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ハウルベル帰還




 宿に戻ったのが遅くなりそうだったから屋台でおじさん達に混ざり、串焼きや肉の揚げ物、芋の煮物などをがっついて帰る。


 かなり美味かったので仲間の分もと包んで貰い亜空間バックへ放り爆睡。


 翌朝、振る舞いがてら作った装備を渡そうと集まってもらったら「相当、ニンニク臭いんですけど」って女性陣に言われてしまった。


 屋台飯ってそんなもんだよね?


 臭い消しの香草も有るからと食べさせてみるとかなり好きな味だったらしく喜んでもりもり食っていた。


 酒飲みにはたまらないよね、実際。


 綺麗に皆で食い終わってから残骸を片し、錬金した装備を並べていく。


 まずエミリオに着物を渡し、「異界の戦士が着る戦闘や普段の生活兼用の装束を真似したんだ」と手渡し、着替えて貰った。


 結構長めに作ったので下はスカートみたいだが脱げる心配が無く、腹帯もしっくりきたようだ。


「おお、人間族用の衣服より動きやすいな!」


 龍化しても破れないのも確認してもらい問題無い事を確認。


「尻尾も出せて良いな、穴空けなくて良いのは嬉しいぞ」と大変喜んでくれた。


 けど、斧を作るのは時間が足らなかったので今回は市販の物を買い直してー、共有財産からで良いんでとお願いする。


 続いてマリア。鎧とワンピースを渡す、今回のワンピースはシンプルさと防御力・着やすさを重視した仕様で衣服としてより防具として気に入ってくれた様で早速着てくれている。


 ミスリルの鎧は初めてらしい。


「うわ!、柔らかいし軽い。 でも手触りは金属なの、変で不思議!!」


 まだ慣れないそうだけど、防御力は上位だよ♪ 金属を糸の様に編み込んだ鎧だからね。 けど、これは間違い無く一品物なので大事にしてもらいたい。


 俺も着慣れた服は仕舞って気分一新! 今回の術服は丈が長いので腕が見えなくても変じゃないので無用な詮索が減る……、はず!


 ヘッドマスクを外したのでなんか気恥ずかしいけど慣れだよね? 



「エバンは気付いて無いけど長旅で髪も伸びて女性にしか見えないの、ってマリアは思います」


 昼からはハウルベルに向かうべく宿を引き払い、買い物目的でぞろぞろ移動。


 途中の武器屋でエミリオの斧を購入。


 今回もバトルアクスにするそうだ。 ポール系までいくと流石に両手じゃないと扱えないので、イシスを使うなら片手で持てる必要があるんだとか。


 ギルドにも寄り、輸送系の依頼と討伐指定魔物情報をチェック。


 狩りと実益を兼ねた旅にする予定なんだと皆と相談、蓄えも十分に有るとは言え何があるか分からないので慎重だ。


「奇襲以外はマリアの矢とヘイルサンダの氷技、俺の金化鞭で攻めて、念の為エミリオが前に出てカウンター待機と防御なんてどうかな?


 接敵と同時に殲滅を繰り返す感じで、これだと素材剥ぎ取り部品の傷みもコントロールし易い」と提案して、概ねその方向で行こうと決まった。


 実際歩いてみると、前情報通り本当に暫くは補給地が無く減っていく備蓄に怖い思いだったけど大きな怪我もトラブルも無く小さな村に着けた。


 ここ迄で、ゆうに3週間はかかっている。 ケチら無いで馬車でもレンタルすれば良かったかも……、と後悔先に立たず。


 次は絶対、ヤギ車を買う事を誓いつつ村に立ち寄る。


 遠かったがここはもうハウルベル国内、俺の住んでいた王都にも1週間とかからない筈だ。


 村に一軒しか無い宿に部屋を取り一晩ゆっくり休養。



 最低限の補充と武器の買い換えをして岩やぎを2頭買って分乗、俺はマリアの前に座り手綱は任せて道案内に集中している。


 向こうはイシスとラブラブしてるみたいだけど極力知らないフリをしつつ残りの距離を走破した。




 岩ヤギの振動に揺られながら遠くからでも判る、そびえる王城と街並み、城壁外に溢れ広がる外町を目にした瞬間……目頭が熱くなった。



 ひょんな事から住み慣れた国から離れ、なんの覚悟も無いまま長いことさ迷い片腕すら失った。


 あまつさえ人ですら無くなった俺を師匠はなんて思うだろうか? 悪い事ばかりでは無かったけれど、本当はしんどかった。


 やっと帰って来た祖国はだいぶ感傷を呼び起こしてくれたけどヘイルサンダが無言で頬を擦りつけ慰めてくれた、マリア達に涙がバレ無い様に拭い、あれが祖国ハウスベルだと笑顔で宣言した。




