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レカント 1 ~嵐の前の何とやら~


 いやはや、大水神様の思惑通りに大事になりました。


 我が神も災難ですな。


 失礼、私はウンディオラのヒノンと申します。



「火精霊のベイシェットさんもー、水のアステルパスも居ますわよ!」

 ちょっと食い気味、間髪入れない挨拶の二人は私の双剣に宿る下位精霊達です。


 精霊と言えど女、寄れば姦しいとはこの事か……。


 私は状況を利用して無理矢理にパーティーに入りましたけど、思ったより早く馴染む事が出来て何よりでした。

 多分に、イレギュラー要員のシャスティア王子のお陰も有るでしょうかな。

 何でも長く王宮を空けるのは初めてとかで大層、ハシャイでおいでの様子で微笑ましいものです。

 使えるものは何でも使えってね。


「あれはなんだ? それも見てみたい!」

 との興味に、率先して解説を加え時に適度に絡む事で加速度的に警戒心を薄められました。


 私達は現在、エバン様のお師匠でいらっしゃるハチガネ様の工房で別れを済ませ、ハウルベル王の依頼を受け一路、エバン様が治められる予定の村・レカントに向かっております。


(相変わらず爺むさい喋りよね、ヒノンって。そう言うの若年寄って言うのよね?)

 ベイシェットが残念そうな思念を飛ばしす。

 アステルパスまで(精霊化したのは晩年だそうよ?)なんて絡んでくる。


 暇なのでしょう。

 私は全スルーです。


 何故、思念で会話しているかと言うと地底地域では精霊は珍しいので二人には人前で出ない様に強く念を押してあるので面倒くさ……と、つい本音が……その方が安全だと思われるので更に念の為に出るな喋るなと命令してあるのです。

 この辺の事情はパーティー内で話してあります。

 精霊の宿る武器も希少なので厳重に越した事も無しですしの。

 精神同調してるので、彼女らの声を無視出来ないのが玉に傷ですが。


 いかんいかん、話が逸れましたな。

 レカント迄はヤギ車で5日程の距離、岩山など迂回するので近い割には日数がかかるようですな。

 見える範囲では緑が少なく、私達、精霊種には過ごしづらい土地柄。

 地底らしい低めなのに湿度の低い気候になっている。


 退屈な移動の旅、順調に見えていたヤギ車は魔物の巣に入り込んだ事で少し停滞していた。



 戦闘は唐突に始まる。



「ザシュザシュ!」


 

 白刃が閃き、軽やかにひるがえる刃は実際の切断音を半分に聞かせる程に鋭い。


 連続で切り裂く音。

 


 凄まじい速さでスケルトンやゾンビなどがバラバラとみじん切りにされ再生力を上回って塵に還す。

 ヒノンの双剣は魔法の炎と冷気を纏い揺らめいている為、断面は焼け焦げ、又は凍りついている。

 


 王子も槍を突き出し、大地を操作してと上手い事仲間が囲まれるのを防ぎ、後方支援役の俺とマリアで行動を妨害しつつ隙を見つけて止めを刺していく。


 問題は倒す端から復活して埒が明かないと言う事か。

 所謂、死にぞこ無いの集団アンデッドの巣。


 まるで沸くように、アンデット達が不浄の土を糧に土塊を張り付けたまま立ち上がってくるのだ。



 目的地に近づくと何かが起こると言うのがジンクスになりかけてるが、今回は不浄の地に迷い込んだようでウンザリする。

 もしかして誰か『試練』のバットスキルでも持ってないか?

 

 しかし、嘆いても敵は逃がしてくれない。

 気分を入れ替えて全力を尽くすのみ!!


「ヒノン……、広範囲の火神魔法で道を開いてくれ!」

「王子は土壁で移動を阻害、巨大な落とし穴とか出来ればそれも頼む」

「マリアは光神魔法で広範囲攻撃をヒノンと被せるように、聖光属性の強いのが良い」

「エミリオはドラゴンブレス一択!」


 各々、是の返事と共に指示のに従い行動を開始。

 自身も詠唱に入る。


 


 最速で王子の土魔法が地面の体積を削り前方の広範囲を土の柱が押し通る。

 ヒノンが祈りを紡ぎ祝詞を叫びながら、火精霊ベイシェットと同調して振り抜いた刀身から爆炎が扇状に羽ばたき、業火の羽毛を無数に飛ばす、『核熱の鳥』を打ち下ろす。

 マリアが長い詠唱を終えヒノンの術に被さる範囲に『降り注ぐ慈悲の光弾』を請うと曇り空を割り、天から浄化の光がアンデット……ひいては霊体の支配力を消滅させ、エミリオが未だ厚い魔物の層に火焔ブレスを豪快に吹き付ける。

 飲み込まれた物体は瞬時に高熱と炎に炙られ灰しか残らない爆炎。

 駄目押しに、以前は強引に発動させた『帯電水の津波パララウェーブ』を俺とヘイルで協力発動させ最大規模で奴らを巻き込んだ。

 振るわれた力で地形が変わるが今回も気にしない!

 流石に終わっただろうと思い、土煙やら火炎、電撃の立ちこめる中立ちつくす。


 様子を見ていると、奥の方から新たに煙を切り裂き、倍の数のアンデッドが再び湧き出してきた。


 何度か特攻を繰り返したがどうにもならず、全員が肩で息をしている。

 何やら強力な不浄の異物があるのかも知れない。

 拙い事に疲労が色濃い。


「無理だ、撤退しよう!」

 想いは皆同じだった。


 撤退するべく足止めし、それぞれが全力でヤギ車に乗り込み、走り出す頃には既に新しいアンデット達が腕やら足やら出して生えて来ようとしていたが、もうお腹一杯だ。

 

 駄目押しでエミリオがドラゴンブレスを吐いて清め、逃走方向の道を洗浄。

 危険地帯を突破。

 これで今日のブレスはもう撃ち止めだそうだ……。

「あの辺にはもう近づきたくないですね」

 呟いたヒノンの一言に全員が同意したのだった。

 念の為に、と言うか恐怖の為に丸一昼夜休まずヤギ達を走らせた事により、予定より特段早くレカントに到着したが、流石にヤギ達は限界の様で動きも鈍くブハブハと息も絶え絶えでフラついていた。


 よく足とか骨折しなかったな。

 この俺等に治療術の使い手が居ないので助かった。

 最悪、捨てて行かなきゃならない所だったかもしれない。


 ちなみに任命見届け任務で付いて来てる騎士達は、壮絶なモノを見すぎて唖然としていたが気にしない!

 


 

10/10 修正。

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