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流れ出す心


 


 話し合いの最後に差し掛かり「自分の拠り所を作ろうと思う」と、俺はハウルベル王にそう宣言した。


 影響が勝ち過ぎるとか、前例が無いだとか、神族らしく無いとか、もう辞めた。

 ぶっちゃけ、どんなのが神らしいのかも手探りなんだと吹っ切れた。

 一度、心の赴くままに振る舞ってみようと決めたからだ。



 駆け引き無く良い放つ俺の爆弾発言に、王が息を飲む気配がする。



「それは我が国に神の守護を与えると言う事ですかな?」

 言質を取る様に窺う王。

 しっかりと頷く俺に「ふむ」と頷き。



「ならば、私も一人の人族として、国王としても信仰を捧げましょう」と即決する。



 大国の王が、臣下に何の相談も無く、1・2も無く従う程に神の契約とはそれだけ有り得ない、国にとって利益のある事だったりする……。



「拙いかもな?」

 なんて気持ちも、ムクムクもたげたけど無視!

 

 そ知らぬ顔で信徒の証として前もって錬成しておいた聖印を贈る。

 


 3本の棒が雪の結晶の様に交差した意匠は水の意味を持ち、俺専用の神聖武器として位置づけたギミックソードの絡んだ飾りを添えてある、中心にはアクアマリンを抱くエンブレム。

 これを通じて双方向に、祈りと加護のやり取りが出来、お互いに力を増す仕様にしてある。

 更に、同じ物をもう一つ渡し、新たに建設して貰う事になるだろう神殿用に使用して貰う事にした。



 

 その後も長く続いた話し合いで、復興に必要な建材や食料・生活支援や人材の援助について細かく詰めて行く。

 人間相手なら妥当だけど、こんな話も出た。


「不躾ですが、今後の防衛の要に我が魔道騎士団より精鋭を5人程派遣しようと思うがどうでしょうかな? 此方の都合で半年事に呼び戻し、交代での派兵とさせて頂く事になるがの?」と言う提案。



 多分……、情報収集の意味合いも強いのだろうけど、その防衛能力は魅力だ……無償の様だし、断る理由も無いのでお願いする。 

 更にシャスティア王子にも土魔術による建築支援と整備の協力も約束して貰い、粗方の話がついた。


 

 次に、人選自体は王の方で行ったが、魔導騎士の宿舎に移動し先の話し合いの結果、同行する事になった精鋭5人と顔合わせをする事になった。


 


 まずは順当に、副団長のアハゼン・シュテルグさん。

 地底人女性で20代半ば位に見える。

 得物は強弓でゴーグル型サングラス愛用。

 

 次に攻撃隊から男女2名、守備隊から男性1名、補助魔法隊から男性1名と言う内訳だった。



 特に補助魔法隊員、ボグラ・ドラの食い付きが凄かった。

 本当は攻撃隊の騎士になりたかったらしいが、才能が無く神聖魔法でも良いから攻撃魔法を覚えたいそうだ。

 隠れ戦闘狂なの!?


 そんな理由かよ!?って内心、軽く引き気味だったけど、強い信心力は俺の力にもなる……。


 俺の教義と相性が良いかわからんし聖印を進呈して契約を交わした。


 様子見だね。

 彼は入信者になれた興奮からか、「道中、命に代えてもお守りします!!」としつこく着いて来たがったが、普通の武器を受け付けない俺には不必要だし。

 

 

 まだまだ足りない物資の融通に、人材の確保にと水族移送陣を使って移動の予定なので、あの手この手で他の騎士達と一緒に村に向かって貰える様に言いくるめた。

 

 これ以上、付きまとわれるのは<今は>不都合しか無いので、念を入れて予め用意しといた依頼保証書を副団長に渡して、さっさと先行出発して貰う事にして別れた。



 時間は有限。

 

 急ぎ王城を後にした俺の前には師匠が立っていた。


「直ぐの帰還でしたが、お帰りなさいですね?」

 えぇ笑顔の師匠……、変なもんでも食ったんだろうか?


「今……。失礼な事考えてますね?」

 馬鹿な考えを見透かされたみたいで焦り、

「そんなわけ無いじゃないすか?」と逃げた視線の先で「ザアァァァッ」と、大量の雨水がアーティファクト『完全防水ウォータープルーフ』の防壁に弾かれて、空に一時的に滝が現れた。



 一般市民達の悲鳴が上がるが反射的なもので皆、実害は無い事を知っている。


 

 暫く濃霧が続いたので天井の水滴の張力が限界に達したのだろう。

 

 この国の絶景の一つだ。


 おもむろに、まだある右手を差し出し掌を向ける。



「師匠……、一緒に俺の国に来て貰えませんか?」

「まだ生まれる前の下ごしらえの段階ですが、貴方の力が借りたいんです」

 照れ臭かったが何とか言い切る。



「面白そうですね。と言いたい所ですが、直ぐには身動きが取れませんね」

「いずれ、身辺整理が済んだら伺いますよ」

 今はまだ興味を引ききれ無いみたいだ。


「なら、それまでに精々見れる国にしておきますからね」

 差し出していた手を上げお互いの拳を打ち合う。


「楽しみにしていますよ?」

 では、とお互いに何も無かったかの様に別の道へ歩き去った。


 


