プロローグ 自己紹介をしよう
「今日も今日とていつもの天井……。」
いきなり過ぎて何だか判らないって?
何故かってーと、強いて言うなら、ここが地底で俺が地底人だからだ。
東・西・南・北 どこを向いても土か岩の天井が続く。 たまに石樹やら魔物やらも目に入るが俺達、地底に住む民には概ねそうだ。
勿論、陽の当たる土地も僅かだがあるし地上に生える様な草木も見かける。 しかし、強い日差しで焼けどや失明を起こしてしまう俺達、地底人種には良い事ばかりでも無い。
何が言いたいかと言うと、ただ単に勉強に向かうのが憂鬱なだけとも言う。
此処まで聞いてくれたついでに、俺についても、もう少し話そうかな……。
俺は地底で一番多い人種である地底人種で、エバン=ニードと言う。 基本、名は先に告げた方になるよ。
年は18になったばかりで錬金術師見習い。
師匠に学んでもう4年になる、そろそろ見習いの文字が取れても良いと思うかな?
先に触れたけど、地底人の種族的特長により色素欠乏の白い肌と紅い瞳の色をしている。 陽射しに弱い為に皆それぞれのサングラス入り仮面などを持つのが一般的で、俺はダイヤ型に成形された額当てにサンマスク機能を持たせた物を使っている……。
改造してサンマスク部分を押し上げ留めておける機構を付けた力作だ!
それともう一つ、線の細く力が弱いのを逆手に取って俺専用に開発した鞭の様にしなり、絡む武器であるギミックソードと言う剣をメインウェポンに据えている。
俺の目指している錬金術師はこの様に、少し毛色の違う道具や武具を製作したり鉱石や布・素材の練成したりが仕事になる……、いずれは魔力の篭もった品なんかも作ってみたいと思っている。
それに師匠を見る限り、見入りも良い方にみたいだし♪
俺が師事している師匠は拠点を持ち、地域に根ざした錬金を行うタイプの術師なんで当然、俺も天井大空洞より一週間程南下した位置に建つ大国、ここハウルベル魔道国に属している。
この国は地価が高く、駆け出しには街中に単独で居を構えるのは難しいので家事・掃除を対価に工房の離れを使わせてもらっている状態だ。
そんなもんだから人並み以上に料理の腕もあったりする。
閑話休題
次に何故にこの国が魔道国なのか? と言うと、人口に対して地底人……更には魔術師と言う人種が多く住み、国王からして高位の魔術師であるからでもあるし、また地底人種自体も生まれつき高い魔術との親和性を有している事にも起因する地底における魔術の中心の一つだ。
ようは習得し易い体質なのだ。
なので、俺みたいに錬金術師を志す者は稀だったりする。
ちなみに有名な魔道に自然魔術・神聖魔法・召喚術・錬金術・特殊能力があり上げた順に知名度が下がる。
残念ながら魔道にはあまり詳しくないので師匠に習った事に依ると、自然魔術は世界の構成要素を読み解き魔力による干渉と魔法陣、祝詞による構成で結果を得る学問魔法と言う分類らしい。
祝詞は錬金術でも使用するので少しはわかる。 あくまで少しだけどさ。
神聖魔法は地・水・火・風・光・影・時空・輪廻の8柱の神に祈る事で神力を借りる技法と聞いたな。
神力とは魔力の様なものだと思うが借りるとは何だろう? そもそも、貸し借り出来るものなんだろうか?
いずれ聞いて見たいね。
召喚術・特殊能力については俺の生活範囲に居ないし実体も曖昧で良くわからない。 錬金術については先に言った感じだろうかな。
後は商工業だろうが今回は後回しで。
もちろん、冒険者ギルド等の相互扶助団体も幾つか存在する。
こんな所だろうかな……。
「エバン君~、私はお茶が飲みたいんですけど? 妖精さんと話してないでさっさか用意して下さいな?」
「ハーイ、ただ今~。」
と言うわけで師匠が呼んでるみたいなんで、そろそろ行くよ。
また会える事を楽しみにしてる。