 大きな城壁門を通過し検問も難なく通過、中央大路には大勢の人が行き交い商家が軒を連ねる。


「今日はお祭りか何かなんですか!?」とマリアが本気で驚いていたので、記憶を失っている事を思い出しこれが日常的なんだよと教えると更に驚いていた。


 イシスは建造物の方に気が向いてるようで、カラフルなタイル貼りの通路や中央大路の遥か先には本城が存在感を醸し出しているのを見。 本城から円心状に通路が伸びて大路から伸びる横道と合流していると言う説明に「凄く大きいのですね!?」と驚いていた。


 直ぐに師匠に会うのは踏ん切りがつかずに夜になるからと誤魔化して、まずはそこそこの宿に部屋をとり岩ヤギ達を預けた。



 城塞都市であるためどうしても場所が狭く、騎獣も連れていきたければ委託施設か城壁の外に預けることになるからだ。


 外町の方が安いけど、治安が良くない。


 必然的にランクの高い宿屋の近くに委託施設が建てられる事になった為、高めの宿に泊まっても有る意味トントンと言えるのだ。


 皆は長旅の疲れが出たのか、風呂(イストフラロウスから広まったみたい)に入り寛いでしまったら起きていられなかったみたいだ。


 俺も疲れは感じているのだけど眠気にはいたらない、多分睡眠もどうしても必要では無くなってきているみたいだ。


 暇をもて余した俺はフラフラと街を歩く「我も連れていって欲しい」とヘイルサンダが言うので今は一緒だ。



 軽い散歩の積りだったけど、自然と足は歩み慣れた道をたどり気付けば師匠の工房付近まで歩いて来ていた、間違い無く起きてないだろうと思い踵をかえした時。


「エバン君でしょう? そうですよね? ジャストタイミングでドンピシャでした。」


 なんて、のたまうのは我が師しか居ない。


 振り向いてなんか返してやろうと思ったらきつく抱き締められた。



 思わず息が詰まる。


「はっ?……くっっ!!」すぐ片腕が無い事に師匠が気付いてしまったみたいで驚きの声が漏れる。


 寸でで言いたい事を飲み込んで「お帰りなさい、良く……生きて戻りましたね?」と言ってくれた。



 お陰ですんなりと「ただいま」と言うことが出来た。



 会ってしまえば話したいことは沢山ある、立ち話もなんだからと二人、工房に向かいまずは試験の課題からとなった。


「既に懐かしさすら感じてしまいますね?」と言うと苦笑い。


「まぁ、そう言わず付き合いなさい」て事らしいので『撲殺金化鞭』をベルトから外し机に置く。


 厳密にはあの遺跡で手に入れた素材では無いけれど、この方が面白いだろう。


「これを貴方が作ったのですか!?」



 いぶかしむ師匠は撫でたり振るってみたり、材質を確かめたりと忙しい。 これは何か混ざり物の金属--なんですか? 余りにも軽いのにひどく固く粘り気がある。


 何か細工も有りますね? これはアーティファクトだと私は分析します。


 試験品で師をからかう気なら覚悟を決めなさい!! 激昂する師匠にまずった事をさとり慌てて弁解する。


「そんなつもりでは有りません、実は聞いて貰いたい話が有るんです。 判断はその後でお願いします。」


 本当は隠し通したかったけれど、こうなっては仕方無い。


 俺は遺跡で死にかけた事『知識の柔石』を得た顛末と効果、それゆえ神族化している現状を話せる範囲で正直に吐露した。




「そんな事が……。 俄かには信じられないですが、エバン君の言う事です。 信じて見ましょう。


 けれど災難でしたね。貴方の書簡にあった怒りはこれですか」


 逡巡の後、解りました合格です。 



「と言うか皆伝と致します。


 もう、私が教えられる事は無さそうですし工房も譲りましょう。


 しかし、そのレベルの錬金術の作成物は極力自分に以外作らない方が良いですよ? 争いの種にしかならないですから。


 最後に本来、錬金術はどうしても日数がかかります。


 精度もバラけますし、こんな物は造れません。


 いらぬ誤解も生まれます。


 今日はもう遅い。 明日、お仲間も交えてまた話しましょう。


 勿論、紹介して頂けますよね?」


 マリアやサーナイアの件もある。 久しぶりに離れの私室に戻り、懐かしい自分の寝台で寝る事になった。


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