プロローグ
2章開始
「ぐぬう…」
とても女の子とは思えないうめき声を上げて
私はベッドから体を起こす。
時刻は4の刻。
日課のジョギングの時間だ。
私は浴衣からヤマト服に着替えて『虚空』をアイテムボックスにしまう。
『虚空』には超軽量のエンチャントスキルが掛かっているので、ほとんど重さは感じない。最も私は腕力が200あるので、普通の刀でも問題ないが。
ジョギングの距離は約25キロ。
孤児院がある南区画を1周すれば終わりだ。
未だ薄暗い町並みを走りぬけ、空気をを思い切り吸う。
…多分、地球の空気より綺麗なんだろうな。
このジョギングも、はじめの頃は1,2キロしか走れなかったが、ステータスが上がり、『走力』のスキルを習得した今では25キロ位はほとんど余裕だ。
孤児院が見えた!
もうすぐゴール!
と、その時、近くの裏路地から誰かが揉める声がした。
私は足を止めて裏路地を覗き込む。
「オラァ!さっさと有り金せ、ゴミ!」
「ヒイッ!も、持ってないです…」
と、テンプレ通りの悪役面の男が、私と同年代くらいの
男の子をナイフを突き付けて脅していた。
うん、ヒーローを気取る気はないけど、モラル系のスキルレベル上げの為にも助けるかな。
「ねえ、おじさん、何してるの?その子、離してあげなよ」
「ん?んんん?へへへ…このガキ、上玉じゃねえか…消えるガキが2人に増えても問題ねえな…よし、お嬢ちゃん、俺と一緒に来れば、殺しゃしねえぜ」
ワオ。最初からその子、殺す気でしたか。
それに、私まで巻き込むとは…これは流石にアウト。
「有罪」
こんな奴如きに、刀を使う必要はない。
男はナイフを持っているが、どう見ても素人だ。
ビビる必要はない。
私は何も持たずに男に近づく。
「ナイフを捨てて、帰ってください、今なら見逃します」
「ああん!?何言ってんだ、クソガキ!このナイフが見えねえのか?素手で勝てると思ってんのか!」
う〜ん、魔法撃ったら男の子にも当たっちゃうな。
細かい制御も面倒だし、あの男も耐性無さそうだし、
スキル使うか。
私は男と目を合わせ、スキルを使う。
「魅了・負!」
「っ!…かはっ…」
スキルの効果で男の意識が落ちる。
テンプテーションダウンは、耐性がない相手の目を見て発動すると、一瞬意識を落とす事が出来るスキルだ。
魅了のレベル3で習得できる。
そして、一瞬あれば十分。
「岩弾」
至近距離まで近づき、拳大の石を打ち出して男の頭に
叩き込む。
「ガペッ!?」
男は意識を失って、倒れ込む。
後ろを見ると、男の子がキラキラした目でこっちを見ていた。
「あーえっと…大丈夫?」
「うん、全然平気。その…有難うございました!」
「あーうん、取り敢えず、なんであんなことに?」
「朝の散歩をしてたら、突然あの男に襲われて…」
「…それは災難だったね。…私、急がなくちゃいけないから、このおっさん頼んでいい?一応縛っておくから」
私はアイテムボックスから縄を取り出し、男を縛りあげる。
「はい、何から何まで有難うございました!この恩は一生忘れません!」
「うん、じゃあ、私はもう行くね」
私が歩き出すと、男の子が遮る。
「あ!あの!」
「ん?なあに?」
「名前、聞かせてもらって良いですか?」
ふふ、よくぞ聞いてくれました!
偉大なる我が名は、そう、
「サクラよ」
プロローグひでえ…