二光秒その3
不幸な汎用ロボットのことはさておいて、ここではカーゴロボットの後をついて行くことにしよう。
カーゴロボットは狭い通路を抜けMBHガンの心臓部に降りて行く。本来は上ってゆくと言うほうが正しいが、マイクロブラックホールの重力のせいで降りてゆくように見えるのだ。
内部では直径数十メートルの巨大な平たい円筒形の部品が回転している。よく見ると真中にスリットが入っていて、その溝の奥に二つのブラックホールが離れて固定され回転している。円筒形の外側には天文台のドームのようなカバーが付けられている。そこにもスリットが入っていてそこから亜光速に達した弾がとびだしてゆくのだ。
カーゴロボットはドームの反対側にある弾の発射装置の近くにコンテナを積み上げると、もと来た道を引き返してゆく。
次に、発射装置を見てみよう。発射装置は約4キログラムの弾を一秒間に3発、秒速10キロメートルで打ち出すことが出来るレールガンで、単独で取り出しても兵器として通用する。弾が球形をしているのは重力の影響が均一に伝わらないと壊れて破片が散らばる危険が有るからだ。
そしてレールガンから発射された弾は回転する円筒形のスリットから中に入り第一のブラックホールを追いかけるように近付き、重力で円筒の中心方向に向かって加速され、第二のブラックホールの後ろを通る。より大きな引力で捕らえられた弾はそのまま第二のブラックホールの周りを回ろうとするが、半周も回るとブラックホールが逃げてしまうため重力のくびきから解き放たれ飛び出してゆくのだった。
それではここからドーミエを離れて、MBHガンの弾についていってみよう。ただ惜しいことに光速の30%の速さでは光行視差もスターボウも見ることは出来ない。




