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同行者探し 3




 どうやら此処が最後の玄室げんしつらしく、奥に続く部屋は無い。


 手分けしながら死屍累々の部屋を探索しつつ剥ぎ取りも済ませていく……、余りにもラロップスの取り巻きが沢山居たので取れる素材も多く嬉しい悲鳴だけど、作業がなかなか終わらない。


 俺は片腕になってしまったから、こういう作業が上手くいかず少し寂しい想いをしつつ警戒と探索をメインに行動。


 迂闊にも軽く気を抜いていた時に、最後の悪足掻きだろう死に掛けのラロップスが居たらしく、その恐ろしい頭部をグリングリン回転させ飛ばして来た。


 口を大きく開き狙う標的はエミリオ。


 俺がすんでで警告を出せたので気付いたらしく、振り向きざまスウェイで回避を試みる。


 しかし避けきれずに肩を噛まれたけど殆ど鎧で止まり、浅い傷と鎧パーツの破損で済んだ。


 肩から頭部を引き剥がし、背後の壁に叩きつけてやると鈍い音と共に今度こそ絶命。 その衝撃で岩壁に亀裂が入り奥に材質の違う緑の光沢が見えたので、エメラルドかと思いエミリオに破砕して貰う。


 こう言う時、怪力って便利だなと思うよね? ガラガラと岩を退けた先には緑色の金属で出来た壁と薄暗い通路が左右に伸びていた。 さっきのは破損した壁の一部だったらしい……、てぇか余計な物見つけちゃったなー。 けど、ここで帰るのは勿体無いと言う事で探索続行。


 掘り起こした遺跡は、ほぼ金属で出来てる様で歩く度に甲高い音が響く、明かりは設置されていない様で少し先は真っ暗。


「「危険だし、第一怖いよね?」」って事でマリアに頼んで『持続光ライト』の魔法で明かりをを出して貰い、俺も松明に火を灯す。


 


 何だか異界の施設の様な造りで、生き物の気配が限りなく薄い……。 始めに向かった方には鉄の扉がありエミリオが開けようとしたけど重くて少ししか開かず、隙間から見えたのは狭い箱部屋のみだったそうだ、横に有るボタンも反応しない。



 進入口まで戻り今度は反対へ。 道なりに通路を進んで行くと、時たま扉に出くわすけど開く様子が無い。


 誰もが「これは外れかなー?」と思い出した頃に、破損して開いている扉を見つけ恐る恐る入ってみる。


 中は意外と広く沢山の乳白色の筒が立ち並んでいて、奥に円形に配置された色々な大きさの箱が沢山有った。 二人はただ気味悪がっているだけだけど、間違い無い。


 此処に来て異界の建造物だと確信した、電気が来ていないから動かないだけで軍事施設跡かもしれない。


 筒の中には生物が入っていた痕跡があるけど骨と何か腕の様な巨大な機械パーツが一緒に転がってるだけで、なんか哀れだ。 これも俺にしか解らない事だけど生体兵器でも作っていたのかもしれない。 さいわいにも施設が稼動していないので、生存する個体は居ないと思うけど焦るな。


 多分、こんな装備じゃ対抗出来ないよね? 経済レベルの違いをひしひし感じる。


 調べるたってダイヤル回したりボタン押したりくらいしか出来ない。 一通り探索して何処かのカードキーを手に入れたけど、使い方も謎だよな。


 成果上がらず、これまたひしゃげた扉を潜った先にはなんと、まさかの稼動個体! やばーい! 皆に最大限警戒を促して急ぎ下がる。


 この部屋は細長いがやはり狭く天井が低い、これではヘイルサンダも全力を出せず戦闘力も半減。 どうも漏電しているらしく思い出したかの様に何処かの破損部から紫電が散る。 この部屋は電気が生きてるのか、なんて迷惑な!


