
水を飲みに行こうとして、
ふと、自分が、ハムスターのように、
水を飲む姿を想像し、
慌てて首を振った。
あんな赤ん坊みたいな格好で、
水なんか飲めるか。俺は大人の男なんだ。
しかし朝から叫び続けたためか、なんだか喉が痛い。
だからといって、あんな可愛い姿で水を飲むわけにはいかない。
給水機の前で、しばらく思案に暮れる。
よく考えれば、俺以外は誰も見ていないのだ。
そして、この喉の渇きはいかんともしがたい。
・・・仕方がない。水を飲もう。
管の先の球を、そっと舌で押してみる。
少しずつ水が流れ込んでくる。
「うまい!」
そういえば朝から何も飲んでなかったな。
思わず管を両手でしっかりと掴む。
素早く球を押すと水が、一気に喉に流れ込んで来た。
なんてうまい水なんだ!
われを忘れて、夢中で給水機の水を飲む俺。
・・・・なんか、涙が出てきた。