初めての冒険依頼 1
今日は生憎の濃霧の日、余程の用が無いヒト族は国外への外出が制限される。
まあ、誰も大量の雨粒で圧死などしたくないだろうから禁を破るものはほぼ居ない。
その点、ハウルベルには[完全防水]のアーティファクトが設置されている為、安全が保証されている。 しかし、城壁の外堀に関してはその限りではないので注意が必要だ。
もちろん、崩落とかまでは防げないので過信も禁物。
横道に逸れたけど肝心の冒険者ギルドは外縁に近い西城塞通り奥、歓楽街の裏にありこんな天気だと言うのに活気に溢れている。
素材の買付や師匠の依頼代理等でギルドには良く来ているけど、自分の依頼は初めてなので少し緊張する。
入って直ぐに馴染みの受付係を見つけられたのでいそいそと声をかけ護衛・探索依頼を出したい旨を伝える。
すると、いつもならすんなり書類に記入して依頼できるのだけど、すまなそうにしながら受付のヒューイが確認する。
「危険が予想される遺跡に潜る場合、戦闘に参加するならギルドカードの登録が必要だけど、どうする?」
「ちなみに審査と登録料合わせて1500札になるよ? 不合格なら返金も可。 後……、破損・紛失に関わらず再交付には三倍の値段が掛かるから気を付けてな?」
あらー、なんか要らん心配をさせたみたいだけど大丈夫。 登録したい旨を伝え試験官とバトンタッチして訓練室に移動する。(1500札は大体、良い値段の食事二食分位。)
「では、まず戦闘能力を測ります。職業はどう申請しますか?」
「アルケミックウォーリアでお願いします。」
「これは珍しい職に就いてるんですねー、武器は持参してますか?」
今日は依頼だけの予定だったので武器が無く貸して貰いたいと伝え、自分のスタイルに近い鞭を二本借り受けた。
聞き取りも済み、準備が整ったのを見計らって試験官が動く。
どうやら試験官のライラスは剣と楯を使うオーソドックスな戦士タイプの様だ、俺との相性は良くない。
「用意は良いですか? では、始めます!」
開幕一番。
号令と同時に大きく飛び離れ牽制を入れつつ距離を取る。
接近戦に持ち込もうとするライラスをいなし、時に打ち据え、絡め取る……何とかギリギリでの攻防を繰り返す。
派手なクラップ音と重い風切り音に惹かれチラホラ見学者も出始めたが珍しくも無いし、俺は必死な為に気にはならない。
慣れない武器にしては上手く操れたが、健闘むなしくスタミナ切れに合わせてシールドストライクを綺麗に貰いあえなくダウン。
流石に本職の前衛には敵わなかったが一応は及第点らしく、ポイントはD+。続けて別室で行った錬金術行使や精神技能でAと悪くないステータスを評価された。
受付に再度変わりギルドカードを交付されてから直ぐ、その足で依頼を済ませた。
怪我の治療もしてもらった。
後から知ったが合格者にはカードとは別に[亜空間バック]のアーティファクトが貸与されるので遠慮なく借りる事にする。(もちろん、漏れなく『返還の誓い』の魔術付きだし、大きさは旅行用バック程とたいした大きさでもない。)
随分と優遇されてる様に思うかもしれないが、外はそれだけ危険なのだ。
そんなこんなで出した依頼はこちら↓
「依頼料は金4500札か任意の装備品一点の作成。必須条件は前衛職、又は攻撃手段のある術士とした。」
この時、既に致命的なミスをしてしまっていたが、それはまた後の話になる。