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神獣×隻腕の錬金術師×それぞれの明日




 騒ぎの中心に居るエバンは意識が定まらず、昏倒しない様にしているので精一杯で地面に両膝を付き突然現れた巨大な獣に寄り掛かって居る。


「そこの娘よ、お主は光の神の遣いであろう?父上を癒してくれぬか?」


 巨獣が人の言葉を話す。


 常日頃なら驚いただろう状況だけど、痙攣と共に我に帰ったマリアが慌ててエバンの肩に神技『癒しの手』を発動。


 痛みが薄れたせいかエバンは気を失ってしまった。


 今まで影神・・の神官であったマリアが神聖光神魔法・・・・・・を使って治したのだけど、今それに気付ける存在は居ない。


 問題無く『癒しの手』は、しっかりと柔らかな光を辺りに放ち癒しの波動を感じさせる。




 反面、勇ましい巨獣は稲光いなびかりを纏い魔物達を睥睨へいげいし。


「我が父上を傷付けた罰、万死に値する! その粗末な命をもって償うが良い!」


 大音声と怒声でもって言い放つと纏った稲光いなびかりを放射状に幾つも放電。


 一本、一本が100万ボルト以上の光条が敵の身を焼き一方的な虐殺が始まる、雷に耐性の有る魔物も鋭利な爪と氷によってゴリゴリとり潰していく。


 大量に居た魔物達も10分とせずにほふり、元の位置に丸まり主を守る態勢に入った。


 応急措置を終えたマリアに一応は礼を言うが、もう寄らせる気は無いらしく近づけない。 エバンは回復の為か昏々と眠り起きる気配もない。


 何とか生き残った人間達でもう一度生存者の探索をかけ、戦士職の村人が近くのルインナラカまで助けを呼びに行くらしかった。



 私たちは魔力を過剰に使って昏倒してしまったトスバルさんを、三人がかりで宿に運搬して寝かせて出来る事を探そうと再度広場に集合。


 けど……。料理人さんやお母さん達の作る炊き出しの手伝いをしたかったけど、お砂糖と塩を間違えたり、瓦礫につまずいてお皿割ったりで「あんなに働いた後だからー。」とか「ここはもう良いから大丈夫よ。」とか、やんわりと断られちゃいました。 あんまり向いてないのかな?


 今度は緊急医療テントに赴き、エバンさんにも使った『癒しの手』で酷い怪我を中心に癒す手伝いをしました。


 不安に苛まれている患者や精神的な苦痛を和らげる光神様の自動発動パッシブスキル『精神ソウルの揺りクレイドル』と周囲の生命体の自然治癒力を高める自動発動パッシブスキル『自然なるホーリー・スパーリング癒の波動』が役にたち、ここで移動までお手伝い出来そう。


 ちなみにマイク君は厨房で料理を。シャンテは火の自然魔術が使えるので、生活全般の便利屋と狩りでの食肉調達でちゃっかり稼いでいる様だった。


 逞しいなー、二人とも。


 翌日には起きられる様になったトスバルさんも、行商品で買い手の付いていない品を格安で提供する事にしたらしく村長にとても感謝されている様でした。



 皆の協力と協調、皮肉にも生存者の少なさから復興は望めないけれどルインナラカまで避難する事は出来そうなんだとか、私が歩行困難者や精神疾患者を癒せたのも大きいそうです。


 知らせに行った戦士が騎士団を連れてきたら、皆で避難する予定で居るそうだけど……、廃村になちゃうのね。


 


 



 --村が最後の足掻きと日常を維持しようとしている時--





 エバンは白く暖かい毛皮に包まれて目を覚ました。


 強張っている肩を伸ばそうと立ち上がると、その毛皮の主も立ち上がる。 思ったより疲労は無い。


 カシャンと軽い音と共に肩に生えていた血色の氷も役目を終え地に還る。


 そこにはやっぱり左腕は存在しなかった……。 


 巨獣の顔を見上げ、「おはよう……俺の息子。」と言うと彼は「おはようございます、我が父上。」と顔を擦り付けてきた。


 何となく俺の体から生まれ出たのが分かった、かなり咄嗟だったけど『御霊みたま分けの儀式』が発動して別れてしまった神の血と肉と骨・コアの一部の邪神化を対極の神獣に作り変える事で防いだのだろう。


 小水神の最後の置き土産かな? もう体の何処にも彼の意思は感じられない、コアも割れてしまったから維持できなくなって俺の中に溶けたんだろう。



 それにしてもあの男は何だったんだろうか? ほぼ神の肉体に成っている俺の腕とは言え、本来は切り取れたりしない。


 何故なら直ぐに再生してくっついてしまうから、俺が水属性だからそれは顕著けんちょだろう。


 考えられるのは同じ存在としか思えない。 これはあまりのんびりして居られ無いかもね。



 考えに沈んでいると、「父上、そろそろ命名をお願いして良いでしょうか?」と神獣が囁く。


 どうも神獣に限らず、霊獣・魔獣・召喚獣に至るまで命名される事で力が増し、あるじとの絆(強制力と読み替えても良い)が強力になるのだと言う。



 言われて直感的に思い付いた名前「ヘイルサンダ」と命名した。


 確か、古代祝詞語で<<完全な稲妻>>と言う意味だった筈だ。


 その後、能力の説明を受けたのだけど彼は空も飛べるそうだ、あまり得意では無いと言っていたが移動の手段が増えるのはありがたい。


 大きいままだと一緒に行動するのが不便だと言うと、猫くらいの大きさになれるそうなのでそうさせる。


 皆に合流してからマリアには泣かれてしまうし、マイクはヘイルに超怯えるし、もう隠して居られなくなってしまったのでヘイルは高位の霊獣で俺は腕を生贄にして彼を召喚したのだと、嘘を交えて無理の少ない説明をした。


 納得したかは判らないがそういう事にしてしまい翌日……、俺達は村人達に見送られて廃墟になった村を出発。


 



 道中、雨溜まりの直撃を受けそうになったり魔物に襲われたりしたが難なく撃退。 大きなトラブルも無く中継都市キンドマックに入ることが出来た。


 トスバルさん達とはこの都市でお別れ、また何かあれば一緒に組む約束をして彼らは仕入れに向かった。


 ちなみに武器は二本も持つ事が出来なくなり、それぞれを纏めて鉱石に戻し俺の血を混ぜて練成、長さを二倍に一振りで二度のダメージを与える金属の鞭・巻き取り機能付きと言う便利アーティファクト『撲殺金化鞭』に作り変えている。


 完全に後衛になってしまったから前衛が欲しい所だ。




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