覚醒の神子
--サイド・マリア--
ここは何処だろう?
目蓋の向こうが明るい。
目を開けたいのに上手くいかなくてもどかしい。
何故だか声も出ないし、私さっきまで何をしていたんだろう?
思い出せない……。
(起きて下さい……)
(起きて、愛しい神子よ)
誰だろう、暖かい声。
私はゆっくりと目を開いた。
(始めまして神子よ)
現れたのはとても綺麗な女の人、何故か声には反響がかかったかの様で頭がクラクラするみたいに感じた。
すると心を読んだかの様に
(ごめんんさいね、これ以上小さくなる事が出来ないの……少し存在が辛いだろうけど我慢してね?)
そう言えば目の前の女性はとても大きく見える気がする。
髪は頭丁で団子の如く括られ、両サイドから毛束が2本、天使の輪に見える様に浮いている、輪の先はうなじで交差して首筋から胸に流れいる。
不思議な髪型……。
髪色は金で見た事も無いような美人さん。
胸もとても大きく真っ白なワンピースを身に纏い、右手に向日葵の弓を持っていた。
綺麗。
思わず思考が漏れる。
(ありがとう)
うふふ、と笑いの波動が伝わる。
(でも今はそんな事は良いの、貴女の妹を仲間を助けてあげて?)
(貴女にしか出来ない事なの)
ふっくらと笑い、唐突にゆっくり体が回転する。
その胴の先には別の女性の上半身、背景が夜の闇に染まる。
同じ顔付き・同じ美貌、殆ど同じなのに控えめな美を持っている様に見えた。
彼女は黒のストレートで同色のローブを纏い、左手に百合の花を象った柄の剣を握っていた。
(我が神子、私からも頼む彼女を、助けてやって欲しい)
(あれは騙されているだけなのだ、可哀想に)
悲哀の波動が満ちる。
(もう時間が無い)
(心、安くして待て)
((新たなる希望の双子とならん事を!))
2つの波動が混ざり合い、私に色をつける。
そうやってまた意識が離れ、本来の体へと帰り行く。
曖昧だった状況も認識した。
ふらふらと立ち上がり、もう一度目を閉じた。
夜の闇と月、真昼の暑さと星を感じる。
(瞼の裏が熱く頭が割れそう)
(けど、やる事はわかってる……私の唯一の肉親守るのだ!)
(皆だって助けて見せる)
【強い意志が力になる】
目の前を隔てていた様な壁が粉々になるイメージ。
忘れていた記憶が盛大に溢れ出す。
その瞬間、サーナイアも微かに揺れたかと思うと、光の無かった瞳に生気が戻り新しい涙が次々と流れ落ちる。
双子だからだろうか、マリアの記憶の封印崩壊に引きずられる様にサーナイアにかけられた洗脳も一緒に解けたらしい。
更に、死霊に魂ダメージをしこたま受けた仲間たちの遺体から眩い光が立ち上り起き上がる。
まとわり付く冥界の腕も体を触れずに怨めしそうに引っ込んで行った。
後には不思議な顔で起き上がるエバン達が残る。
「私……私、なんて事を……取り返しのつか無い事を沢山してしまったわ」
よろめき座り込んでしまう。
「皆、死にたく無かった筈なのにあんな風に……ああ、ごめんなさい!」
握りこんだ爪が自らの皮膚を裂く。
「憶えているのは最後の顔……。痛い顔、苦しい顔・泣き顔・死に顔!!」
「謝って許される訳無いけど、私」
サーナイアの嗚咽が止まらない。
座り込んでしまった、正気に返ったサーナイアには興味が無いとばかり、サイラーは見向きもしない。
「チッ……けったくそ悪い、潮時か」
ニヤニヤしていたサイラーの顔付きが唐突に変化し、吐き捨てる。
昆虫人間から降りると、すぐさま魔人化し戦闘体制を整える。
当時は全力で変化しても蜘蛛人間化するだけだった変身も、あの時得たアーティファクトを強化に使っているのか見た目が凶悪になっている様だ。
頭部は人間のままだが複眼が剥き出し、わき腹と背中から2対の腕が突き出ている。
皮膚は体毛に覆われ黒と黄色の斑の毛色。
全ての手に刀・短刀・大型ナイフを装備し六本の腕を巧みに操る。
「さて、あの時の後始末と逝きますか!」
何が楽しいのか、またニタリとニヤついたまま構えをとって襲い掛かってきた!