イシス
その後、休めそうな場所まで戻り錬金術による派生技『供物護方陣』と言う複数の贄を五方に配する事であらゆる害意から身を守る結界を張り、在庫が沢山あるポーションぶっかけて全員で仮眠を取ってとりあえずの落ち着きを得る。
んで、今回のメインの理由だったエミリオの加入は満場一致で決定。 特にあの金属犬の光線は彼が居なかったら死人の出る事態だったもの。
後で労いを込めて、破損した装備一式を作り直してやろっと……。 多分、市販の物より上手く作れる様になった気がするし。
って、あれ? なんか本末転倒な気がする……、何ででしょ?
そんなこんなで街に戻った俺達は依頼を完了させて、大量の素材を売り付ける為にギルドへとぞろぞろ移動。
冒険者ギルド受付でエミリオが竜言法を使い、前回の様に地図を出しギルド指定の用紙に転写。
ワイワイ言い合いながら、お互いが気付いた注釈を付け足して提出する。
その結果、追加マップ報酬として基本報酬の2.5倍付けを貰い、今度は素材の鑑定を始めて貰う。
その際に紛れていた獣素材からラロップスの存在を確認、ラロップスは要・討伐対象らしく素材報酬とは別にラロップス討伐の依頼を完了したものとして話を詰めたいので、賞金と聞き取りのために個室に来て欲しいと頼まれた。
通された部屋は華美では無いけれど、綺麗な備品で統一されて使い易い空間作りに成功していて好感触。
部屋の主はまだ若そうな青年に見えた。
「むさ苦しい所に呼び出してすみません。 私はこのギルドの責任者を務めさせて頂いているメサイヤと言います。
さて、まだパーティーを結成していないと言うことで、今回はどなたかに代表をお願いして宜しいでしょうか?」
対応に出て来た、メサイヤに尋ねられ今回は依頼を受けたエミリオに一任する事にして話を聞く。
「皆さんが討伐してくれたラロップスですが、本来この地域に生息する魔物では無いのです。
生態も良く解っていないので、覚えている限りの情報提供を願いしたいのですが如何でしょうか?
報酬も弾ませて頂きます。」
俺達に提示されたのは、相場よりかなり高い額らしくエミリオが興奮していた。
俺やマリアは元々、あまり金銭に関心が無いのでエミリオに任せきりでどんどん質問に答えていく。
聞き取りに少し時間が掛かったけどトータル30万札程の大きな稼ぎになったので良しとしよう。
報酬は一部パーティー財産とし、残りを全員で3等分。 破損した装備はパーティー財産から出し俺が錬金術で修繕する手筈にすんなり決まった。
午後は自由行動で決定。 なんでもエミリオはいくらポーションで治療したとは言え、やはり失った体力は戻りきってはいないそうで宿に帰ってドカ喰いして寝るそうだ。
守って貰った俺達は怪我も無く動けるので、このまま買い出しに行く事にして別行動。
まずは食糧品店で日持ちのする食材やら加工品、飲み物は水と酒に分けて購入。
直ぐ使う用に幾らかは新鮮な食材も買っておいた。
聞いた話だとキンドマックを過ぎると、暫くは大きな街が無いので嗜好品や調味料は多目に購入。
宿に帰る道すがら、マリアが意を決した感じで俺に。
「私もそうですけど、エバンさんも術師系なんですから少しお洒落しませんか?
お金も沢山入った事ですし、そうしましょう?」
畳み掛けよとばかりに。
「私達、地味すぎる気がします!」と何だか、わあわあ言い募られてるけどスルーしつつ確かに同じ格好ばっかも寂しいもんだね、グラサン縛りも無くなった事だし新調しようかな。
実は、先の遺跡で更に神化が進んだみたいで、日光に弱いと言う弱点が相殺され、幾つか新しいスキルが増えたんだよね。
なんで、もう太陽を見ても日光浴しても火傷しないのです!! まぁ、焼きすぎれば火傷するのは人間族と一緒だけどね。
じゃあ、それならと急停止した俺にぶつかってこけそうになったマリアに。
「わかった、服屋に行こう。
服も錬金術で作るから反物や布束を仕入れに行こう。
気に入った生地や模様があったら覚えておいてね?」首を傾け見上げる。
物思いに耽りつつ、素材少し残して置けば良かったかなー? 次からは全部売りは辞めよう。 そう決意し、来た道を引き返して大路大道に向かう。
ここは宝飾店や服飾店が固まっていて、少なく無い女性達が生地を買ったり・既製品を眺めたり・アクセサリを見比べたりと賑わいを見せている。
割りと一般の街人が多いので人手を得ようと屋台や新鮮な食材、果実を扱う店や鉱物を加工した装飾品の露天などかなり賑わっている。
「うわー、生地ってこんなに種類あるんですねー!! 凄い綺麗……。
わっ、こっちも素敵! あれは高そう~、だけど可愛い。」 ぴょんぴょん飛び回り楽しそうだ。
マリア、周りの女性より背が高いからかなり目立ってるけどね。
とりあえず俺は苦手になってしまった属性・火に強い生地ベースに、革系の素材の組み合わせや魔鉱石との組み合わせで作ってみようかな? 留守番のエミリオには異界の着物みたいな自由に着られる物を作ってみよう。
久し振りに楽しくなってきた♪
--宿・エミリオ部屋--
エバン達と別れてから、宣言通り馬鹿みたいに大量に飯を頼んでオバチャンを驚かせた後に爆睡。
ああ、今回から同じパーティーになったのでエバンと俺、ヘイルサンダ殿で1部屋とマリアちゃんの1人部屋の2部屋で取ってある。
報酬もたっぷり入った事だし、多少の贅沢をしても罰は当たるまい。
いつもは良い具合に寝床が決まるのに大いに時間が掛かるが、今日は格別に良い気分で眠りに落ちる事が出来た。
けど……。
「ぬあぁぁぁぁ!」手の平に感じる柔らかい饅頭の様な感触に吃驚。
まだ寝付いて半日程じゃねーかな? 良い気分の睡眠から突如降って沸いた問題で飛び起きる!
何が起きたかって? なんだって見知らぬ女性竜人が俺の寝床に寝て居るんだ!?
しかも真っ裸でさぁ! こんなの俺じゃ無くても悶絶もんだぜ。
大声を出して所為で起きたのだろう、女性がその長い黄金の髪の毛を携えて起き上がる……、髪が上半身を滑り寝台を流れ落ちる。
その額からは2本の金属質な角が生えているが、竜人族に近いだけで一目で違いに気付く、彼女には体の何処にも鱗が無く採光も縦で無い。
けど肢体は肉感的で官能的に過ぎ俺も漲ってしまいそうだった。
「おはようございます、マスター。お加減は如何ですか?」彼女が平坦な声音で問いかける。
「マスターって何!? それ以前にあんた誰だ!」尤もな質問をぶつけると。
「マスターはマスターです。
私はIZIG-F6イシスと申します。」淀み無く反される返答、全部が意味不明なんだが?
俺が手こずっている間に買出しから戻ってきたのだろうエバン達が、さっきの大声を聞いていたらしくバタバタと飛び込んで来て……硬直。
エバンはスゲー生温い笑顔で、マリアは無表情で自失の燐光で輝く弓矢をいつの間にか構えている。(何時出したのー!!)
本気の殺意の出てるマリアに引きつりながら弁解。
「マリアちゃん! 待って・待って、違うから!そう言うんじゃないから自失はタンマ!」
「俺は無実だーーー!」
エミリオの絶叫が響くのだった。