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経済活動に影響を与えたらしい。

 今日は二日前に交渉を申し込んだ<ノームの憩い>浴場の姉・旦那夫妻との話し合いの日だ。


 以前、検索した案もしっかり頭に入れて気楽な調子で街に出る。


 気付けばこの街も大分長くなりアネットの案内もほぼ要らなくなって来たし、この地に降る強い陽射しも俺をもう焼く事は無い、かも? と体感出来るくらいには慣れる事が出来た。

 

 そのまま路地を下り続け、まだ時間も早いので冒険者ギルドに寄る。


 密かに、冒険者ランクが上がって受けられる仕事が広がった。


 ついでに依頼を物色するが受けたいものが無く、今回は俺から「珍しい素材や鉱石の調達依頼」を出しギルド員に張り出して貰い、また散策に戻る。



 この街には錬金術師が俺しか存在しないみたいで、素材の調達には特に苦労している。


 前に通った道を思い出しつつ下街へズンズン下っていくと、武装ストリートに出る……。 ここら辺は武器屋・防具屋・各鍛冶屋・金物屋などの店舗や工房が並び、その裏の区画で魔道具屋がひっそりと商いをしている。


 表向き綺麗に整備されている様だけど、裏には必ず廃材・廃鉄が放置されている。


 今までは気にもならなかったけど、どう処理してるんだろうか?


 検索すると山ほど鉄の再利用が引っかかるのでもしかしたら良い儲けになって、尚且なおかつ素材も手に入るかも。


 まずはとりあえず、地域で一番大きな武器屋に飛び込んでみる。


「すみませーん。 旅の錬金術師なんですがお聞きしたい事があります。」


 すると店番の青年が営業スマイルで出向き。


「はいはい、どういった用件でしょうか?」 


 すぐさま対応してくれたので、


「こちらで保管されている廃材についてどう言った処理をしているのか知りたいのですが良いですか?」


 すると快く、


「貴重な木材部分と宝石部分だけ解体して、廃鉄は一定量溜まったら埋めてしまいますね。」

 

 この辺りの大抵の武器・防具屋ではその様に処理してるのでは無いかと言う事らしい。


 



 なんと良い話……、もとい勿体無い事だ♪


「どうでしょう。滞在している間だけ無料で廃鉄のみ回収しても良いですが、如何ですか?」


 そう提案するとホイホイと釣られてくれたらしく、手軽に鉄を手に入れる事が出来た。


 


 気が変わらないうちに、そそくさと廃鉄を『圧縮練成』で小鉄球に変え退店。


 街にある武器・防具屋全店で同じ契約を行い、大量の鉄を得た。


 悪どい?NO,商売上手と言って欲しいなw



 



 んで、少し寄り道したが良い時間なので<ノームの憩い>浴場へ。


 まずは自己紹介、奥さんがカーマインさんと言って女性らしいすらっとした体型の美人さんだ。 


 旦那は地上から来た海人族でキッツェンと言う筋骨隆々の髭中年で威圧感がある。


 


 基本、海人族は一生を縄張りを出ずに過ごすそうだけど彼は好奇心が強いんだろう。


 身体的な特徴としては耳がヒレの様になっていて両手足に水かきがあり手も足もデカイ、首もやたら太くエラ呼吸も出来る。

 

 水中では、中型の腕に装着して使う鎌刃の付いた小手が一般的。


 こんな所かな。


 


 挨拶もそこそこに話し合いを始めたんだけど、旦那のキッツェンさんが言う事には「海の種族だから入浴の概念がいねんがそもそも無く、この地に来てから学ぶ事が多く失念している事も多い。」 とか?


 今回の混浴も故意で無く、奥さん共々の不慣れからから来るものなんだと言う。


「そんな事情なんで、改装を格安でおこなってくれるなら是非お願いしたいし、地域住民からの要望も多い。


 で、他に何か提案があるそうだけど、どんな事だろうか?」


 俺にしたら待ってましたの質問だったので、わかり易くシャワーの有用性と構造についての説明をし錬金術で無くても作れる事も盛り込んで売り込む。


 新しい技術であまりピンと来ないのか、食い付きが思いのほか悪いけども取り付けには賛成してくれたので良しとする。



 その場はこれで終了にして、以前仕事したヒルベルトさんを訪ね今回の浴場の話に協力してくれないか? と打診。


 すると、


「水周りには詳しくないので不備が出ては困る。」


 と断られてしまった。



「けど妹分に得意なのが居るから交渉してみるかい?」


 と、ダークエルフの女性大工 ルビー=ラ=バ-ニアさんを紹介してくれた。


 しかし夜も遅くなってしまったので、翌日訪ねる約束をしてこの日は泥の様に就寝。


 





 約束通り、朝も早い時間からルビーさんと打ち合わせ。


「はじめまして、エバン君。 


 君の考えたシャワー? だっけ。 


 あれ、なかなか面白いね。」


 



 懐かしそうな表情で遠くを見つめ。




「まだ森に住んでた頃に浴びた滝みたいで私は好きよ……、これなら協力してあげる。」


 


 報酬は弾んでねっ? と言われて苦笑い、硬度の高いピッケルでも作ってプレゼントするかな。


 



 




 ルビーさんを伴って、キッツェンさんに昼過ぎから改装を始める事を告げ、貰った時間は三日間……、その間は住み込みで作業を行う予定だ。


 初日はルビーさんの指示に従って不要になる壁や設備を破壊したり、解体したりと場を整えていたんだけど問題発生。


 どうも、この浴場は単にお湯を沸かして風呂にしているとばかり思っていたんだけど、源泉に接続している魔道具の不全で成分が分解され単なるお湯になっているんだと判明。


 急遽、夫妻と再度の話し合いの末、良くなるのなら俺に任せてもらえる事に……。


「この祝詞のりとがこの回路に過剰供給を起こして、あー……これで逆転してる。


 この文字違うし!」 とか。


 あーでも無いこーでも無いと描き変え作り直し、一晩中改良してと張り切って改善策を探し、俺自身も考えて上手い具合に収まった。


 ルビーさんと協力して配管を進め、欲しい能力の魔道具を練成しては設置。


 気を効かせて、宝珠の知識から滑りにくい模様パターンを検索して床に施して完成!



 



 出来上がった時は二人して跳び上がって喜んで、お互い恥ずかしい思いもしたけど、こんな巨大な建築物に手を入れたのは初めてだったので良い経験になった。


 お互いの仕事振りを称えてルビーさんと酒場で乾杯!


 



 そして期日の日、きっかり三日後。 すっかり姿を変えた浴場は天然温泉に生まれ変わり「見間違える様だ。」とキッツェン夫妻も大喜びしてくれた。


 魔道具の改修で更に報酬も上乗せして貰い、二人してそれぞれの一番風呂の恩恵おんけいも体験。


 確かに、これは癖になる……! 


 なんて浸かり過ぎて、のぼせたのはお約束かな?









 --数日後--



 口コミと元々の温泉の魅力が発揮された事により老若男女の間で温泉ブームが起き、夫妻は嬉しい悲鳴を上げてる様だ。


 ルビーさんも俺も、今回の仕事で幾らか有名になったみたいで指名依頼なんて受け彼女は温泉大工に転職したらしい。



 俺は未だ世話になっている病院に風呂を格安で作ったくらい。


 医者のモビックに珍しい鉱石<ブラッドストーン>も貰ったから満足なり。


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