うみをわたり……ません
前回のあらすじ!
みなみのしまのだ……。
「やめろ! それ以上を言うとタイトルで済まされねぇ!」
あっはっは! ハメハメハーっ。
では始まり始まり~!
海の前で立ち往生する羽目になった桃太郎一行は、しばらく海岸沿いを歩きました。その先には、小さな桟橋が見られます。
どうやら近くに、人が生活しているようです。
あ、ほら。桟橋にある小舟に、人の姿がありますよ!
よかったですねぇ桃太郎さん! ちょっと毛深い方ですけど!
「いや…………」
およ? いかがしました?
珍しく困ってます?
「人影っつーか……」
ものすっごい苦い顔されてますが、何か不満でもあるんですか?
「ロバだが」
………………。
珍しく真面目な顔するから何かと思えば、そんな些細なこと!
ロバに見えるからってなんですかっ。人がいる証拠じゃないですかー!
「お前、間違えた事くらい認めろ」
間違えておりません。
「認めろ」
ねえ、この作品の読者は何人いると思う?(BGM:Dirty Work)
「は? 急になんだよ」
てーれれってーてーれれってーてーれれってー……
三十五億!
「あほか」
桃太郎 with B。
「わーおもしろーい(棒読み)。それがやりたかったんだねー、すごーい。君は流行りに詳しいフレンズなんだねー(棒読み)」
………………桃太郎さんだって、大概ネタキャラじゃないですか。
「あ? 何か言ったか?」
あ、向こうから、釣竿と魚籠をかついだ人がやって来ましたよ。
「誤魔化せてラッキーとか思ってるだろ、お前」
はて?
「おおい、おまえらー。そいつは鬼に差し出す生け贄だから、近づいちゃならんよぉ」
ほらほらっ桃太郎さん! ちゃあんと人がいたじゃないですか!
わたくしは間違っておりませんよー!
ああほら! ロバが悲しそうな瞳でこちらを見てますよ。
市場に続く道ではありませんがね!
「それはギリギリアウト臭いからやめろ」
気にしません。
その時はその時です。
天命を全うします。
「……オレ、ラスボスが地の文だって言われても、多分驚かねぇわ」
あ、それはないので大丈夫です。
お約束過ぎるので。
「お約束に成り得るくらい、やらかしてる自覚はあるんだな?」
はて? 存じ上げません。
それにこれは『桃太郎』の物語。退治するのは鬼であって、プリティーな地の文ではないのです!
「うわ……正味引くわ」
ぐっさー!
地の文は心に五千のダメージですよ!
「五千のダメージくらっていて、なおもぴんぴんしてるお前が怖いわ」
いやいや、普通です。
SAN値はまだ余裕です。
「黙れ。話が進まねぇ。――――っていうか、なんで生け贄がロバ?」
え? だって、犬、ニワトリ、猫って来てるんですよ?
鋭い方ならもうとっくに気がついてるとこですよ?
次に来るのはロバに決まってるじゃないですかー!
目指すはブレーメンですよ!
音楽隊が出来ましたー!
「まじかよ」
ちなみに、wish BのBは、ブレーメンのBです。
「まじかよ!」
あと安心してください。
あなたのパスポートは取得済みです。
「なんで?!」
海を越えるなら必要でしょう?
「鬼ヶ島は海外か?!」
おやおやー?
日本で一番有名なヒーロー(笑)なのに――――。
「それ前に聞いた。くどいわ」
………………。
全くっ。日本の中古ヒーローのくせに、漢字も解らないんですね!
「失敬な。せめて最古って言え」
「おおーい、おまえら鬼退治に来たんけ?」
「あ。ええ、まあ。そういう事になってます」
あ、野生の釣り人、まだいらっしゃったんですね。
なってますってなってますって、うぷぷ! 丁寧な桃太郎さんって不気味ですねぇ。
「黙れ駄文」
だが断る!
「悪いことは言わねえ、怪我しないうちにけえりな」
「……この話に出てくる人間って、大概オレの話聞かずに進めるよな」
心配してくれてる釣り人に、なんて言い種でしょう。罰当たりヒーローめっ。
「はいはい、オレはやりたくてやってる訳じゃねえからな」
むむむ。地の文をテキトーにあしらうなんて、いい度胸で――――。
「聞き飽きた。ワンパターン過ぎんだよ」
ぐすん。桃太郎がいじめる。
「いじけんなめんどくせぇ」
いじけてません。
「いじけてるだろ」
いじけてないもん。
「もん」
…………………………。
ほら! 釣り人が難しい顔して唸ってますよ。
リアルの人間と会話してください。
「リアル? ……突っ込み待ちか?」
違います。
「舟なぁ。悪いが出せないづら。きょうび月が逃げ出した夜だからなぁ。鬼が生け贄求めてやってくるぜよ。ウチで大人しくするだよ」
どうやら今日は、向こうから来てくれる日みたいですね。
よかったですね! 向こうから来るなら、舟借りる手間省けますよ!
