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喋る魔物 「モモ」




 今回の野外奉仕は、契約を真ん中に据えているので魔法が要る。



 監査も渋々ながら封印を解いてくれるみたい。

 国の命令でもあるしね。



 特に特定の祝詞がある訳でなく、首輪を取るだけで神の息吹がしたから驚いた。



 しかし、迂闊。




「あっ! まって!」



 あまりにも呆気なく解けたので、意識の切り替えが間に合わなかった。


 生き物の生き死に関わる、輪廻の神官を舐めてはいけない……。



 今まで見えてなかった死霊の怨めしい姿が、私目掛けて集まってくる。



「助けてくれ」と。



 あっという間に周囲を取り囲まれた。



 瞬時に発動した防御系パッシブスキルが発動して私は無事だけど、監査はかなりシンドイだろう。



「急がないと!」



『ゆらゆらとふるべ 恨みつらみも七十三夜 鎮めたまえ あるべそわか!』




『ゆらゆらとふるべ 恨みつらみも七十三夜 鎮めたまえ あるべそわか!』

 


 片手で印を切りながら繰返し唱える事で死霊達の姿が薄れていく。



「大丈夫ですか、監査?」



「ああ、大事ない」



 態度は変わらなかったけどやはり恐かったのだろう、握りしめた拳と小刻みに揺れる肩が雄弁に物語っていた。



 


 なんて、軽いハプニングがあったけどその他は滞りなく……。


 北東から北に回り込んだ苔の多い谷で今は野宿三日目を過ぎ、やっと件の地域に辿り着いた。




 あの蜘蛛達は高い所が好きらしく、彼我の距離は5m。

 

 目の前に12体程たむろしている。



 目当てのピンク蜘蛛、モモは割りと奥の方で大人しくしているみたいだ。



 蜘蛛が動く度ざわざわと何かが擦れ合う音が響くのが不快で恐ろしい。



 あれ等は巣を作らない、何故なら肉食系捕食者だから。


 罠を張るより狩りを好むとサイラーは言っていた。



 群れなのも痛いなー。



 こちらの手勢は監査を入れて6人。

 人間女性ロ95、以前一緒に組んだ戦士系のロ43、人間男性キ305、同じくハ12。



 まだ群れからは距離があるけど、戦いたく無いので早めの詠唱。



『我願うは信条の締結 群青の意思は双子にありらん 我……やっ、うー……、やっう……。 がっ!』









 痛~!


 舌噛んだわ。



 うっわ、やっだ、恥ずかしい!



 ……て言うか、やば……ぃ!?



 あっ……失敗した!?



 慌てて周りを見渡したら、「何してんの?」的に呆けたメンバーの顔達と目が合った。



 あっ、珍しく監査も酷い呆れ顔。




 そして、此方に気付いた蜘蛛さんズ。



 いやん、見逃して?

 テヘペロしたら許してくれないかしら……って、無いわよねー!




「何やってるんだ、貴様は。 契約魔法の有効範囲は狭い、こんな所でやってどうする。」


「打ち合わせたろう!」




 あー……、すみません。

 それ、聞いてなかった時のだ。


「しかも、噛むとかっ!」



 あぅ、押し殺した声が痛いです、はい。




 フーっと、溜め息と深呼吸を一つ。

「仕方無い、気持ちを入れ換えて迎撃。」


「き・み・は・改めて、一言一句間違わずに丁寧に詠唱」


「その後、保持だ……、わかったな?」



「はいぃ!」


 思わず背筋が伸びる。


「行くぞ!!」


 監査の号令の元、囚人達も正気に戻り速やかに陣形を作って斬り込んでいく。



 なんか私、最近この展開多くないかしら?



 無駄だと知りつつも嘆息しながら長く難解な祝詞を紡いでいく。




 今度は大丈夫みたい、難しい発音のエリアは過ぎた。



 言われた通り発動手前で術を維持しながら皆の後を追う。



 流石に敵の数が多かったから苦戦するかと思っていたら、まだ成体に成り立てだったのか倒せない事は無いみたいだ。



 派手に動くと集中が解けそうで援護に回れないのがもどかしい。



「そろそろ有効範囲だ、最後くらい決めてこい」


 監査の後押しで祝詞を吐き出した。



 そんなモモと私との間を六芒星の魔方陣が仮の繋がりを作り出す。


 白い光と燐光立ち上る、幻想的な光景から聞こえてきた声は妙にカン高く



「遠くて気付かんかったけど、姐さんやないかー、元気しとった?」



 なんて、気の抜ける反応だった。


 正式に契約獣として絆を結びたい、と言ったら一つ返事で承諾だったのは言う迄も無いわよね。

 断った場合、倒さないといけないのも理解している雰囲気がしている。



 モモと契約した途端に取り巻きの蜘蛛は逃げていったけど、後で聞いたら勝手に着いて来ていただけで何の関係も無いらしい。


 妙に頭良いな?



 因みに今まで私は、モモちゃんだと思ってたけど、雄だそうです。


 ピッチピチの45歳らしいです。


 もう、イヤだ……、あふん。




 なんてやってたら監査に、「やけに会話が具体的だが、それは妄想ではないのか?」と不思議がられた。


 そんなモモの馬車内。


 曰く、「契約獣はそんなに頭が良い訳無いし、人間の言葉を理解させて尚且つ会話させるのは難しいだろう?」と言う。



「それに、でかいだけの蜘蛛だしな」



 喋る魔物……。


 なんか引っかかるわね、それ?



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