6話 Rivers of Blood
第6話です・・・・・
季節は夏・・・・・・
1年ぶりに静かだった町が騒がしくなり始めた
警察がせわしなくパトロールをしている
ナイフは、肉を切り裂くためにそして、赤く染まるために存在している
血は、面白い・・・なぜ血液の中には、白血球や赤血球があるのだろうか
何所で血液は生まれ、何所で死ぬのか
そしてなぜ、すぐに固まってしまうのだろうか
血は、面白い
世界が血で染まってしまえばどんなに面白いことだろうか
今僕の前には、肉片が散らばっている
ここは、何所だろう・・・何かに夢中になるといつも解らなくなる
今朝、新聞で面白い記事がないかと探していると
今頃騒がしい警察が追っている事件が載っていた
本日、正午市内にある造船所跡地で、遺体が発見された
被害者は、遺留品により市内に住むと思われる高校生
遺体は、鋭利な刃物で切り裂かれていたという
この事件を彼女は知っているだろうか
俺は、心の底の闇ではこの事件に関わりたいと言っているが
俺の理性は、それを許さない
どうしたら良いのだろう
今回は、行動を観察するだけにしたほうがよいのか
今朝、朝刊を見たら
なんだか水途が首をつっこみそうな
怪事件が載っていた
鋭利な刃物で切り刻まれた遺体・・・・
まるで、1年前の卯月先生の事件のようだ
そうだ、今回も水途はこの事件に首をつっこむだろうから
私も、頑張って手伝おう!!
そう思って家を出る
放課後
水途から呼び出しを受けた。毎回の事ながら突発的に来る呼び出し
そして待っているのは、いつも事件のことだった
夕焼けが、去年よりも美しい。暑苦しい夏の夕暮れだが
もうすぐ彼女が入ってくるだろう
廊下で音を立てずに歩いてみた
なかなか難しくって、少しの衝撃でたくさんの音が出て響いていく
【ガラガラガラ】
ドアを開ける
「よお来たな」
「ヤッホーで、あの事件のことかな??」
「そお、よくわかったな。で、そのことなんだけどな・・・
今回は、観察だけをしておくことにする
関わらない。前の事件のように身に危険が及ぶといけないからな・・・」
「えっ・・」
そう、私はとまどった
活動する気満々だったのに、それを見事に裏切られてしまった
「わかった」
「じゃあ、そういうことで」
そういって彼は、出て行った
私覚悟を決めてたのに、もう・・・
一人になった教室で夕焼けに染まる空を眺めて落ち込んだ
俺は、彼女に悪いことをしてしまったのだろうか
なんというのだろう
胸の奥の方が何かに締め付けられるように痛い
こんな経験を今までしたことがなかった
なぜこうなるのだろう
暗い闇を心に宿したのでは、無かったのか
なぜ彼女と一緒にいると、こんな心でいるのだろう
どうして、夜牙なんだ
私は、水途といると心を閉ざしたはずなのに
いつの間にか明るく振る舞ってしまう
何でだろう・・・
こういう経験は、姉が死にかけて以来1回もしていない
どうしてだろう
僕は、血に染まったナイフを握りしめて
肉を切り刻んでいる
こんな時どういう顔をして切り刻んでいるのだろう
笑っているのだろうか、泣いているのだろうか
解らない、解らないんだ
僕は、ふつうの高校生なのに
何で高校生を刺して刻んでいるのかも解らない
どうして・・・どうしてなんだ
どうして僕なんだ
ねえ、教えろよ
水途が事件を見ている間にもう何件同じような事件が起こったのだろう
被害者が増えていくのに
水途は、動こうとしない
どうしてなんだろう・・・
警察に任せても解決しないことぐらい知っているはずなのに・・・
ケータイを取り出した
「よお、親父。体調崩してないか」
「よお、最近忙しくってな・・・知ってるだろう」
「おお、でどうなんだすすみ具合は?こんな事聞くまでも無いんだが・・・」
「秘密だ!秘密。警察は、秘密主義なんだよ・・・」
「やっぱそうか。進んでないと見た」
「そうさ・・・あとは秘密さ」
「ふぅん。で、今回解決しそうなのか」
「いや、手詰まりだな」
「手伝って欲しいか??」
「いや、けっこう。後々めんどくさいからな
上からは、ひっぱたかれるし、下からは、塗りつけられるし
ホントこの1年苦痛だったよ」
「そっか。じゃあ、愚痴聞くためにかけたんじゃないしな・・・」
そしていきなり切る
まだ向こうではがみがみ言っていたが気にしない
どうせ事件に首をつっこむなとかだろう
ケータイを直す
それと同時に着信音が鳴る
親父からだったら着信拒否をしてやるところだが
夜牙だった
「もしもし」
「あのっげんき??」
「どうした?」
