7話 Hair&Hunt
僕が、初めて彼女の長く美しい黒髪を触ったのは中学の時だったと思う。
それが初恋というのかは、確実にはイエスといえないがただ彼女の髪の毛が好きだった。
高校生になった僕の手には今でも彼女の髪が流れていく感触が残っている。
さらさらと、手の上から落ちていく感触それはとても魅力的だった。
あの髪の毛を手に入れたい。毎日触っていたい。
そう思いだしたのは中学を卒業して彼女と別々の高校に行った頃だった。
あぁ、あの黒髪が懐かしい。手に入れたい。
そして僕は計画を立てた。
俺が夜牙の髪を触る。彼女は、少し恥ずかしそうに笑っていた。
今、掌の上から彼女の髪の毛がこぼれ落ちる。
さらさらしたとても綺麗な髪だ。
DASは、現在暇と言っても良いほど事件が起こらず平和だ。
時々猫探しの依頼や、無くし物の依頼が来るがすぐに解決してしまう。
だから今俺たちはクイズを出し合っている。
夜牙が問題を出す。
「水途、問題。上は大水、下は大火事さて何だ!!」
そんなのは簡単である。
「それは、お風呂だろ!!」
彼女は笑っている。
「そう当たり!!じゃあ、次ね。
灯油をアスファルトにまきました。そこに火を付けたマッチを落とすとどうなるでしょう。」
これも簡単である。
「簡単簡単、それは付かないのが正解さ。」
「何で解ったの〜」彼女はにこにこしている。
「だって付かないだろう。」
「理由なしかい!!まあいいけど。」彼女の笑みは太陽より明るいだろう。
「さあ、帰ろうか。もうすぐチャイムが鳴るだろうから。」
彼女は、てくてくと付いてくる。
カモの親になった気分だ。
僕が考えた作戦は、まず彼女をおびき出す。
噂によれば彼女はDASと言う同好会に所属しているらしい。
だから少しややこしい事件でおびき出す。
頭が切れる会長がいるという情報もあることだから僕のライバルです。
さあ作戦は、とても簡単。
だけど結構複雑です。
まず通りすがりの髪が長すぎると思う人の髪を切ってあげます。
それを毎日一人ずつ郵便で高校のDASに送りつけます。
その繰り返し。
そして調査に出てきた山鹿さんの髪の毛をかって終わり。
こんなのでよいでしょう。
郵便の消印を色々なところで押してもらってどこから出したのかは、解らなくした方の勝ちです。
計画実行の日は明後日。
それまで準備をします。
まず、切れ味の良いハサミとナイフ。
そして髪の毛を入れる封筒、糊と手袋あと切手を何日分いるだろう?
う〜ん80円切手を20枚ぐらいあったらいいのかな?
出費がきついけど彼女の髪の毛をもらうためだ!!と僕は覚悟を決めます。
私は、今日水途に触られた髪の感触を思いだした。
昔、中学の頃心を塞いでいた私はある男の子に髪を触られました。
確か名前は、涼風波。
名前は女の子みたいだったけど本当に女の子みたいな顔立ちの男子だった。
あぁ、あのころは結構きつかったなーと思いだす。
イジメがひどくてたまらない毎日だった。
少し気分がブルーになって来る。
翌日、彼女はなんだか元気がなかった。
「おい、夜牙大丈夫か?調子が悪いんじゃないか?」
「ううん?大丈夫。ただちょっと昔のことを思いだして。」
彼女の笑顔がだんだんと無くなっていくことに俺は戸惑った。
なんだか嫌な予感がした。
「今日は、本当に元気がないな。」
そう言うと彼女はやっと笑って悩みを打ち明けた。
「昨日、私の髪をいらったでしょ。
それでね、ちょっと昔のことを思いだしたのよ。
中学生の時虐められていたんだ。
その時私の髪をいらってからかった男子がいてその子の事思いだしていたの。」
彼女は、懐かしい思い出のように話した。
そう言う思い出があったなんて知らなかった俺は少し悲しくなった。
彼女の黒い髪はとても綺麗で、白い肌とは対照的だった。
さあ、準備は整いました。
明日実行に移すときです。少しナイフを握ってみます。
良い切れ味なので嬉しくなり、そして楽しみになります。
ああ、早く彼女の髪をいただきたいです。
俺は、どうして良いのかわからなかった。
彼女の髪はとても綺麗で美しいのに彼女は嬉しそうにしなかった。
昔の思い出に浸っている彼女はなんだか瞳の色が薄れていた。
本当にどうしたらよいのだろう。
「おい、夜牙だいじょうぶか?」
今日一人目の髪を刈りました。
この髪は彼女のように長かったのですが、とても汚かったです。
もっと、彼女の髪は綺麗で誰にも触れさせていなかったです。
早く彼女の髪が欲しいと僕は思います。
