慣れない旅 1
結局、良く行く薬品店で多目の薬草と解毒薬を幾つか、食料品店で保存食を一週間分買い帰宅。
備え付けにしてある練成陣の中央に沢山の薬草と井戸から汲んで来た水を置き、立てかけられた短杖を構える。 その先にはオレンジ色で弾丸の様な形をした鉱石が填まっていて陣と同じ波動を出していた。
深呼吸一つ、精神集中してから祝詞を唱える。
『結晶する意思 二つは一つ 痛みと共にその身を晒せ』
すると、陣を構成する文字が斑にひかりオレンジの輝きを増す。
目を明けていられない程に光量が増加した後で不意に輝きが消え、そこには無事に3本の薬ビンが転がっていた……、無事に練成成功!
初級に属する品だけど絶大な効果のあるポーションが出来た。
明日に備えて早めに寝ようとしたけどワクワクが止まらなくてもう一品、起爆剤を作成。 こちらは失敗して少量しか出来なかったが一応持っていく事にした。
……翌朝。
案の定、寝不足でつらいが何とか二人と合流。
「おはようございます、エバンさん。 昨夜は~……あまり良く眠れなかったみたいですね?」
「旅に寝不足は付き物ですけど、体調管理は大事ですよ。」
はい、いきなり心配されちゃいました。
「……、油断大敵。」
ウァラさんからも一家言。
「はい、不覚です。」
そんなやり取りもあったけど街に近い事もあってか道中、何事も無く中間地点まで来れた。
しかし、旅慣れてない俺の足はボロボロで余計な体力を使ってしまっていた。
疲労具合をみて今夜は早めに野営する事にしてもらうと、二人はサクサクとキャンプ跡地らしきものを見つけあっと言う間にテントを設営。
「凄いですね!」
鮮やかな手並みに疲れも忘れて賞賛すると 「こんなの慣れですよ。」と赤くなりながら誤魔化されてしまった。
褒められるのは苦手なのかな?
「そんな事よりも、足がつらい様なら治療しましょうか?」
そんな申し出に1も2も無く頷いてしまう、気にした風も無く。
「では、体を楽にしてリラックスしていて下さいね。」
言う通りに力を抜く。
『神の恩寵に於いて 癒しを与え給え 回復』
すると、みるみるうちに痛みがひいて違和感も無くなっていく……、魔法スゲーな!
「どうやら血豆も潰れていた様ですね。 つらかったら早めに言ってくれても良いですよ? 雇い主なんですから。」
笑いながら言う。 それに、これ位ならあまり自分も疲れないので遠慮しなくても良いとの事。
これは嬉しい誤算だ♪
夕食はお礼も兼ねて俺が作る事に、干し肉を水で戻し亜空間から玉葱とピーマンのこま切りを取り出し適度に炒める。
戻し水にコンソメの塊を落とし即席のスープにして二人に渡して野菜炒めに肉を投入、調味料で味をつけてパン切れに盛り付けて完成!
「お手軽料理で悪いけど、どうぞ。」
俺が言うと、かなり嬉しそうに食べてくれた。
ウァラさんにいたっては凄い勢いで黙々と食ついていたくらいだ。
どうやらサーナイアさんは料理が苦手であり、ウァラさんは壊滅的に駄目なんだとか。
いつもは非常食料のみで済ませていたそうで、旅の間の食事は常に難点だったそうな。
そこで提案、「道中食べられそうな野草や肉を手に入れてもらえるなら料理を担当するけど、どうかな?」
言うとすぐさま賛成の声が返ってきた。
これで今朝の失敗も帳消しかな?
今夜は前半をサーナイアが、後半はウァラが見回りの担当になる。
俺は雇い主なんで免除。
二人に後はお願いして先に就寝させてもらった。