「今どこにいるでしょう」
「しらねーよそんなこと」
「・・・た」
「た?」
「す・・・」
「す?」
「け・・・・」
「け?」
ここまで言うともう内容は解った
たすけて
夜牙に危険が迫っている
「いまどこだ」
そう聞く前に切られた
私は、水途を奮い立たせたかった
なんだか今頃元気がなかったし
あと耳寄り情報で1年前にあった警察のおじさんから
“今日は、水途の誕生日だからな”と連絡が入って
わざわざ、ケーキを買ってサプライズ
自分が危ないと言ったら家から飛び出すだろうと想って・・
俺は、焦った
一刻も早く彼女の元に行かないとあの犯人に殺されてしまう
早く早く
扉を活きよいよくあける
【ドン??】
何かにぶち当たったような音が聞こえて
ドアの裏をのぞいてみる
そこには、ケーキの箱を持って目を回した夜牙がいた
思わず出てしまう動揺した声・・・
「えっ??」
ドアが活きよいよくあいたと想ったら
立ち位置が悪くてゴンッ・・
そのあとの記憶がない
いつの間にか部屋の中・・
ソファーの上で寝かされていて頭には濡れたタオルが
ここは、何所だろう
「おっ、目ぇ覚めたか。大丈夫だったか?」
この声を聞いて・・内容を理解して、顔がどんどん赤くなっていく
そう、ここは、水途の家
そして、その家の中のソファー
恥ずかしい・・・玄関の前で倒れて、そのあとどうしたんだろう
運び込まれた??重くなかったのかな・・・
「おい。だいじょうぶか??」
「うん・・・」
「ごめんな。サプライズとは想わなかった・・・ホントごめんな・・・」
「ケーキ」
「そうそう。今日は、俺の誕生日だったんだな、ごめんな」
「いいよ」
まだ私は、ソファーに寝ていた
なんだか言いたいことがありすぎて、何から言わないといけないか解らない
「あのね・・」
体を起こして言う。だけど、ほっぺに涙が垂れる
彼女が泣き出した。どうしたら良いんだろう・・・
今まで、自分の家に友達を連れ込んだことのない俺はとまどう・・・
「どうした??そんなに痛いのか」
「ううん。そうじゃなくって
水途、私のこと気にして事件解決したいのに我慢してるでしょ」
「何でそんなことを・・・」
「だって卯月先生の時も、同じ感じだったんだもん。」
「そうかな」
「あとね、私・・水途の側にると明るく振る舞えたりできるし」
そこまで言うと、また涙があふれ出した
俺は、それを見ているとこれ以上泣かせたくない
どうしたら良いんだと、心の奥で想う
「俺もなんだ、小さい頃色々とあってね
心の奥の方にどす黒いものが居たんだけど・・・
夜牙と出会って以来、なんだかそれがどんどん薄くなってきたような気がするんだ」
「そうだったんだ。あのさー私の身の危険とかは大丈夫だから!
水途のやりたいことやれば?」
その言葉を聞いて、俺の肩から荷が下りたように全身の力が抜けた
「夜牙、ありがとう」
そういって、彼女を抱きしめる
彼女の顔は見えないが
今の俺の顔は、誰にも見せられない
「いいよ。水途が居るから今の私が居る・・・」
程なくして
「さあ、ケーキ食べよう。もう17才だしね」
お皿とフォークを持ってくる
誕生日、いつから忘れていたのだろう・・・
そのケーキは、とびっきり甘くて、とってもおいしかった・・・
買ってきて良かった
1つここに来るときに決めたことがある
水途への誕生日プレゼント
「この前、水途見返りが欲しいッて言っていたよね?」
「そうだけど」
「じゃあ、私からの見返り&誕生日プレゼント」
そういうと、彼女は俺の唇に自分の唇をつけた
私にとって、初めてのキスだった
なんだかケーキのおかげもあって
甘いファーストキスだった
水途は、何回目なんだろう
俺は、目を丸くした
彼女が、あの夜牙が
・・・俺なんかにキスしてくれるとは
夢にも思っていないことだった
しかも、俺にとって初めてのキス
「これが誕生日プレゼントかー、じゃあ、お返しに」
そういって、俺は、夜牙の唇に自分の唇をつける
本日2回目。やっぱり甘いキスだった
「ごめん。気ィ悪くした??」
「全然、ありがとうお返し」
「で、事件のことなんやけど。やっぱり首つっこんだ方が良いと思うかい?」
「うん。私のことは、大丈夫だから」
「そうか、では、いっちょやるか・・・」
僕は、ある女の子に目をつけました
今時、とっても見かけないような黒くて長い髪の毛の少女です
彼女を切り刻んでみたい
そう、僕の本体に言いました
僕の本体は、もう拒絶は、しません
しかし、これが最後だと言っています
もう12人殺したから良いだろう・・・
