探索って美味しいの?
契約が済んだからと、サイラーがぶっちゃけてきたけど実は、連れて来た部下が逃げたのか死んだのか戻って来なくて装甲の薄い自分だけでは正直、厳しかったのだと言った。
それに、これから危険な場所に挑もうってパーティー内で、敬語で呼び合うなんてのは自殺行為で良くないと言う強い要望で、全員敬語禁止で進む事になった。
大分、歩いて来たのだけど思いのほか緑が深く視界が利かない。
歩行の邪魔になる草を切り払いながらの移動も酷く体力を消耗する。
いつまでも続きそうな幻を抱いた頃にようやく開けた場所に着いた……、とてもじゃないが何度も採取に来たい場所じゃないかもと愚痴りながら開けた広場で小休止。
しかし、遠くから見ても凄い威容だった柱は近づく程に馬鹿みたいに巨大でまだまだと言うのに霞む程……。
既に壁にしか見えないで、逆に離れてしまったかの様な幻覚に囚われた。
「こんなとこまで良く来れたな、師匠。」
なんて思いながら巨大な生物の肋骨に見える形のアーチ岩を通り抜け、夕方には遺跡内部に侵入する事が出来た。
先頭は松明を持ったサイラーが務め、次は俺、更にサーナイア、殿は遠距離攻撃を持つウァラとなった。
ちなみに、俺は左手に小盾と錬金ロッド、サーナイアはワンド(小型のロッド)に装備変更している。
内部の通路が狭く、長物は意味を成さないとサイラーのアドバイスだけど確かにそうだ。
暫く、ぐねぐねと迷路の様な暗い通路を進みスケルトンやらクロウラーやら動きの鈍い敵を難なく排除していく。
だんだんと通路が広くなって来たなーと思うと唐突に石造りの扉が現れた……。
「あまりにも普通の扉だな。」
「扉だね。」
「扉ですわね?」
「扉……。」
四者それぞれの声が漏れる。
しかし、なんでこの位置なんだろう?
横には普通の通路もあるけど、ただの扉が凄い存在感を放っている。
正直、気になる。
「あのさ? サイラー。」
すると、
「みなまで言うな、気になるんだろ?」
俺様の出番って訳だ! とか言いつつ手早く聞き耳・罠探し・開錠のいわゆる探索三点セットを実行。
鮮やかな手際で全て成功……。
静かに扉を薄く開けた……。
……ままの姿勢で扉を閉めて戻ってきた。
「なんなのですの?」
渋い顔してるサイラーが三人とも覗きやすい位置に来ると扉を開けてくれた。
すると、
「うえぇ!」
全員、変な声が出た。
そこは割りと小さな部屋になっているみたいだけど、上下左右の壁一面に拳大の穴が空いている。
見てるだけで気持ち悪いけど、なにこれ?
サイラーを見る。
「おそらく、あの穴全部から何か飛び出してくるトラップじゃねーかな? 奥に宝があるっぽいがあれも怪しい。」
うんざりしながら説明してくれた……、無いわー。
って、サイラーさん何をしてんすか?
サイラーが出来心で石を投げ込んでみると、「ぶじゅrいっ」 と、おぞましい音がして穴と言う穴からカラフルにテカるスライムが大量に這い出してきた……!
亜種なのか触手が無数に生えている。
「おぎゃー!」
流石に逃げた!
隊列とかもうそんなの、かなぐり捨てて全力での逃走!
しかも、奴ら足速えぇ!
「急げ、急げ、急げ! 逃げろー!」
もう、むちゃくちゃである。
……あまりにも長い、恐怖と気持ち悪さに耐えられなくなったサーナイアが泣きながら気を失い倒れる。
そして、思ったより必死な表情のウァラがサーナイアを拾い罠の有無も調べずに近くの扉に逃げ込んだ。
既に通り過ぎてしまっていた俺とサイラーは戻るに戻れず、更に上階へ。
俺が踏み抜いたスイッチで更にトラップが発動。
降って来る槍の罠から始まって警報の罠・回転のこぎり・何故かトラバサミ……etc。
背後からは相変わらずのスライム津波。
最上階かと思われる付近で、とどめの転がる大岩の罠。
俺達も何の警戒も無く、現れた横道の先にある扉に逃げ込んだ。