第4話 驚き
不良だと思っていた彼が実はこちら側の人間だったことに驚きを感じた。
彼のような見た目の人間は本など読まないと思い込んでいたからである。
高校では孤独を貫くと決めていたのだが、それはそれで寂しいものなのだということを最近は痛感していた。やはり人は一人では生きられないように作られているのだろうか。
彼とは同じ高校ではないということが良い方向に働いたのか、彼とは気楽に話すことができた。もしこれから仲が険悪になったとしても学校では絶対に会うことがないからだ。だが、思っていたよりも彼とは気が合った。
同じ趣味の話で盛り上がれるというのは、これほどまでに楽しいものなのかと初めて知ったのである。彼との仲が悪化するという未来は存在しないように思える。
家族以外登録されていなかったスマートフォンに彼が登録されている。
彼のことは同じ高校の同級生は誰も知らない。そのことをなぜだか誇らしく感じてしまうのはどうしてだろうか。
彼は有名人というわけではないのに。
それに彼のことだから高校にはきっと多くの友達がいるのだろう。
彼との会話はとても楽しい。それは彼の話し方が上手いからなのだと思う。それなのに下手な話も聞いてくれるのだ。そんな彼が学校で孤独なはずがない。
もしかすると――。
彼には彼女という存在もいるのかもしれない。
電車で彼女の姿を見かけないのは家の方向が違うからなのかもしれない。
スマートフォンには彼が登録されているが、どの電車に乗っているのかという連絡の履歴だけが残されている。
彼とは電車だけの関係に止まっている。
それは高校では孤独を貫くと決めた妙に頑固な所が影響していた。仲良くなりすぎると別れた時が辛くなってしまう。
喧嘩をしてしまい、元通りの仲に戻ることができなかっとしたら――。
さらに辛くなってしまう。
それを避けるために孤独を貫くことを決めたのだ。
だが、その決意に揺らぎを感じ始めてきた。
彼となら友達になれるのではないだろうか。
そんなことを思い始めたのである。
決めた線を越える勇気。
その勇気を出すきっかけが欲しかった。
いや、きっかけなんてものがなくても超えるべきかもしれない。
その勇気を出せずにいたのである。
彼はなんと思っているのだろう。
彼の気持ちを聞かずに知りたいと願うのであった。
それを知ることができたならば、これまでやってきた失敗を繰り返すことは二度とないと思うのだ――。
(続く)