僕は、そう思い許可を出します
僕は、自分の中のもう一つの人格によって今支配されている
刃向かうことは、できない・・・
そうして最後になるであろう
彼女に目をつけた
俺は、事件の共通点を洗い出した
まず、どの被害者も俺たちが通っているこの高校の生徒たちであった
1,2年のクラスからの出方が多く計12名の被害者が出ている
性別は、女子の方に少し偏ってはいるもののほぼ僅差はなし
もう少し情報が豊かであったら犯人は、間違いなく見つかるだろうが
なかなかそうも行かない
今解っているこの情報から
犯人は、俺たちと同じ学年の中にいる可能性が高い
そうすると夜牙が危ない
そうでなくても、目をつけられやすい体質をしているのだからな
そういうことで夜牙のマークをしてみることにする
今日の彼女は、とっても幸せそうだ
何か良いことでもあったのだろうか
校門で待っていると近づいて来た
その時を見計らって、僕が誘う
「ちょっと話があるんだけど・・・良いかな」
彼女は、誘いにのって僕の横を歩く
俺はちょっと嫉妬した
まあ誰しも嫉妬はしてみるものだ
夜牙を校門で待っていたのは
同じクラスの彼我佑
けっこうもてている奴だ
跡をつけてみる
僕たちは、徒歩5分ほどのところにある、古い病院のあとに来た
彼女を気絶させる
そして病院の中に運び込んだ
俺は、その光景を見て犯人が彼我だと知った
そして親父に連絡する
サイレンは、鳴らさずに、病院を包囲してくれと
そして中に乗り込む
中は、薄暗く見通しが悪い
どこに行ったのか解らない
まず手始めに診察室の方から見ていく
2階に行くことはないだろう
逃げにくいからな
僕は、最後の獲物に彼女を選んだ
あと5分もしたら目が覚めるだろう
その時に少しずつ痛めつける
俺は、焦っていた
早くしないと彼女が殺されてしまう
診察室を見終えた俺は、奥の方の手術室を見る
3つありそのうちの一つに手術中のランプがともっておりそこにいるのだと解った
犯人が誘い出しているのかもしれない
僕は、無意識のうちに手術中のランプをつけていた
なぜか解らないが、もう一つの人格がそうしたのであろう
彼女が目を覚ますまでもう少しあるが
その前に邪魔者が来た
俺は、手術室のドアを開ける
そこには、彼我と台の上に寝かされた夜牙がいた
俺は、その光景を見て理性が抑えられなくなり始めていた
「なにしてんだ。こんなところで」
怒りを押さえながら言う
「解剖実験・・・」
彼我は、無表情な顔で答える
「どうしてそんなことをするんだ」
「僕の中のもう一つの人格がやれという」
「もう一つの人格をだしてくれないか」
「僕だけど何か」
口調が明らかに変わり顔の表情も豊かになる
「おまえは、誰だ」
「僕??僕は、彼我佑だけど何か問題でも」
「なぜ夜牙を最後に選んだ」
「内緒・・・教えてあげても良いけどやっぱり殺してからじゃないと」
「どういう目的で殺すんだ」
「それも、内緒」
「夜牙を返してくれないか」
「いやだ・・・今日幸せそうだったのはあなたのおかげですね」
「だから夜牙を返せ」
俺の心の中にあるような液状のものが沸々と沸騰し始めた・・・
「いやだ」
「返せと言っているんだ!!!!!」
「何で??山鹿さんは誰の物でもないでしょう」
その時、夜牙の意識が戻った
『うぅ・・頭いたい』
しかし、夜牙の意識はまた彼我がとばした
俺と決着をつけるらしい
「夜牙は、俺の物だ。誰にも渡さない、俺の物なんだ」
私は、意識が薄れゆく中水途の声を聞いた
「水途・・・」
「仕方ない」
そういうと彼我は刃渡り15センチほどのナイフをだしてきた
しかし、それを振り下ろす前に
地面に倒れた
俺は、無意識のうちに彼我の太ももを刺していた
あたりには、その時噴き出した血液が
何かの模様のようにしっかりと付いていた・・・
ケータイを取り出す
「親父。すまん、入って来ていいぞ・・・
この事件は、解決した。あと救急車も呼んでくれ・・・
じゃあ、またいつかな」
そういって裏口から
そっと出て行く
腕の中の夜牙はすやすやと寝息を立てていた
その後
彼我は、捕まってすべてを自供した
俺は、また親父にこっぴどくしかられた
夜牙はと言うと
事件のあと5分ぐらいで目を覚まして
また猫のように目を丸くしていた
俺が、もう少し早く決心をつけていれば
12人もの被害者を作らずにすんだ物だ
夕暮れが夏を飾りながら
過ぎていく
今日この日の感謝とともに
第6話でした・・・・
どうも読んでいただきありがとうございます・・・・・
次話も是非読んでください・・・・・・