 今さっき出て来たかの様な異形の魔物は二体、先程見た骨に付いていた様な機械パーツを腕部にしている人間族の様なもの、もう一体は周りの壁と同じ様な材質で出来た犬の様な物体。 識別するまでも無く知識に無い生物なので開幕、ヘイルサンダにお得意の氷雷撃をかまして貰ってエミリオと俺が乱戦状態に持ち込み、それぞれに人もどきと金属犬に衝撃属性ダメージを与える。


 人もどきの方は朦朧もうろうとしてくれた様だけど、金属犬は直ぐ反撃してきた。 背にある二本の突起から長く尾を引く光線を発射、危険を感じたエミリオがエバンをプロテクト状態で庇い盾を構えるが構えた盾ごと砕かれ、小手をも破壊……、鎧も半壊し辛うじて龍鱗で停まったが凄い熱だ、赤龍族でよかった!


「これは洒落にならないんですけどー!」 あんまりな結果に盾の柄を投げ捨てエミリオが叫ぶ。



『光とは白雉はくち 金色の喪失に歌い 新しきに遊べ 光神の慈悲よ!』 マリアの祈りに応え二体を巻き込んだ自失魔法が炸裂。


 この一撃で人もどきは何もさせて貰えずに撃沈するも金属犬には効いて無い様子。


「ナイスサポート!」 俺も鞭を絡ませ、動きを封じるが力も異様に強い引きずられる。


 更に光線を発射しようと充填を始めた所で限界と鞭を解き退避、阿吽の呼吸でヘイルサンダの落雷が直撃。 雷を受け金属犬は白煙を上げて停止し、溜めていた光線が誤爆して粉々に爆散する。


 次の部屋にも金属犬が一体起動していたけど今回は遠くから俺が錬金術で地面に拘束し、ヘイルサンダに雷を連発してもらって完封。


 更に次の部屋は小さな広場があり、直ぐに急な斜面になっている。 多分大型エスカレーターだと思うがここも動かない。


 そこを暫く下ると激しく漏電している箇所がありバチバチと空間を閉じる様に稲光が道を塞いでいる。 破損しているケーブルの位置を特定してヘイルサンダに氷付けにして貰うと放電が収まった。 溶けたら嫌なので素早く駆け降りて行くと四角い穴にぐるりと柵が張られ、俺達から正面に1つ、左右に対になる階段が底まで続き穴の真ん中辺りに何か設置されている様だ。


 自分達の最大限の警戒をしながら慎重に下まで降りる。


 どうやら安置されているのは破損し、古びたポールアクスの様だ。 持ち手と刃の接続部付近に抉られた様な痕があり、かつては何か嵌まっていたんじゃないかと思う。


 金属自体は見た事の無い材質なので、溶かして鍛え直せば面白い素材になるんじゃなかろうか? としか思わなかったがエミリオは違う様で、どうしてもと言うので『知識の柔石』を使い『解析アナライズ』を発動、経歴を探る。

(以前、割られてしまったコア・アーティファクト『知識の柔石』は、ヘイルサンダから帰して貰い体内で再融合してあるので暴走の危険は無くなった。 ヘイルサンダとは肉体のパスが通じているのでこの世界のこの年代に居る間はお互いに不都合も出ない。)



 『解析アナライズ』の効果でエバンの脳裏をポールアクスの過去が巡る、肉体に触れる事で同じ情報を共有出来るので全員で手を繋いでおく。


 場面は鍛冶の様子から始まるかと思いきや、既にポールアクスとして完璧なフォルムでそこらに生えてる筒の様な物に入れられている光景が映る。 その筒には液体が満たされて居る様だ。 大勢の作業者が何かの機器を弄り記録していく場面、今度はがらりと変わり紅蓮の業火吹き荒れる市街地、どうやら地上の様だ。


