幼女、王都に入る
サハラ王国王都、ソニア。
知識の中にあるような、典型的な異世界の都市である。
門に着くと、衛兵らしき人が声をかけてきた。
「もうお帰りですか、スティーブさん」
「ああ、飛龍は確認した。まだ害は無さそうだし問題ないだろう」
「ん?スティーブさん、この超可愛い女の子はどうしたんですか?」
「拾った。ちょっとワケありでな、これから孤児院に連れて行く所だ。」
「そうでしたか、まあ、スティーブさんの連れなら拒む理由もありませんし、どうぞ、お通りください」
そう言って衛兵さんは門を開けた。
門の中は、まさに異世界と言った感じの街が広がっていた。凄い活気だ。飲み込まれそうだ。
「今日はホーンラビットの肉が安いよ!なんと1匹500ガルだ!」
「本日の目玉商品はこのナイフ!スケルトンのレアドロップだよ!お買い得だよー!」
私が目を輝かせて商店街を見ているとギルドマスターが話しかけてきた。
なんでもこの後は孤児院の院長と顔合わせした後、
この街での身分証明書となる、ステータスプレートを作りに行くらしい。キタコレ!
個人的にはテンプレ通りチートステータスを期待したいが、ザコから始まる成り上がりモノの可能性もある。
過度な期待はやめておこう。
暫くして、馬車から降ろされる。
降りたところは表通りから少し外れた裏通り。
目の前には少し古びた、大きな建物が立っていた。
どうやらここが孤児院っぽい。
孤児院の名前は…ロード孤児院かな?
話す、聞くだけではなく読むのもできることが判明した。理由は謎だけど、異世界語が使えるのは悪い事ではないのでスルーする。
ギルドマスターが玄関のベルを鳴らすと、
ドアが開き、20代くらいの青年が出てきた。
「やあ、スティーブさん、いらっしゃい。こんな所になんの用だい?」
「ルケイン平原で記憶喪失の少女を拾った、保護を頼む。」
「うん、構わないよ、最近ごそっと子供が減っちゃって寂しかったんだ。」
二つ返事でOKとか、それでいいのか!?
「そんな簡単に入れてくれて良いんですか?」
「ああ、孤児院はその為にあるからね。」
うおお!この人お人好しすぎだろ!……でもこの人から凄まじい「強いオーラ」がでてるんだよね…只者じゃ無いのは確かだね。
「バルドル、この子のステータスプレートを作りに行くぞ、付いて来い。」
「あいよ~」
バルドルさんも馬車に乗り込み、ギルドへ向かう。
ギルドは表通りの中でも、特に大きな建物だった。
「ギルドは冒険者用の施設だけでは無く、ステータスプレートの管理もやってるから、建物が大きいんだよ」
驚きが顔に出ていた様で、バルドルさんが教えてくれる。まあ、身分証明書の管理もしてるなら建物が大きな理由もわかるわな。
「行くぞ。」
馬車から降り、ギルドマスターに先導され、私たちはギルド内へ入っていった。