幕間 パロットの惨劇
※今回はかなり残酷な表現、猥雑な言い回しが有ります。
本編、大筋では無いので苦手な方はスルーして下さい。
狭い砦内をゆっくり歩き、螺旋階段を登る。
岩が剥き出しの壁には作り付けの窓が有り、訓練に見立てた私闘に精を出す馬鹿な手下ばかりが見える。
最早、苛立ちも感じない位に慣れてしまった手下達を意識の外にやり、私室や幹部の部屋の有る最上階を目指す。
二階は会議室や有能な駒の部屋になっているので今は静まりかえっている。
このまま寝てしまいたい気分だけど、サイラーの召集だからそうもいかないかな。
気を取り直して魔術師の部屋をノックする。
サイラーは既に着いていたようね。
「少し遅いぞ、早速始める!」
何だか最近は貫禄が出て来たと、自然に彼に注目。
「いきなり本題に入るが、組織がでかくなって来たんで食料が不足気味だ、武器も女も少ないんで奴等も我慢が効かんらしい。
そこで近くのこの村・パロットに押し込み、そっくりそのまま全部頂いちまおうってー腹よ。」
片方の口角だけ上げる癖で笑い地図を指差して、かなりのどや顔で見回す。
確かに備蓄が無いのも不安ね。
私だけなら困らないけど、暴走されるのは面倒臭い。
「ゲスいけど、私は良いと思うわ。 確かあそこはギルドも無かったわよね?」
それに魔術師、ザラが頷き。
「強者の気配はしない。
つまらないが街道から遠いのが良いねー。
クク……ック……助けなど呼べない! 兵隊の補充も出来る♪」
「なら、決定だな。」
「細かい話はザラの方から雑魚共に通達しといてくれ。
サーナイアには後詰めを頼む。
ああ~死霊も呼んで置け
で、万が一ヤバくなったらばら蒔けば良い。
護衛にはお前のお気に入りの女戦士をつけてやるからよ。」
役回りに僅かに不快感は有ったけど私は鬱々と、でも……しっかりと頷いた。
--決行前日--
砦広場のテントは除けられ、既に荷役の車に積み込んである。
取って変わりに沢山の愚か者の群れが騒がしく詰め込まれている。
皆、思い思いの得物を掲げ親分・サイラーの言葉を待つ。
サイラーが壇上に立つと爆発的に歓声が沸き上がる、少し落ち着いたのを見計らい、「力無き正義に罰を!」剣を振り上げる。
「「「「力無き正義に罰を!!」」」」すると手下達が唱和し、更に広場の熱気が沸く。
私は形だけ倣い賛同はしない。
この気質だけは何か嫌だ。
うん、生理的に受け付けないのだと思う。
けれどサイラーの側を離れるのは不安。
あまり深く考えると、頭が潰れそうに痛くなるので考えてはいけない。
私が思い悩んでる間に集会は済んだらしく護衛の女戦士に腕を引かれた、彼女は奴隷商を襲った時に偶々生き残って居た子でカナリアと呼んで欲しいそうだ、確か今年で16になるとか言っていた気がする。
初めて見た時は散々犯され、両手足を縛られて酷い有り様だったので使い物にならないかと思っていたけど、サイラーに預けたら人並みになって戻って来た。
ザラの魔法かしらね?
まぁ、治ったなら良いわ。
なんでも有名な道場の娘らしく戦士として十分な実力で今では重宝してる、喋れる様になったのも良い。
血気盛んな男達を尻目に私達は後部の車に乗り込む。
私の車はサイラーの呼び寄せた巨大蜘蛛の背に載せ牽かせる、小さい家みたいな蜘蛛車で単体の戦闘力も高い、無理をさせれば壁だって歩ける、数が少ないので幹部にしか支給されていないけど慣れるとキモ可愛いの。
足も速いし、安定感も有るのに手下は普通に戦山羊を愛用している、何故かしら?
以前、卵を産ませて譲ったら騒動が起こったので今は自重しているけど、またぶち込んでみようかしら?
