新しい出会い いざ遺跡へ
その後、遺跡付近まで無事に行き着いた一行の目の前には、幅の広く居丈高な葉木や巨大な山菜などが繁茂する森が広がり、その森を切り裂く様に好き勝手な方向に石柱の柱達が屹立している。
巨大さの所為で遠近感が狂いそうな太さの柱が天井まで届き、所々の天井は崩落し地上からの陽光をわずかにだが引き込んでいた。
地上部に水源でも有るのか常に清水が飛沫となって落ちているが、地底の底までは持たず霧状になって土に潤いを与えている様だ。
「凄い光景……。 こんな所で陽の光に出会えると思わなかったわ。」
陽光に眼を細め、サーナイアが言う。
ウァラもどこか懐かし気にうなずいている。
俺も初めて見た陽光は綺麗だと思うが、既に皮膚がひりひりしている。 ローブからなるべく肌を出さない様にしグラサンを深く引き下げる。
「……と、そうよ。 エバンは地底人だからこれはキツイわね。」
気を使ってくれた二人に甘えて先を急ごうとすると下生えがガサガサと音を立てる。
敵襲かと全員が身構えるが、出て来たのは少し大きな一匹の兎だった、クワガタの様な角が在るのが特徴的だ。
「やだ、可愛い!」
真っ先にサーナイアが触りに行き頭を撫でている。
それについて行きウァラも触りたそうにしている。
一見、微笑ましい光景に見えるけども何だか嫌な予感がする……。
考え過ぎかなと思ったけどもスキル『見識』で調べると
☆首刈り兎
地底森林に多く生息する大きな兎。
クワガタの様な角がハサミになっていてそれで細い所を狙ってくるので用が無いなら近づかない方が良い。
性格は気まぐれ。
……。 うぉぉぉぉぉ!やべー!
「サーナイア、避け……ッ。」
全て言い切る前に兎の凶刃が細い首に迫る。
サーナイアは気付いていない。
即応したウァラも間に合わない!
最悪な事態に意識がスローになる。
「馬鹿野郎! 死にたいのか!」
どこからとも無くダガーが飛来して兎の後頭部に突き刺さり、間一髪で逸れた角からサーナイアを引き離す。
「きゃあ?」
状況が良くわからなくてキョトンとしていたサーナイアも事態に気付き青ざめる。
そんな中を、ずんずんと小太りのおっさんが駆け寄ってくると。
「お前達、この森は初めてなのか? こいつらに無防備に近づくなんて自殺行為だぞ!?」
「すみません、連れの危機を救ってもらいありがとうございます。」
いち早く立ち直った俺が言うと。
「怪我が無いなら良いが、冒険者が油断しすぎるなよ?」
と、諭された。
ご尤もだ。
刺さったダガーを抜き、鞘に仕舞いながら
「俺はサイラーと言う盗賊だ、俺も冒険家業だ……君等は?」
その質問にカクカクシカジカと伝えると。
「あぁ、あの遺跡に行くのか、悪い事は言わねーから止めとけ。 あの中はやばいトラップが幾つかある様だし魔物も手強い。」
無精髭を擦り、見たところ君等に盗賊系統のメイン/サブクラスを見受けられないしなーとも言う。
「どうしても俺はあの遺跡に入りたいんです。 サイラーさんさえ良ければ俺に手を貸してくれませんか?」
ニヤリ、としながら。
「俺は高いぞ? それで良いなら考えなくも無い。」
金額を提示しながら言う……。 一応、払える金額だったのでOKサインを返し。
「前払いだ、この遺跡は危ないんでな!」
俺がすんなり金を払い契約成立。
「改めて自己紹介だ、俺は軽盗賊のサイラー。 剣の扱いと、罠の発見が得意で二刀流使いだ。」
どれ位の付き合いになるかわからんが、よろしく頼む。
俺と同じ軽戦士属性のサブクラスに会うのは久しぶりなんで少し嬉しい。
時間的に丁度、昼時なんで仕留めた兎の剥ぎ取りがてら絞め兎鍋にする。
わりかし好評を得て少し馴染んでから意気揚々と乗り込むのだった。