表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
51/59

新年は牢屋の外で……。




 あれから暫く、精神が不安定だった。



 季節が巡る度、少しづつ悪夢の回数が減ってきたけど忘れた訳じゃない。



 見ない訳じゃないけど、夢は夢なんだと言い聞かせられる様になった。



 代わりに薄くだけど目の下に隈が出来て取れなくなった。



 可愛くないけど仕方無い。



「じゃ無いぞ、私!」


 自らの頬を強めに叩いて気合を入れる。



 少し回数は減らしたけど野外奉仕も辞めて無いし、勉強も再開、休んでた分も取り返したわ。


 

 その甲斐あって、遂に反省と成果が認められた。


 4年目の終わりと同時に晴れて釈放となるだってさ!


 予定より一年も早い。


 

 既に馴染んでしまった牢での暮らし、感慨深いものがあるけどやっとおさらばだ!

 


 それにしても思えば監査とも長い付き合いになった。


 

 最初はいっぱい、迷惑をかけて。


 対立したり、姉と揉めたりしてこっちがハラハラしたり。


 けど、小さなイジメに初めに気付いたのは監査だった。



 今では姉の次に私の情けない所を知っている、もう一人の姉とも言える存在かもしれない。



 出所が本当に決まった時、「今までは職務としての付き合いだったけど、良く頑張った……。今度は対等だ」って出所祝いついでにお互いの名と住所を交換した。


 そんな彼女はアステリナと言う。



 早速、姉に買って貰った携帯用通話器・マギフォンにリスト登録した。


 この道具は遠距離通話のマジックアイテムで登録した人間の生体波長を記録、登録した記述を利用して簡単に遠くに居ても会話出来ると爆発的に広がって外で暮らすならもう必須、今では無くてはならない道具になったそうだ……もちろんリバイア製。


 細長い板に薄くて曲がる透明な金属が入ってるそうで、スクリーン呼称。


 姉は画面って言ってたけどね。

 


 使用法は簡単、スクリーン端に付いてる魔石に触れながら通話したい人物を思い浮かべると、名前と情報を組み込んだ簡易陣が浮かんで通話可能になる。



 消費するのは使用者の魔力や生命力でどちらでも選択出来るのは地味に嬉しいとマジックユーザー以外の層からの支持も熱い。



 庶民に買えない事もない値段設定でしっかり働いている人間になら大抵買える。


 私が学ぶ傍ら、暇な時間に必ずモモにも発音の練習をさせてた位だからマギフォンに熱を上げるのもわかるでしょ?


 娯楽が無い牢の独り暮らしは強がったって淋しいのだ。



 しかし、拍子抜けな事、モモは簡単に喋れるようになりました。

 


 酷い事にやってみなかっただけらしい。



「魔物にそんな発想を求めないでくれませんか?」と鳴かれたけど、これが私の方針なんだから頑張ってよね。



 そんなこんな日々は矢の様に過ぎて行き、残る日にちも残りわずか。


 楽しい妄想で瞬く間に過ぎ、遂に出所する事になりました!



 出所当日、姉が勢い余って買い込んできたオシャレ用品の数々は少なくして貰って身に付け、不要な分は返却。



 でも、ありがとう。


 余りに多かったのだもの、あんなに着けたら重くて動けないし可愛くないわよね?


 

 貰った淡い色の赤リボンで髪を結い上げて纏めて婦人風に、結い上げはロールパン型で細長く立てて纏めてある。


 メイドさんが良くやる髪型だ。


 鎧は襟の浅い白いソフトレザーのクロースに、少し余裕のある造りのボトムス、久しぶりにヒールの高い靴を履いている。

 ワンポイトで側面の留め具に花の飾りが付いてて可愛い。



 鎧の上には花のブローチの留め具のマントを羽織っている。

 お化粧だって薄く施しているので隈も気にならない。


「うん、気持ち良い!」



 けど、姉さんたらウサ耳フードの帽子なんて用意してて困ったわ、もうそんなのが似合う年じゃないわよ。

 なんて、笑い合う。



 メインの武器は嵩張らないメイスにして貰って今は腰に吊ってあるので目立たない。



 ともかく、外は吐くが息は白くなる程寒いけど、牢みたいなうすら寒くも無くとっても快適。



 見送りに出てくれた監査官(アステリナとは別の人)からお決まりの送り出し台詞を受け取って、姉と手を繋いでえいっやっと門を潜った。



 そうして見たものは……、







 別世界だった。





 道行く人の鎧が見た感じかなり軽めであったり、なかなか見た目にも気を使った格好をしている人が多いみたいなものだったら私も驚かない。



 4年も経っているんだから変化も有るかなって思ってたけど、予想の斜め上……背面攻撃並みにガツンと来たわよ。



 最近まで岩が剥き出しだった通路は何か別の素材で覆われて歩きやすくなり、町並みは小綺麗に整えられているみたいだし。



 何となく店も増えているみたいだし、奴隷ですらそれなりの格好をしているのが不思議に映る。



 片隅では小手に埋め込まれたマギフォンで喋りながら早足で歩く冒険者や一般人を見かけたり。




 なんか高級そうな食べ物が並んだ屋台や、見た事もない菓子を売る店。



 見た事もないマジックアイテムを使いこなす人々。



 やっぱり切っ掛けはリバイアらしい。


 ここまできたら、素直に驚くしかない。



 珍しいものが多過ぎて1日では聞き出せないかも。


 今度、2人で住む家まで姉を質問攻めにしてしまった。



 もちろん、美味しそうな物が溢れてて我慢なんて出来る訳も無く、結構な数の買い食いをして帰る。


「ダイエットしないと太るぞ?」って嫌ね、言われなくてもします。



 何でもリバイアで提唱された『混沌科学』と『魔道力学』が評価されて広く一般に浸透したのが始まりで、専門職の方々がそれらを取り入れた商品を開発。


 最初は魔法を生活に使う発想の乏しい国民は慣れなかったけど、皆の作った作品が増えてきた事で徐々に浸透。



 陰で売られていた技術者を買い上げ、何割かの売上げをリバイアに還元する契約をするなら自由に販売しても良いと言う事になって今に至るそう……。



 だから姉さんでも2台もマギフォンを買えた訳か。

 


 なんて話してる間にも、浮遊する板に乗った軽装の青年が脛くらいの高さを滑るように飛んでいくのを見て驚いた。





 私、頭が痛くなってきたわ……、けど気持ちの昂りは誤魔化せないかな?


 とっても楽しい♪


 エバン君に話を聞くのが楽しみになったわ、いろんな意味で。




 こうなったら楽しまなきゃ嘘よね?


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