 その足で冒険者ギルドに赴き、国王から連絡が行っていたらしい冒険者ギルドで、ギルドカードのブラック化と亜空間バックの上位交換作業、返還の制約の解除等が早やかに行われた。

 これで領主待遇だな。


 その後ギルドマスターと面会し、新しい俺の国にギルドを建てる予定なので、ギルドマスター及び職員の派遣を要請したいと持ちかけた。

 


 頭金は俺の作る錬金術製品の進呈(勿論グレードを下げたり、制約を付けるのは必須)更に俺の教団との自動契約のアーティファクトを置かせて貰う予定を伝える。

 


 この世界の神は怠惰な者が多く、自ら契約して歩く様な神は少ないので信徒獲得にかなり有利な筈なのだ。

 今は少し手も沢山の力が欲しいのだ。


 力不足で泣くなんて御免こうむる。

 最低条件として、マジックアイテム如き(アーティファクトの下位製品全般の事)で傷など負わないようになりたい。

 


 これが第一目標。



 ギルドマスターの反応は悪くない……本部とのやり取りも有るとかで後日、返事待ち。

 良い答えを期待しつつ、今まで貯まった素材や討伐依頼の消化を済ませ、地味にランクも上がった。


 そうこうする内、すっかり気温も下がり夜の気配も濃い。


 師匠の工房を使っても良いんだけど、昼間のやり取りの後で借りるのにメリットを見出せない。

 今日は宿に泊まる事にする。

 それに外はまだ、雨玉警戒令が解けてない筈なので防壁の出入りが出来ないから良いか。




--翌日--



 天気は地底日和。

起動エン・ラクシス!』

 淡い光を放つ移送陣に干渉して空間を跳躍、王子たちには単独で戻って貰う事にして一端、村に戻る。


 帰って直ぐにヒノンに会い打ち合わせで情報の交換を済ませ、村人に広場に集まる様に召集を頼む。



 てか、思ったより集まりが良くて準備に焦ったけど、動揺を押し隠して少し高めの台に乗る。


 事前段取り通り、アイシャさんに風魔術『風のウィスパー・ボイスき』を使って貰い、声を遠くに届く様にする。

 これで演説の用意は完了。


 傍らには神獣化したヘイルサンダを控えさせ、俺も今出せるだけの神気を纏っている。

 けど、正直言ってしんどい。

 全然扱えて無い。

 けど、頑張るしか無い!


 その甲斐有って、これだけで村人達にはどよめきが走り、畏怖から声を聞く体制が出来上がる。

 今はそれでも良い。


「皆さん、先日の激戦、まずはお疲れ様です」


「見知った方も居るかと思うが新領主に任命されたエバン・ニードと言います」


「背後に控えるのは神獣であるヘイルサンダ」

 あの時の防衛戦を思い出し顔と名前と役職が一致したらしく歓声が上がる……。

 


 皆を宥め、落ち着くのを待ち言葉を繋ぐ。



「当初、普通にこの地を治めるつもりでしたが、あの時の嘆き・亡くなった方の無念に触れ本腰を入れ、統治したいと考えました」


「その為には今より力が必要なんです」


「皆さんを守る力になってください」


「なぜなら俺は、なりたての水の小神、まだ十分な地盤がありません」


「私達はハウルベル王との約束により権利も得ています、ここに私の国を……神都を建設したいと考えています」

 爆弾発現により一層のどよめきと驚きが上がるが気にせず。


「どうか協力をお願いします」と言い切る。


「陰ながら、人間族の領主として影からの支援をと思っていましたが、先の襲撃は私達にも大きな傷痕を残しました。」


「私は決心しました! 神として全力でこの地を、あなた達を導きたいと思いました。」


「私を助けてくれる方は前へ、共に神の都作りを手伝ってくれませんか?」

 話すうち場を静寂が満たす。



 当然か。

 はなはだ胡散臭いと、我ながら思うが……皆、賛同してくれるだろうか? 

 緊張の時が過ぎる。

 



 体感時間的に大分経ったと思うが動きが無い。



 駄目だったかと、不安で堪らなくなって動き出そうとした時、一人の少女が躍り出た。


「私! 良くわからなかったけど、あの時、皆を守ってくれたって知ってる! もしかしたら今、生きてるかわからなかったのも知ってる……だから……信じてみたいよ!」


 素朴な好意が嬉しかった。


 笑顔で聖印を差し出す。


 大衆の目の前で契約が交わされ、眩い光に包まれる少女……彼女にも何らかのスキルを得て、俺にも光が戻り神気の維持が楽になる。


 繰り広げられた光景に、本物を感じ、「わっ!!」と皆が詰め掛けた。


 きっかけが必要だったらしい。


 俺は仲間達と聖印を配りながら、まずは第一歩を踏み出せたが……これが正解かは<まだ>わからない。




後半。

読み返しての違和感があったので大分、書き直しました。

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