 そこで逞しいエルフ女性に振るわれるたび爆炎を上げる姿が映る、既に抉れていた穴には真っ赤な鉱石が嵌っている。


 その後も人は変われど、何処かで破壊の限りを生み出す場面と感化され喜悦する感情と強烈に嫌悪する感情がほんのりと感じられるのは一緒だ。



 どうやら破壊と殲滅に特化させられた武器らしい、本来は守り助ける役割を持つのに、間逆の役割を求められ過ぎて壊れてしまった様だ。

 意思を持つ武器として調整されていたのも不幸を呼んだのか。


 その後、研究は凍結。 施設は破棄され狂ってしまった武器としてここに放置され朽ちていった様だ。 物とはいえ不憫な事だ……、『解析アナライズ』の効果が切れ現実に戻ると、唐突に貧相な鎧を纏った幸薄そうなおっさんが不似合いな鋭利な刀を構えてポールアクスに手をかけていた……。 皆一瞬、固まってしまったが直ぐに散開して戦闘態勢に移る。


 必要以上にオドオドしながら、貧相なおっさんが「ちくしょー、気付かれちまった! 近づくんじゃねぇ!」と言いつつ刀を振るう。


 上手く避け切れなくて刃がエバンの腕を浅く傷付ける。 どうやら何らかの魔法の品の様だと警戒を強める。




 が……、なんか可哀想なんだよなー、このおっさん。


 皆もなんか不憫な目ーしてるし。


「うぅぅ、そんな眼で俺を見るなー!」おっさんが泣き出した。



 おいおい、勘弁してくれよ。 呆れながら、


「その武器にそこまで価値は無いから辞めなって」と説得してみる。


 すると感極まったのか叫びながらポールアクスを叩き壊そうとしだした、あれに思い入れを持ってしまっていたエミリオが止めようとするが、盾が無いのに気付き腕でガード。 龍鱗が有るとは言え流石に防げず鱗が裂け血がしぶき大量にポールアクスにかかる。



 反射的に右ストレートでおっさんの顎を打ち抜くと気絶し倒れてしまった。 なんて弱いんだ、おっさん(驚愕) 完全に入った様で暫く起きそうにも無い……、こんな所に放置して勝手に死なれても寝覚めが悪いので捕縛して連れて行くしかないか、嫌だけど。


 厄介ついでにおっさんの持ってた刀に『解析アナライズ』してみる。


 あー、こりゃ酷い。


 後で丸っと教えてやろ。



 一息ついて部屋を探索。 どうやら此処が最深部らしいし、得る物も無い。 帰ろうかという所で先程のポールアクスが無い事に気付く、いや無いと言うか形が変わっているみたいだな。


 その形は巨大な卵……凄いメタリックだけど。


 面白いからエミリオのバックに入れさせて帰る事にする。


 


 帰路での道中、おっさんの身の上話をぶちぶち聞かされて、皆少しうんざり。


 彼はカバサル=ダナンと言い35歳の人間で戦士メイン、サブ盗賊の冒険者なんだとさ。 若い頃はそれなりにマッチョでイケてたらしいが、今じゃ万年Dクラスの貧相なおっさん。


 真面目に依頼をこなそうと頑張ってたそうだけど何時からか何もかもが上手く行かず、肝心な所でトラブルに見舞われ報酬を貰えず、人のおこぼれに有り付くのも困難になってあんな事をしたらしい。 しかも、付いたあだ名がハイエナ……幸薄いなー。


 もうしないから逃がしてくれって言われたけど却下。


 ちなみに刀の解析結果、『不義理の息子アディキアギオス』は一見、切れ味鋭く丈夫で錆びない上等の魔法の刀に見えるが実は呪いのアイテム。 使えば使う程に持ち主の運気を奪い不幸を呼ぶ呪いが掛かっている、その運気は製作者に行き帰って来ないそうだ。


 捨てても持ち主に戻る『回帰リターン』加工済み。 それといやらしい顔のアンデットのイメージが張り付いていた……。


 うん、気持ち悪い。


 それを教えてやるとあんまりな事にむせび泣いていた。 あんまりにも不憫だったからヘイルサンダの毛を練りこんだ鉄輪で封をして『回帰リターン』を無効にしてやった。


 これで少しでも人生やり直せとしか言えないわ。

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