面白かったのよね……。
思わず笑みが浮かぶ。
そんな思考に耽りながら蜘蛛に揺られる事2時間半、隣でカナリアが顔を赤くしているのに気付かずに心地良い振動に身を任せていたら、村の近くの野営予定地に到着していた。
どうやら地図通り実際に野営しやすい広さがある空間で、繁茂する植物が私達を隠してくれる様だ。
私の担当している手勢は護衛の女戦士と調教済みの男達5名、残りは必要に応じて死霊を召喚する手筈だ。
村を囲みサイラー隊・ザラ隊に分かれ同じく潜み野営に入いる事になっている。
作戦開始は深夜深く……、ザラの用意した合図用の石が割れたら突撃らしい。
雑事は手下達に全部任せてカナリアだけ伴い少し荒れた土地に移動する、静かに瞑想し輪廻白神の自動発動スキル。
『魂の揺り篭』
同じく輪廻黒神の自動発動スキル。
『貪り合う愉悦』
『死霊篭絡術』が発動しているのを確認。
このスキル群により私の周囲には常に非業の霊魂が侍る、けど白神の加護により私は襲われる事は無い。
おもむろに両腕を差し上げ左右に広げつつ祝詞を唱え、祝詞に合わせ踊り、霊を魅了する。
『ゆらゆらとふるべ 地の底 物陰 異界の柱 さぞ暗かろう さぞ寒かろう くさくさと只憎かろう 共に逝き益せ 黒魔女の威圧』
繰り替えされる祝詞が途切れる頃には、こちらの浸食に痙攣していた霊魂は完全に支配下に置かれ、私に呑み込まれる。
今回は3体、こんな村ではこんなものかしらね。
これでまた1つ人外に近付いた。
そう……、あの小僧に憎悪を叩き付けるには人の身では駄目なのだ……。
ザラからエバンは神に成ったと聞いた時は怒りのあまりに精神暴走(輪廻信徒特有の限界衝動で周囲に処理しきれないストレスを撒き散らす)を起こしたのを昨日の事の様に思い出す。
あれから私に出来る変異、魂を取り込み存在のレベルを上げた。
その所為で既に汗もかかず・如何なる汚れも私を穢せない、甘い瘴気を纏う死の魔女、それが今の私の全て。
野営地に帰りつき、暫くして合図の石が割れた。
見張りと動物の世話に1人残し、死霊を1体置いていく。
2体には先行させ寝込みを襲わせ奇襲をさせるのだ、自重する様に言われていた気がするけど関係無いわ。
その後を追いかける形で二匹の戦山羊に2人乗りした男達と、私とカナリアの乗る蜘蛛車が続く。
先に着いた死霊が命令通りに眠る村人、特に男からじわじわと息の根を停めていく。
気配に気付いた子供の泣き声や住人達の悲鳴が響きだした頃、頃合いとサイラー隊・ザラ隊も加わり剣撃の音と範囲魔法による騒音で村が満ちる。
今回の目的は略奪なので火魔法は控え目に放ってある様で以前より威力が無い、ザラは相当ストレスを感じて手を抜いてるんでしょうけど我慢してもらうわ。
先程の自動発動スキルを発動している私の周りには、新たに現れた死霊達が集まって来ている。
先ほど使った魔法でまた憐れな者達の魂を拘束して浸食していく。
定められたステップを踏み腕を振り乱し、唄うように祝詞を垂れ流す。
その度に新たな死霊兵が飛び回り、かつての同胞に冷たい手で縋り、凍える抱擁を求め呪いが連鎖する。
可哀想な事に、宿には冒険者パーティーが宿泊していたらしいのだけど最早、村には死霊と野盗しか居ないのに救助の為に疾走していた。
エルフが召喚獣を呼び、戦士が魔力を付与され帯びた武器で道を切り開き、輪廻信徒が浄化の奇跡を起こし私の支配を無効にする。
中々にバランスが良いパーティーの様だけど相手が悪いわ。
直にサイラー達に殺されるだろうけれど、気に食わないので集中的に高位に練り合わせた悪霊を差し向けてみる。
--数時間後--
あらかた制圧された村をサイラーに合流する為に歩いていると、はぐれたのか・隠れていたのか、涙と鼻水でぐしゃぐしゃの顔の少女が人形を引きずりながらモタモタとこちらに向かってくるのが見えた。
私を見つけて安心したのか「お・・姉ちゃん、助けてぇー……~!!」と、走ってきた。
子供特有の走り泣きの鬱陶しい声……。
そして、ここには今私しか居ない。(何故かって? 魂魄制御が利かないので先行させたのだ。今の私は見境が無いの)
「お母さんが冷たいのー、白いのが一杯居て怖いのー!」どうやら少女には霊達が見えているみたい、だからここまで来れたのね?
でも、詰みだわ。
「そう、大変だったね? じゃあ、お姉ちゃんと一緒に逝きましょう?」
ゾブリっ!
形を得る程に高密度の霊魂達が大口を開けて少女を喰い散らかす。
いたる所を噛み切られて虫食いの少女は、即死出来ずに痛い・痛いと泣きながら魂まで私に喰われていく。
「嘘は言ってないでしょう?」
クスクス笑いながら私はゆっくり村道を歩む。