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環少女

作者: 菊次郎

 欲しい。


 あの子が一人。


 

 私の事だけを求めてくれるようなそんな()()が欲しくてほしくてたまらない。

 


 あの……、あの……。あの目立っているサッカー上手な子。

 彼は委員会でも部活でも、勿論クラスでも一番人気のあの子。


 きっと期待と責任に追われ続けているんだろう。だったら私がウッテツケ。

 

 私の醜い肌と吹き出物――オレンジのようなおたふく風邪のような。

 堕落した私の腐った根性から湧き出る舐めまわすような目もまた、彼の希望と未来と将来と人気を全て受け止めて一緒に下落することが出来る。


 何でも叶えてあげられる。

 もし出来なければ一緒に最後を迎えればいいだけ。


 だったら、彼と私はさいこうだ。



「あ、あぁ……。さっかーぶくん」



 隅っこの私にもあんな綺麗な笑顔をするんだ。

 

 駄目だよ。


 これからは私の隣だけ。

 私の許せる範囲、監視できる範囲だけが、彼の人生。

 でなければ私も彼も死んでしまう。

 

 私はこのまま人間として潰される。彼は期待で潰される。

 だったら、そうなる前に一緒になろうよ。


 そうすれば彼は何も自分から望まなくていい。

 私が彼の望みを全部聞いて、潰して、そうすれば何も考えずに一緒に流れるだけ。



 

 そっちは駄目……。


 彼がヒカリの女に取られていく。あぁ、またこっちの女にも。こっちの男にも。


 このままだと全部が駄目になる。

 私も彼もみんなも。

 

 一つを取り合って共有するのは駄目。

 だからここは私に任せて。

 そうすればみぃんな彼を求めなくなる。

 私が彼を、彼の中を全て埋め尽くせば。



「さ、さっかーぶくん」



 ひそひそしてる。

 なんて可愛いんだろう。


 一緒に来てくれるの?


 凄く嬉しい。


 楽しい。


 ワクワク。


 可愛い。


 かっこいい。


 


 あ、あぁぁぁ。違うよぉ。


 まだそんなに見ちゃダメだよ。

 

 まだ脚を交換できてないんだからぁ。


 腕も眉毛も口もほっぺも髪も……。あとは脚と目だけだったのにぃ。

 先に目をしちゃいやだよぉ。私の目で、私と体を全部変えっこしたのを見たかったのにぃぃ。


 でもそれだけ君と私の腕が目を一つにしたがってたんだねぇ。


 うふふ。あと一つで一つ。


 足はざっくり付け根から。そしたら終わりだねえ。

 私の精神と君の肉体の統合。これでこのクラスはだーれも君に期待しなくなっちゃうもんねぇ。


 ねぇ、みんな。


 みぃんな体と心臓変えっこ出来て良かったねぇ。

 これでみぃんな平和。なぁんにも考えなくていいよぉ。


 環が綺麗だねぇ。

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