「いや、良くないだろ。――――あの、ならば、舟だけでも借りられませんか。我々だけで行きますので」
向こうから来るって言ってるのに、融通効かない人ですねぇ。
「よしとけよしとけ。夜になれば恐ろしさが解るべ。その為の生け贄さ」
「生け贄を求められているんですか」
ほらほら、釣り人にも宥められてるじゃないですか。
「うっせ。様式美だよ」
桃太郎さんが様式美! 桃太郎さんが様式美!?
もうはっきり言いましょうよ! オレがテンプレートだって!
「うっせ駄文。うっせ」
桃太郎さんがアホなこと言うから、釣り人さん腕を組んで困ってますよ。
「んだんだ。何せやつらの姫は、けったいな妖術を使うらしいべ。生け贄ださねっど、男どもがみぃんな骨抜きにされちまうらしいぞ」
「妖術、ですか」
「ああ。なんでも、地に落ちた天女様が鬼になられたとか」
美しいって罪……! ってやつですかね。
「どんなナルシストだ」
我美しき故に我在り。みたいな。
「意味わからん」
「だから、悪いことは言わねえ。おらたちの村はこれでどうにかなっでるから、刺激与えないでくんろ。ほなな」
「あ……はあ……」
ちょーおっ! 桃太郎さん!
何気の抜けた声出してるんですか!
「いや……。ここまで地方性もお留守とは、恐れ入るなぁって思ってな」
………………。
ああ……! 釣り人が去っていきますよ?!
「無視か。いいけどな。方々に怒られるのはてめえだ」
舟っ。あのロバの箱舟勝手に借りていいんですか?!
いいーんですよっ。
「なにその、洪水来たら一発で沈みそうな、安定感ない響き。あと、勝手に決めるな。泥棒はお前か。お前の音楽隊が、お前を成敗するぞ」
えー。やだー。
だって、ほら、アトラクションみたいで楽しそうじゃありません?
「はあ……全く楽しそうに思わない」
なぜ、そんな溜め息つくんですか。
「さあ? なんでだろうなぁ?」
えー? 地の文わかーんなーい。
「……それにしても困ったな。思いの外ラスボスだな」
思いの外ってなんですかっ、思いの外って。
「お前の事だから、テキトーに終わらせるんだと思ってた」
失礼ですねー! こんなに働き者の地の文、他にいませんよ?!
「働き者? え? マジで言ってる?」
マジマジ、大マジです。
あと、言っておきますが、わたくしはあくまで桃太郎さんの地の文ですからっ。他のことは関与いたしておりませんよっ。
「あ、そう(どーでもいい)」
鼻をほじるなっ。ばっちい!
「だから風評被害だ」
あらら。苦い顔しちゃって、せっかくのイケメン(笑)が台無しですよ。
「誰のせいだ、誰の。アホなことばっか言ってんじゃねえ」
誉めたのに。
「お前の態度見て、十人中十人が誉めてないって言ってくれる自信あるわ」
いやあ、照れますなぁ。
「……ところで、男を骨抜きにする美女って、やっぱり乙姫か?」
受け流しよったな、この桃。
……さあ?
一先ず言えるのは、桃太郎さんのそれも、なかなかの偏見だと思いますよ。
「だって、浦島のじーさんは九十才でなお軟派の日々なんだろ」
って、話ですねぇ。
あ、でも。この前見かけた妖怪ウ◯ッチのホステス乙姫は、接待料金で寿命抜いてましたね。そういう意味では男を骨抜きにする、恐ろしい存在と言えそうです。
「……なんでそんなの見てるかな、お前は」
父が好きなんです。
「ヨハン・セバスティアンが?!」
うふふ。
扨。
「おい、どういう事だ?!」
扨々。
通りすがりの釣り人から舟を借りる事が出来なかった、桃太郎とその他動物たちは、ロバを生け贄に据えたまま、夜を待つことにしました。
悲しそうな瞳で、ロバがこちらを見ているよ。
Hey! どなっどなっ! どーなっ!
「黙れ」
次回、桃太郎! (BGM:英雄の証)
サブタイトル
『一狩り行こうぜ』
猛獣狩りに行こーよ!(猛獣狩りに行こーよ!)
槍だって持ってるもん(槍だって持ってるもん)
鉄砲だって持ってるもん(鉄砲だって持ってるもん)
あっ!(あっ……!)
桃太郎!
「あ゛?」
…………。
つ づ く!
「って言うか、あとがきくらい統一しろよ」
ふっふーん!
その方がやきもきするでしょ?
「アホか」
ちなみに、由来とか発祥とか調べたのですが、よく解りませんでした。
「へーそう」




