第2話 出会い
その日も電車で本を読んでいた。
読む本は文字さえ書いてあれば何でもよかった。確かその時は幽霊となった男性が失った生きている時の記憶をどうにかして思い出そうとするの小説を読んでいた。
その小説の結末はとんでもなく生々しい話であった。
主人公は彼女によって幽霊になってしまったそうだ。その原因は彼の浮気にあるのだから自業自得とも言えるが……。
その生々しい話に女性とはなんて恐ろしいものだろうと心から思った。
そんな時である。
「何読んでるの?」
突然声をかけられたことに困惑して頭が真っ白になってしまった。
これまで車内で知らない人に声をかけられたことがなかったからである。
視点を本から声がした方向に向けると学ラン姿の男性が立っていた。
かなり髪が長く、前髪の隙間から目が少しだけ覗いていた。
きっと彼は不良で自分はカツアゲされるに違いない。
「ねぇ、何読んでるの? 聞こえなかった?」
どうせ不良という人種が自分の読んでいる本のタイトルなんか知らないと思いつつも、彼にタイトルを告げた。
「あー、それ読んだよ。結構最後グロいよね。あっネタバレになったかな大丈夫かな?」
まさか彼が読んでいると思わなかった。
そのタイミングで電車が駅に停車した。
声をかけられた事が恐ろしかったこともあり、電車を降り彼から離れることにした。
電車から手を振っている彼の姿が見えた気がしたが、気のせいだろうと思った。今にも追いかけてくるのではないかという思いがあったからである。恐怖が見せた幻覚だろうと思い込むことにするのだった。
(続く)