その汚い髪を今封筒に詰めています。
送り先はDASです。消印は、はじめということもあり近くのポストから入れました。
さあ、明日は、どこから入れましょうか。
DASに、封筒が届いた。
夜牙が中身を確認しようと封を切る。
「きゃっ!!」
悲鳴にも似た声が部屋に響く。
「どうした?」
俺はすぐに駆け寄る。彼女の手にした封筒の中には黒い髪の毛がばさっと入っていた。
「なんなのこれ〜」
彼女は、怖い物を見たように言った。
俺は、消印を確認する。
昨日投函され、消印は近くの町の名前になっていた。
「脅迫か?それとも、ただの悪ふざけか?」
彼女は、まだふるえている。俺は、少し心の奥で思った。
こんなにも彼女を怖がらせるやつは、許さないと。
翌日、またあの封筒が来た。
投函は昨日、そして中には金色の髪が入っている。
消印は、大阪となっていて。この近くから離れている。
しかし、俺はそのことで近くに犯人が潜んでいることを知った。
わざと遠く方に視線を反らし、足下に犯人がいると言うことは良くある。
俺は、彼女が危険にさらされていることを覚った。
「夜牙、狙われているかもしれないから気を付けろよ。」
俺は、そっと声を掛ける。
「うん、分かった。」
彼女は、にっこりと笑った。
僕は、どんどん髪を刈っていきます。
今思うとここら辺では、良い髪を持った人が少なすぎると思います。
だけど僕は刈りを続けます。
さあ、もう5日ぐらいが立ちました。
いま、なかなかしっぽを出さないDASに少しだけ戸惑っていますが、
まだまだ時間があるのだと嬉しくなります。
クラスの女子の半分以上がショートカットになっていった。
俺は、この異常事態に彼女を守ることしかできないでいた。
なんて卑怯な俺なんだ。他のやつを助けられないなんて。
ショートカットの女子達に話を聞くと犯人の目星がついてきた。
犯人は、小柄。
しかし力は強く、顔は覆面で隠していて不明。
服装は、どこかで見たことのあるような制服で手には良く切れるナイフを握っている。
狙われた女子のほぼ大半は、元々はロングだったようだ。
犯人は、ロングの女子高生を狙う髪大好き人間らしい。
しかし疑問に思うのがそんな髪大好き人間が俺たちの所になぜ大切な髪を送ってくるのか。
・・・・・・・・・・分かった。
俺は、ある一つの説を立てた。
これは、夜牙に関係のある事件だということを。
僕は、早く彼女に会いたいです。
無能な探偵研究会なんて不必要です。
僕は、彼女の髪にただもう一度触れたいのです。
俺は、夜牙を呼び出した。
「夜牙、遅かったな。この犯人の見当は付いた。」
「それは、誰なの?」
彼女は、不安に辺りを見回すが俺以外には誰もいない。
「君が知っている人物さ。」
「で、それは誰なの?」
「甘いな。これは挑戦状なんだ、君に対しての。だから君が解かなくてはだめなんだ。」
「ヒントは?」
「分かった少しだけだぞ。」
俺は、夜牙にヒントを与える。彼女がこれで感付けば彼女の髪は無くならなくてすむ。
いざとなった時は俺が出なくてはならないかもしれないが。
「分かった。」彼女は、すたすたと歩き始めた。
俺の出したヒント1は、消印。
今までに7通の郵便が来ているが、そのどれもが違う消印になっている。
ここまでいうと分かるだろうが・・・
犯人は、わざとと腕をしている。
そして次にその消印の押された場所。
一番最初は、俺たち地元のやつしか分からない小さな町だが
2番目からは、大阪、千葉、東京、神奈川、などといった都会のしかもとても有名な町で押されている。
ということは、犯人はここの近くで刈りをしているということだ。
彼女の後について歩く。
彼女の目的地は分かっていた。
ヒント2は、髪の毛。
普通、クラスの半数が短期間にショートカットになった時点でおかしいと思う。
そして、送られてきた髪は全てで7通。
何か矛盾している。クラスの女子半分は、10人だ。
残りの3人の髪はどこに行ったのだろう。
この3人は、とても綺麗な髪の持ち主だったと夜牙からは聞いている。
さあ、どう思うだろうか、髪フェチの犯人の行動とは。
私は、犯人の見当が付いていた。
水途からのヒントのおかげだと思った。
ヒントは3つ、最後のヒントが確信の種となった。
そして今、私は犯人の自宅へと向かっている。
最後のヒントは、私の髪を1回でも触ったことのあるやつ。
そう、私の髪は中学以来誰にも触られなかった。
中学の時触った、涼風が犯人だと覚った。
もうすぐ僕の元に彼女は、来るでしょう。
