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パーティー分裂

 強行突破きょうこうとっぱした部屋は石柱全部をくり貫いた様に広大な空間だった。


 さいわいにも扉自体には細工も無く何も起こらない。


 



 そもそも緊張と走り過ぎでまともに息も吸えず、喘息ぜんそくを起こしたみたいにあえぐしか出来ない。


 立っている事さえ出来ずに二人ともぶっ倒れ……しばらくの間、サイラーの規則正しく動く出っ腹だけを眺めていた。




一方、ウァラは扉を後ろ手に張り付いて外の気配を探っていた。


 部屋が暗いが影神の加護『暗視あんし』が有るので不自由はしないし、あのスライム津波つなみもやって来ない。


 



 実は駆け出しの頃、どん臭い事をやらかしてスライムに捕まり、溶かし殺されかけてから真剣にトラウマになっていたりするのだ。


 しかし、非常事態&トラウマではあるけど、依頼主を捨てて来たのは不味まずかったか?




「……、まぁ良いか。」


 気持ちを無理矢理むりやりに切り替えて妹を起こす。



「……ア。 ……サ……イア。」


 なんか、ゆさゆさすりゅ。


「 サーナ!」


「ふうぅぅー? ……お姉ぇ、 ちゃん?」


 急に意識が浮上……。


 音がする程の速度で起き上がるサーナイア。



 お約束として額をぶつけ合う姉妹。


 そして少し涙が出た。



 気を取り直して。


「ちょっぴり子供に戻っちゃたのは内緒よ?」 と言うか、ここは何処?


 えと、「問題無い。」 じゃーぁ、無くてよ。



「覚えていないか? あの最中、急に倒れてしまったから、サーナを抱えて避難したんだ。」


 二人ともはぐれたと姉が言う。




「そう……やっちゃったのね、私。」


 ともかく早く二人に合流しましょう?


 それには、まず現状把握。 


 

 けど暗くて私は何も見えないし、入り口を開けるのは論外。




「結構、狭い部屋みたいだ。」


「奥に書棚があって隣に引き出しのある机が並んでいる。 書斎なのかしら。」


 ぎっしりと詰められた本は触れると古すぎて崩れて塵になってしまった。


 無防備にひときわ大きな引き出しをウァラが引いた瞬間。





 ぱっかりと開く床。



 胃が持ち上がる感覚がした後、二人は真っ暗な穴に落ちていったのでした。









  --石柱遺跡、最上階 玄室げんしつ--


 






 あんなに走ったのに直ぐに体力が回復したサイラーが、まずスライムで溢れていた通路を覗く。 左手の方は岩が収まっていたと思われるくぼみが有るだけで何の面白みも無い。


 右手側にはしばらくカラフルなゲルの絨毯じゅうたんが出来上がって居たけども、目視もくし出来る位置で詰まっていて側面の溝で触手がうぞうぞしている。


 通行は不可、スライム類にお決まりの核も無いし魔の気配もしない。


 こいつ等は魔物では無いのだろう。


 侵入者しんにゅうしゃ排除機構はいじょきこうの一部なんだろうか? ……どうもこの遺跡には殺意を感じない。








「気持ちが悪いな。」


 





 その意図も、何もかも!


 さて、閉じ込められちまったみたいだから室内の探索と行きますか。 っても奥にある箱しか、めぼしいものは無いな。



 

 故意にエバンを置いてずんずん進む。 その際に響く靴音と振動で足元が空洞じゃなかとも思った。



 

 箱には鍵が掛かっていて更に大掛かりな罠が付いていたが、盗賊にとっては間違いなく開く鍵……ここにも違和感が付きまとう。


 罠が作動しない位置まで開き、いきなり難易度の上がった罠を苦労して固定。



 暗い箱の中を明かりで照らすと中には、細長くいびつな形でアメジスト色をした石が一つ。



 アーティファクト『増強の守石』か……これは思いがけず良い物を見つけることが出来たな!


 思わず邪悪な笑みが浮かぶ。



「なぁ~、エバン?」


 声を掛けられやっと気力を振り絞って立ち上がり、フラフラと側に寄る。


「本当に短い間だったけど、良い稼ぎになった。」


 ゆらり、とサイラーが振り返る。


「俺様なー、実はお前らみたいな駆け出しを騙すのが大好きなんだ。」


 酷い宣言と極度の疲労で思考がにごる。







「そろそろ頃合いだしさ、死んでくれないか?」


 狂気をはらんだ満面の笑顔。



 わさわさと黒と黄色の体毛が服やら鎧やらの隙間からあふれ出し、全身を覆う。


 髭面ひげずらのおっさん顔が崩れて、昆虫の黒光りする甲殻に変化……そのフォルムは蜘蛛。


 脇腹からもう一対の腕を生やし、おもむろに人差し指を頭上に振り上げると蜘蛛糸を発射。



 その糸は壁に張り付きその身を支える。 


 更に一本をアーティファクトに絡めて引き抜くついでに、停めて置いた罠を作動させる。



 すると玄室の床が崩れ、巨大な落とし穴になって地に立つしかないエバンを襲う。



「ビンゴだったなー!」


 サイラーが悦に浸りながら。


「ここを紹介した師匠を恨んで逝けや!」



 彼は道を踏み外した魔族だったのか。


 

 悪意に飲み込まれ、何の抵抗も出来ないままに俺は奈落ならくに飲み込まれた……。

 





 今回、難産でした。


 こういうお話を作るのは難しいですね。

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