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未探査洞窟 1




 ベクセルの居る生活もそろそろ半年になる、彼は未だに庭で寝泊まりしているけれど近くで暮らすうち、ただのダメ男じゃないのが何となくわかってきた。



 彼は治安の悪い町での身寄りの無い孤児と言う過酷な育ちのせいで教育に触れる機会が極端に少なく、信頼出来る他人との関わりも希薄だった事で頼る事や善悪の基準を自分しか持っていなかったからあんな態度だったのかなと思う様になった。



 基本、攻撃的なのは頂けないけど悪気も無いみたいだし緩やかに改善している。前みたいな致命的な行動も封じてるから問題も起きてない。




 そんな風に物思いに耽っていると扉を規則正しくノックする音が聞こえた。生憎と今は皆出払っているので、手早く食器洗いを辞めエプロンで手を拭きながら扉を開けた。



「おはよう、サーナイア今時間は良いだろうか?」



 アステリナが最近、着ているのを見なくなった監査服姿で前に立っていた。中に招き入れたアステリナが落ち着くのを見計らって話を聞くに、私の経過観察が極めて良好であり改心が認められたので国からのクエストを1つこなせば一般市民に復権させても良いと通達が出たと知らせに来てくれたそう。



 多少の危険はあるけれど、私なら問題無い案件で同行者としてアステリナと仲間の同行を許可するだって、多分破格の待遇。



 願っても無いと即座に同意して姉にもマギフォンで連絡、後でベクセルにも内容を伝えて協力してくれるか聞いたら了承を貰えた。



 翌日、改めて集合した酒場での話し合いの結果、目的地が遠いので出発は明日の夕方、途中で夜営。翌朝には目的地に到達と言う流れになった。



 肝心の依頼内容は、山2つ越えた先に現れた未探査の洞穴の調査、取り残された調査員の救助・又は死亡確認。



 帰還出来た調査員からの情報で判ったのは



・通路が狭い為なるべく技量のある近接系の人員が好ましいらしい事。

・遠距離の攻撃手段の必要。

・罠が多いので盗賊技能が必須と言う事。



 狙ったかの様にうちらのパーティーは人数こそ少ないけれど対応力が高いから大丈夫。


 必要性を感じて習得した盗賊技能も私が持ってるし、全員が何らかの術を使えるのも大きいからその辺でも適していると思う。

 主に巣くっている魔物は魔獣系・亜人劣等種だけれど正体不明のモノが居るので注意との事。



 危険だよって皆を見渡せば、迷う事無く同意が帰って来たのが本当に嬉しかった。



 更に補足で調査の過程で手に入れた戦利品はアステリナの鑑定後、学術的な物以外好きにして良いみたい、これには俄然やる気が出るね。気合い満点!一致団結。



 予定通り向かった行軍は良好、流石に人の立ち入りが少ない地域のせいか魔物は多いけど危なげ無く突破して行く。



 主に姉とベクセルの剣で倒され、時に私達の魔法が飛び光剣と影の従者に切り裂かれ、魔刀が唸り群を穿つ。こうして改めて目にすると姉とベクセルの二人は規格外だなと思うわ。姉の圧倒的な手数しかり、ベクセルの広域殲滅力しかり……。気になるのは魔刀技を使う度、鼻血やら吐血やらしてるベクセル……。多分、生命力を糧にした危険な技なのは明白だけど、何処で覚えたんだろう?




 聞いてみたらはぐらかされた、いつかは話してくれるかな?中に入る前に気を抜いてる場合じゃないか!!意識を切り替えて中を先行。




 情報通り通路は一本で狭く2人並んで歩くと窮屈さを感じる。天井は高くも無く低くも無いけど奥も同じかはわからない。




 慎重に進むと道が3方向に別れていて、左からは生臭い風が、真ん中と右からは何の反応も無いのが逆に怖い。




『闇夜に依る鴉 鵺の尾は影を渡す』


 姉が小声で影神の探査魔法を放つ、しんとした気配が通り過ぎ空間に軽い違和感を残す。



 行使された神術の結果。どれも少し行った先は小さな空間で閉じられている事しかわからなかったみたい。



 多分、行き止まりか扉何だと思うわ。



 皆に告げ、どうせならと真ん中の道を選んだ私達の前には探査通り全員が座れるくらいの空間に出る。


 案の定、扉が1つ。



 但し、尋常じゃなく大きいのだけど……、こんなの人に開けれるのかしら?罠はないみたいだけどビクともし無い。



 来た道を引き返し、今度は右へ。



 こっちにも扉があるけどこちらは人間サイズ。迂闊に捻ると痺れ針が飛び出る罠を解除してうっすら開けてみても闇が広がっているばかりで、光源は無い。中は少し広くなったけど何もないと思いきや先の魔法の効果の残っていた姉が奥の壁側に何かあるのに気付いた。



 壁に手を当ててぐるりと回り探り歩くとそれらしき物が見つかった。




 壁に設置されていたのは見た目は綺麗だけど音の鳴らないハンドベルに見える物。取り合えずアステリナに預けて先に進むとまた道が細くなり、暫く進むと左右に小部屋が見えてきた。ここ迄は何も遭遇が無いのも不気味かも。



 良く見ると通路の壁の所々に窪みがあったのは明かりの設置場所だったのかしら?



 先の2部屋を大まかに調べたけど、用途不明の残骸と水溜りだけで興味の引くものは無かった。



「なら、あの生臭い道しか無い?抜け道とか無いんすかね?」


「私が見た感じでは無かったと、思うわよ?姉さんはどう?」



「すまん、探査の影が切れてるから私にはわからん」


「進んでみるしか無いでしょう?」とアステリナが纏める。


「わいはなんか嫌な予感がするんやけどな~」


「アステリナの言うようにあそこしかないもの、行ってから考えましょ?」



 行動してみないと判らない。



 私達は来た道を引き返す事にした。



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