僕は少しでも部屋を綺麗にしようと努力しましたがカーペットに髪が沢山散らばってすごいことになっています。
あれだけのヒントを与えれば彼女は、僕にたどり着いてくれると思います。
僕は、そっとソファーに座りナイフを綺麗に拭きます。
もうすぐあの忌々しい、彼の家に着く頃だ。
私はなんだか悲しかった。
けれど足を止めようとは、思わなかった。
後ろにいる水途は誰かに電話を掛けている。
たぶん警察のおじさんだと思う。
彼の家の玄関に立つ。
『ピーンポーン』玄関のチャイムを鳴らす。
彼は、逃げないだろうと私は分かっていた。
彼は、私のこの黒髪を狙っているのだから。
玄関のチャイムが鳴ります。
僕は、彼女が来たことが分かりました。
すぐにソファーから降りてで迎えに行きます。
「いらっしゃい。」
「お邪魔します。」
彼女は堅苦しく僕の家に入ります。
私は、彼の家に入る。水途は少し不安そうに私を見送った。
水途と約束を交わした。もし私の髪が無事に帰ってこなくても水途のせいじゃないと。
そして、私は上がり込んだ。
俺は、彼女一人で行かすのは不安だったが警察が到着するまでの時間稼ぎとして行かせた。
本当は、そんな事をさせたく無かったけど彼女は、にっこりと笑っていってしまった。
警察は、3分ほどで来ると行っていた。
「山鹿久しぶりだね。」彼はにっこりと笑っている。
「うん、久しぶりだね、涼風。」
「ところで高校は楽しい?」
「うん、そっちは?」
「たのしいよ。」
彼は、まだ微笑している。
「山鹿の髪はいつ見ても綺麗だね。ちょっと触っても良いかい?」
私は頷く。
「なんで、そんなに髪の毛が好きなの?」
「ん?僕は、髪の毛が好きなんじゃ無くって。山鹿の髪が好きなんだよ。」
私は、中学の思い出を思いだす。
イジメは耐えてきた、だけど涼風のせいでもっとイジメにあったのは完全に否定できない。
【や〜い、山鹿男子に髪触られてやんの。キモーイ。おまえの髪は地獄の髪〜】
なんだか、よく解らない言葉が聞こえてきた。
「やっぱり君の髪は良いね。」
「じゃあ、私の髪をあげる代わりにもうこんな事を止めてくれるかな?」
「そんな事は、できないよ。髪は気持ちいいんだよ。」
そう言って、彼はポケットから束になった髪を取り出す。
「なんで、私の髪が好きなんじゃあなかった?」
「好きだけど、好きだけど。僕は、我慢できないんだ。誰かの髪を触っていないと。」
彼は頬に髪の束を撫でつける。
少し見ていると彼はナイフを取り出した。
「今さっき君の髪をくれるっていったね。」
「うん、だけどこの事件を止めてくれるんだったら。」
「分かった。じゃあ、いただきます。」
そう言って彼は、私の髪を刈り取った。
彼なりに我慢したのだろう、私の髪の3分の1ぐらいまでしか切らなかった。
「なんで、もっと他の人みたいにばっさり切らないの?」
彼は少し笑っていた。
「他の人?僕7人ぐらいしか切ってないよ。しかも2分の1ぐらいしか。」
不思議に思った。じゃあ残りの3人わ?
「ねえ、涼風はなんで髪が好きなの?」
「う〜ん、何でだろうな?ただ、色の付いている髪はあまり好きじゃないのは確かだ。」
「そうなんだ。」
私の中にあった恐怖感はなくなりつつあった。
「ねえ、そろそろ帰っても良いかな?」
「うん、今日はありがとうな。この髪。俺、もう人の髪とか切ったりしないから。」
彼は、笑顔でそう言っていた。
私は玄関を出る。
じゃあね。
その後、涼風は警察につかまった。
けれど抵抗はしなかった。彼は私の髪を握ったまま連行されていった。
私は、なんだか悪いことをしたような気がしたが水途はそのことをいうと首を振った。
もし、彼が私に髪をくださいと言ってくれればこんな事にはならなかったのにと後悔した。
そして私は髪の毛を短く切ったのだった。
俺は、夜牙が髪を短くしたのに驚いた。
もう少し長い髪が良かったのにと少し悩んだ。
だけど、彼女は前よりも素直に笑うようになった。
それが、この事件での彼女の収穫となっていたのは確実だった。
俺は、彼女がどんどん成長していくことを少し不安に思いだしていた。
そして夕日に染まる教室で、
この残された3人の髪はどこに行ったのかと考え出していた・・・
第7話目でした。人が死ぬ話が多い中、唯一このお話は人が死にません。しかし、クラスの被害者残りの3人は、なぜショートカットになってしまったのでしょうか?そしてなぜこの高校だけの事件だったのでしょうか?その謎は次話に書いていきたいです。