表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
46/59

帰還




 結界の川を越え3時間も歩いただろうか?



 地面が岩場じゃあ無くなり、完全な土に置き換わり出した。

 俺が出発する前はまだ見渡す限り岩場だったので土魔法でわざわざ均してくれたんだろう。


 術式はわからないけど、間違いなく王子達の仕事だと思う……ご苦労様だな。



 初めて踏む柔らかい土。

 地上の道の様な地面は足に馴染み歩きやすい。



 最初はおっかなびっくりだったけど、慣れない長距離移動で移民さん達も疲れが隠せなくなって来てたので有難がっていた。

 なまじ肉体が強くなったせいか、こう言う配慮に欠ける事が多くなっていかんね。



 反省材料・1。



 思いつく限り負担にならない様に、且つ脅威度の高い魔物を迂回したり皆の体調によって当初より移動速度を下げたりと、2週間の予定だったけど実際には3週間にも及ぶ旅程になってしまっていた。



 今度はもう少し余裕を見て予定を組まないとな。


 反省材料・2.


 幸い、冒険者達の護衛期間の延長も追加報酬で受け入れてもらえたので助かった。

 現金か現物支給か提示したら悩んでいた様だけど現物支給を選択……、俺はマジックアイテムを各自に渡す事で決定にした。



 ケロルには『機敏の腕輪』と言う速さ補正のリング。

 

 サジェには『サイコミュ』と言う精神力補正護符を、アネモネには『頑健の指輪』と言う肉体補正の指輪。


「これで人並みに強い肌になる筈だから厚着しなくても良いよ?」と言ったら泣いて喜んでたな。



 最後、アンナには前約束通り『暗視ゴーグル』の更に高品質版で手を打って貰った。

 俺的にはランクのあまり高くない物だが普通には手に入りにくいアイテムだし、パーティーの生存力も大分上がった筈……。



 何だかんだ言って気に入ってしまったので彼等には生きて活躍して貰いたいもんだしな。



 順調に暫く歩くと土の道が区分けされ、畑の準備がされているのに気が付いた。


 

 この辺になるとちらほら農民の顔も見えだし、俺達に手を振ったり、「お帰りなさい!」と声をかけてくれたりが嬉しい。

 やっと我が家に帰ってきた気がする。



 発展してきた村を見ながら、歩く前方中央に遂に総水石造りの神殿塔が見える。

 中に発光物があるのか、全体的に仄かな輝きを放っている。



 正に水の塔……。


 その偉容に息を飲む移民団とアネットに老医師。

 冒険者である『ハングリー☆バグズリー』の面々にもこれは驚くに値する物だったみたいだ。



 各言う俺も想像よりも荘厳で立派な力作に少し驚いてるのは内緒だ。



 水石の神殿塔の内部には、ひと回り小さな大理石造りの塔が建っていて内部のプライバシーも守られているみたいで一安心。

 この規模になるともう村とは呼べないなー、こりゃ。



「ようこそ、神都・リバイアへ」

 俺は皆に旅の終わりを告げる。



「水神エバンニドが皆の移住を歓迎しよう!」

 軽く神気を纏いながら神としても宣言し、受け入れを祝っていく。



 これで彼らも彼女らも神都の民となった。

 まだ驚きで固まっている皆を手の空いている人間が率先して誘導し、それぞれの希望を聞いて該当施設などに案内していく。


 俺は先頭から離れ『ハングリー☆バグズリー』の面々に向かい、先程予定していたマジックアイテムをバッグから取りだし、手渡してそれぞれに感謝を述べた。


「あの、私達も暫くここに滞在しても良いですか!?」

 つかえつかえだがしっかりと言いきったアネモネに俺は頷き、


「リバイアの門は邪悪な者以外いつでも開放されているよ」


「ギルドも作っている予定だから見てみると良いさ」と宣伝もしておいた。

 それで彼女らに失礼して別れ、どう開発したのか俺も聞くため神殿塔へ足を向ける。


 

 下の居住区、元盗賊団と戦った洞窟に入ると道が二股に分かれ、中心に水の神殿塔の入り口が来る。

 光石も新たに大量配置されているらしく、内部はかなり明るい。



 扉は閉められておらずに中には礼拝堂よろしく長椅子が並び、際奥が一際高く段になっていて、そこにギルドの受付にある様な高い机が一つ置いてあった。


 背後には今の所、神像は無く変わりに聖印が建てられている。



「お帰りなさい、我が神」

 左奥にある両開きの扉からヒノンが現れる。



 どうやら昇降機の魔法版みたいな乗り物らしい。

 本来は搬入出専用なんだろうが人も乗れる。

 もちろん、右奥には通常の階段がカーブに添ってつけられている様でそちらは大工達や手伝いなどが慌ただしく登り降りしている。



「まだ、内装は完全に完成していないので慌ただしいですけど、お気になさらず」

「上に参りますので乗って下され」と一緒に昇降機のに乗り込んだ。



 内部は10階建てになっていて俺とヒノンの執務室は9階にあるそうだ、最上階は会議室で大きな窓が開けられていて見晴らしが良い。

 今はまだ、それほど見るものはないが景色も後々活きてくるんだろう。



 執務室以外の部屋は今は空室で更に下は司祭を目指す人間用の寮になっているそうだ。

 他に多目的室と調理場、地下には倉庫も有るらしく暫くの間なら塔内で生活を完結出来る防衛施設にもなっているらしい。



 地上部分は俺が留守の間に粗方の場所決めを終え、地均しもほぼ終えているとの事。

 大活躍してくれた王子は俺が迂闊に動けなくなったので、ここを拠点として自前の騎士と独自に動く事にしたそうだ。



 エミリオは防衛の要だし、ヒノンは宰相の様な扱いになってしまったので暫くは内政に精を出した方が良いかもしれないな。

 先行組のルビー姉さんも無事到着して、すでに銭湯作りに入ってるそうだし、盗賊団にいた謎の魔術師にも警戒して対策をとらないと……、依然やる事は尽きない。


 ヒノンとあれこれと決めながら、俺は何か忘れているような気持ち悪さを感じていたが、この時は何だかわからなかった。




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