第5話 知りたい
彼の気持ちを知りたいと思っている。
人の気持ちを知ることができたならば失敗することはないと思うからである。
彼は友達だと思ってくれているのかどうか心配なのである。連絡先を教えてくれているのだから嫌いだとは思われていないとは思うのだけども……。
もし思っているよりも仲が良いと思われていなければ、確実に過去と同じ失敗を繰り返すことになるはずだ。
それが非常に怖い。
怖いけれども、勇気を出してみなければ前には進めない。
勇気を出したいけれども、過去の失敗が脳裏をよぎる。
どうすれば良いのだろう。
彼は見た目よりも悪い人ではないと思う。
これに間違いないと思うのだ。
軽く、メッセージで反応を確かめてみるというのはどうだろうか。
対面で訊くよりも自然に確かめられるような気がしてしまう。対面で上手く話せない人間がメッセージで心情を確かめられるものだろうか。
文字から感情を読み取ることは大変難しいことは知っている。
だけども――口から放たれる言葉で伝えることも難しいことを知っているのである。
どうすれば彼の気持ちを知ることができるのだろうか……。
そんなことばかりが最近は頭を占めている。
彼のことをもっと知りたいのだろう。
同じ学校だったなら普段の様子から彼を知ることができるというのに……。初めは同じ学校ではないことを嬉しく思っていた。それが今は残念に思う気持ちというものが強くなっている。
今思っている事をすべて彼に訊いてしまったならば、間違いなく彼に嫌われてしまうと思う。
こういう時、友達という存在がいればアドバイスを訊くことができたのかもしれない。
居ないものはしょうがないが、寂しさと悲しさがこみ上げてくるのを感じてしまう。
彼しかいないのだ。
メッセージで訊くのはやめよう。
明日、帰りの電車で会ったときに彼の気持ちを確かめてみよう。
あれだけ電車の中で話すことができているのだ。嫌いということはないはずである。
ただ、連絡先を交換したというのに一度もメッセージが送られてこないというのが気になってしまう。
どうして彼は何も送ってくれないのだろう。
実は彼も同じ事を思っているということはないだろうか。
それとも実は嫌いなのではないだろうか。
そんなことをばかりを考えてしまうのである。
嫌いなら電車で話してくれないとは思うのだけども……。
同じ思考がグルグルと回っている。
やっぱり、明日訊くのはやめておこうなんてことも考えてしまう。
本当にどうすれば良いのだろうか。
彼の気持ちを知りたい――。
(続く)