事件全容
【事件全容】
循環バスが長く暗いトンネルからようやく抜け出した。その事にバスに乗っている少年は微笑みを浮かべた。
「もうすくだ・・・・・」
まだまだ風景は山と点々と建っている家だけだが、少年は目的地までかなり迫っている事を知っていた。実際、段々大きな建物が目立ってきた。
「そろそろだな。降りる準備をするか」
財布を取り出し、小銭を揃え、ポケットに入れた。リュックは背中に負う。
少年は運転手の声を一語一句聞き逃さない。
やがて、待ち望んだ言葉を聞いた瞬間、直ぐに『降りる』ボタンを押した。
流れるような動作で小銭を払い、バスから降りる。
「さてと、行きますか!」
少年がそう意気込み、一歩を踏み出した瞬間。足元に現れた青色の魔方陣の光に包まれた。
*
少女は置き部屋で荷物を運んで置き、ため息を吐いた。
「どうして私こうなったんだろう」
埃が溜まった荷物に一滴の涙が落ちた。
「私,叔父の夢を叶えたくて。国を魔王から護りたくて。召喚魔術師を目指して勉強したのに」
溢れ出る感情を抑えられず、泣き崩れる。
「師匠のバカァァアアアアーーーーーーーーッッッ!!!! どうして、私に借金を押し付けたのよおぉぉぉぉぉおおおお!!!!」
そして、叫んだ。
「いくら、ギャンブルで負けたからって、こんな借金あり得ないでしょぉおおおおおおおーーーーーーーッッッ!!!」
大量の涙を流しながら叫びまくる。
「うぐっ・・・・・誰か・・・・・助けてよ・・・・・」
両腕に顔を埋め、純粋に救いを求めた。
ーーー刹那。
置き部屋の中央にて、青色の線が浮かぶ。幾つもの線が形を成し、やがて大きな魔方陣になっていく。
「誰か私を救ってよーーーーーーーーーーーォォォ!!!」
少女の叫びと共に、部屋中に青色の魔方陣の光が満たした。
*
「・・・・・。ここ、どこ?」
少年ーーー高丸飛燕ーーは困惑していた。
何故なら、バスを降りたと思ったら、周辺がいきなり置き部屋に変わっていたからだ。しかも、見覚えがない。
「あの、貴方は誰ですか?」
静かな声が聞こえた。
高丸は、その時初めて目の前に少女が座り込み、泣いている事に気づいた。
「貴方が私の勇者ですか?」
声も震えていた。
「俺? 高丸飛燕だけど。君は?」
「私は・・・・ミリス・・・・。ミリス・グランアです・・・・」
「そうか、ミリスって言うんだ。で、ここはどこ?」
「うぅ・・・・。置き部屋ですが・・・・」
「いや、そこじゃなくて」
「え・・・・。あ・・・・。ガラウ・バウン様の家内です」
「・・・・・。他人様の家?」
「そうです・・・・」
「何で俺が他人様の家に・・・・。はっ、無意識に泥棒をやってしまったのか・・・・?」
「あの・・・・」
少女はーーミリスーーが弱々しい声を出す。
「多分、私が召喚したと思います。どうやってやったのかは分かりませんが」
「は?」
「その・・・・・勝手に召喚してしまい、申し有りません」
「いや、いいよ。すぐに帰るだけだし」
「無理です」
「え?」
「暗号コードが無いと向こうの世界に接続できません。異世界はいっぱいありますから」
「・・・・。嘘だろ」
「本当です」
「嘘だろぉぉおおおおおお!!!! じゃあ、俺の買い物は!? あの『お兄ちゃんお兄ちゃん』と読んでくれるPCゲームは!? うぅ・・・・・そんなぁ・・・・・」
「あの、すいません・・・・」
ミリスは高丸に駆け寄り、そっと肩を触ろうとした。
「・・・・・。すいませんで済ませたら困るんだよ」
「あの・・・・?」
「すいませんで済んだら、困るんだよぉおぉおおおおお!!!」
「ひゃっ!?」
ミリスは突然叫んだ高丸に驚き、姿勢が崩れ、尻が地面に激突する。
「じゃあ、何をしたら、許してくれますか!?」
「あ”!?」
「何でもやります! 土下座でもやります!」
「なら、胸を揉めてくれよ!」
「え?」
「おりゃあ!」
高丸は高ぶる怒りのあまり、ミリスの胸を揉んだ。服を着ても外見からはハッキリと形が分かる。そして、揉んだら、柔らさがしっかりと味わう事が出来た。
「なっ・・・・・!?」
「うははははは!!」
「・・・・っ。変態ぃぃぃいいいいいーーーーー!!」
ミリスはパニック状態に陥りながら、高丸の頬にドストレートの拳をめり込めた。
「くばぁ1?」
高丸は数メートルほど吹っ飛ばされる。
同時に部屋の扉から複数の足音と声が聞こえた。
「何だ!?」
「ここから音が聞こえたぞ!」
「開けろ!」
そして、騎士と思わしき人達が置き部屋に突入した。
「これじゃ、気が済まねぇ・・・・。うぉおおお、俺とペットインしようぜぇぇええええええーーーーーーッッッ!!!!」
「ぎゃああああああ!!!」
「おい、少女はが襲われているぞ!」
「何か知らんが、取り押さえろ!!」
「確保ぉぉーーーーーッッ!!」
こうして、高丸飛燕は性犯罪者として騎士団に逮捕された。