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これは流石に、反則技じゃあ無いだろうか?



 帰還2日目。



 整地やら区画整理は王子達に任せて、俺はヒノンと神殿の構想について話し合っていた。

 場所は工房の隣り、仮説住宅内。



 仮設と言っても、会議にも使うので室内は広くしっかりした造りにしてある。



「「うむむむむ……」」

 そんな中、男二人して唸る事30分あまり。



 なんでか?

 即ち、神殿建設に使う建材で悩んでいるのだ。


 神都の象徴にしようと考えてるので派手に目立つ様にしたいよね? とか話してるんだが、結局は堅実で地味な方に話が行ってしまう。


 いっそ水でも遡らせるか? とか言っても実用に耐えられる素材も無いし微妙……、御影石などを使っても良いが磨耗や劣化が早いらしいのだ、修理に奔走するのは本意では無い。



 神らしく手早く他の神域を真似るにも、そもそも人の気が多すぎて俗っぽく、神性を保てないので神域の概念を借りる事も難しい。

 ちなみに神域の概念とは、『何者にも荒らされない』だとか『火気禁止』など空間や物に条件付けする神の使う神技の事だ。


 なら、神域に住み込めば神域を消せるのか? なんて問いが出るけども答えは「Yes」だ。

 しかし、普通は『隔絶』の概念を組み込むから意味の無い問いでもある。



 一しきり唸る俺達に隅で大人しくしていたイシスから「普通に大理石や白石じゃ駄目?」と指摘され困る。

 駄目では無いが、なんか……こう……負けた気がすんだろう。



 発想を逆転して、ひたすらゴツイ岩盤で塔を建てるのもインパクトと言う点では良いけど、如何せん地味だ。


「水で家が作れたらカッコいいかも?」


 ぽそっと、イシスがさり気無く言い放った台詞にヒノンが雷に撃たれたようにガクブルする程喰い付いた!


「イシス嬢、それだ!」

 ビシッと指差し確認のポーズで言い放つ、心なしか劇画調に見えるよ、あーた。


 それよりそんな事出来るんだろうか?



「私が昔に読み漁った文献にネタとしてあったのを思い出しましたぞ!」

「しかし、我が神なら出来るかもしれませんぞ!」とのヒノンの言。



 方法としては水に形を与えて、それが本来の形だと勘違いさせると言う理論らしい……、なんて暴力的なんだジーザス。

 神技としては無理だけど、術式だけなら錬金術で使う祝詞でやってやれ無くは無い、かな?



 駄目元でやってみようって事で工房へ移動。


 こっち来て整理もして無いからまずは片付けを始めたんだけど、師匠の忘れ去られた作品が幾つか出てきた『解析』かけてみたいが今は我慢。




 術に使う祝詞としては『有るべき物は、在るべき場所へ』の変型で『有るからには、在るべきか』を挟む感じでまずは発動してみる。

 水が集まり箱型なり、その周りを祝詞文字が輪になり巡る。

 吹き荒れる風や紫電がひるがえり、一応は形になったけど干渉力だけでは成立出来ず、まとまった後に数秒で崩れた。



 けど、全く無駄では無いらしい……、興奮してきたぞ!

 もっと強い言葉『在るからには、有るのが当然』から始まる陣で絞りこんでみたら固定時間が増えた!!




 なんてやりながら繰り返す。



 …1回目。


 ……2回目。


 ………3回目。


 …………エンドレス。



 延々と繰り返される失敗の2日間。


 膨大な数の試行錯誤をしてみたけど、結果は必ず僅差で失敗する。




「何故だ!!」

 心が折れそう、流石にやる気が萎えかけていた時、休憩がてらイシスに構いに来ていたエミリオが「神聖魔法使うみたいに神気とやらで錬金術とか使えないのか?」と聞いてきた。


 俺もヒノンも目が点……。

 むしろ盲点だったかもと思ったけど、何で魔法の苦手な君からヒントが出る!? 八つ当たり寸前の俺達に、竜言語魔法は魔力じゃなくて気で使うからとか言ってたな。


 兎に角やってみよう・そうしようと、さっきの要領でバンバン試してバンバンやり直す。



 魔力を使っている時とは違って毎回、陣が失われるのは煩わしいけど確かな手応えが有る。

 時間を忘れて繰り返す事また数日、神成らぬ身のヒノンには疲労の気配が濃く漂う。

 入れ替わり立ち代り報告や見学に来る者も多かったけど、鬼気迫る俺達に直ぐに出て行ってしまう。



 尋常じゃない俺達の根の詰め様に呆れた魔道騎士副団長のアハゼンさんが「こんな暗い部屋では不健康です。少し休んでは如何ですか?」と心配しながら『明かり』の魔術を灯す。



 場が歪む。

「おゎ、馬鹿野郎!!」思わず汚い言葉が出る……、続けて次の術を発動してしまっていた俺の陣と彼女の『明かり』の術の魔術干渉が火花と紫電を散らし世界が荒れ狂う。


 こんな狭い部屋で使って良い力では無い。

 悲鳴を上げる彼女を庇い、黄金の左腕を盾にして余波をやり過ごした先、小さな静電気がジリジリ言う陣の上にコロンと水の石が乗っていた……。

 平謝りする彼女に曖昧な返事をして全員下がらせ、偶然出来上がった一つを手にあれこれと手を加え陣の構成を読み、可能性の欠片を拾い集めて最終的には破壊してみたりもした。




 そして……「完成した!!」ヒノンを呼び出し実行して見せる。



 片手に魔術と神気を集め慎重に合成、祝詞を紡ぎ陣に力を流す。


『水※はるか※神性 求むるは 在らざるを弄う なら在る 去るならば 有れ!』

 完全な力業だけど問題無い、不敵に笑って見せる。



 周囲から水が集まり、空想の鋳型により四角くなり水の塊がコロッと落ちる。

 大きさは両手で抱えられる位、中心に丸い陣が浮かんでいるが解析は出来ないだろう。

 と言うか、俺や神位にしか見えない筈。



 水には仄かに青色が着いているが、質感は固形物で軽く冷たい。

 割ってみても石の様な割れ方で液体にはならないし、流れ出さない。

 強度は鋼には勝てないけど鉄に近い硬度であるらしい、この辺は『解析』済みだ。



 面白いのでこれで神殿を建てよう! と押し付ける。



 鼻息荒く。

「これは国の名産になるんじゃないですかな!?」とヒノンが息巻いていた。



 おもむろに、別バージョン海水を使い硬度を下げたものを作る事にも成功と、奥から深い青緑の石も差し出す。

 舐めてみる様に言うと、少し躊躇ったが「しょっぱっ!」と驚いていた。

 地底でありながら塩に近い物が出来たし、取り敢えず各家庭に配るべく大量生産に入るかな。


 売るかどうかは後で決めよう、そうしよう♪







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