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【書籍14巻発売!・コミカライズ全2巻】魔界帰りの劣等能力者  作者: たすろう
魔神の花嫁と劣等能力者

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元の鞘

 斉天大聖が祐人の後ろにいる傲光を見て極度に驚く。


「あんたが何故、ここに⁉」


 祐人は結界構築、維持に集中しながら傲光へ顔を向けると傲光は祐人に頭を下げる。

 すると傲光は何も言わずに斉天大聖と向き合った。

 祐人は術式を解除させるわけにはいかないために動けない。しかし、斉天大聖の反応から傲光と斉天大聖は互いを知っていることは想像できた。


(岩猿……いや斉天大聖よ、声は出さずに聞け。ここには貴様に頼みがあってきた)


(頼み? 東海竜王ともあろう者がこの俺に? いや何故、あんたがここに現れるのか。とはいえ本来の姿とは言い難いようだが)


(それは時が来ていないだけだ。今はそれはいい。頼みというのは我が主の手をこれ以上煩わせないで欲しいのだ)


(は? 主……今、主と言ったか⁉ まさかこの人間に仕えているのか!)


(貴様には私に貸しがあろう。かつて竜帝たちのいる城で暴れまわった。世が乱れていたために貴様も影響を受け破壊衝動が強かったことは分かるが無かったことにはならん)


(ぬう、それは……)


(それを許してやろう)


(なんと⁉ 本当か!)


(それに貴様のことだ。もう分かっているのだろう? 我が主と正面から戦っていればお前はすでに調伏されていたことを)


(むう……まさかあんたも力で捻じ伏せられたというのか)


(違う。私は主の心のあり様に心服したのだ。もちろん力でも我が主には敵わぬがな。だがなるべく今のこの力は使ってほしくないのだ、我が主には)


(ああ、なるほど。人間たちの世界から存在が消えるということか。この力は人の境界ではない。俺たちに近いものだな。存在が高次元に昇華されてしまっては人の記憶からは消えてしまうだろう)


(いや、それだけではない。我らからも忘れられてしまう可能性もあるのだ。実際、私は契約として最上級、魂の契約を果たしているが、その契約が外れかかったことがある)


(魂の契約だと! いや、それはもういい。それよりも魂の契約が外れかかるなどありえん! それはまさかもう数段、高い次元の存在となり得るとでもいうのか、あんたは⁉)


(それでどうなのだ。ここで矛をおさめてその少女の中に戻るのか)


(正直に言えば、まだ戦い足りん。久方ぶりに感じさせてもらった最高の戦いだった。もう少し味わいたい。が、あんたにある借りを帳消しにしてくれるというのであればここは俺も退こう)


(心配するな。貴様と〝契約している〟その少女が私の主と共に戦うのであれば今日のような満足のいく戦いは必ず訪れる)


(はっ! 契約済みなのがバレてたか)


(当たり前だ。あの破壊の申し子、斉天大聖が人間のためにその権能を預けたのだ。さらにはその子孫の守護神ともなっている。それほどまでに貴様が心を奪われた証拠だろう)


 ここまで無表情だった傲光がフッと笑うと斉天大聖もニッと笑った。


(ああ、黄家初代な。最高の契約相手だった。それでその子孫どもにも情が移っちまってなぁ。それで、これから俺が満足のいく戦いが起きるっていうのは本当か?)


(御屋形様の進む道上には必ずこの世を揺るがす戦いがおきるだろう。私はその時のために力を蓄えねばならないのだ)


(ふむ……竜王たちの長兄というだけでなく四神としての立場もあるあんただ。分かったぜ。覚えておこう。ではまだまだだが、このじゃじゃ馬チビの下へ帰るか)


 このやりとりは時間にして三秒程度だった。

 傲光は祐人に体を向けて跪き頭を垂れるとその姿は風のように消えた。

 直後、光に包まれていた斉天大聖の体が縮まっていき小柄な少女のフォルムに変形していく。


「秋華!」

「秋華ちゃん!」


 英雄と琴音が元の姿を取り戻した秋華に駆け寄る。

 ついに秋華は己の体を取り戻した瞬間だった。

 意識がまだ明瞭ではない秋華に二人が涙を浮かべて抱きしめる。


「あ、お兄ちゃん、琴音ちゃん。えっと……ただいま」


 そう言うと照れくさそうに秋華は笑顔を見せた。

 英雄と琴音はボロボロの自身の体を気にせずに秋華に抱き着き声をかける。

 そして激闘を繰り広げていた俊豪の前にいた斉天大聖も姿を消した。


「ふう、とんでもなかったぜ」


 さすがの俊豪もその場で座り込み、喜び合う三人の姿を見てさすがに疲れた表情で笑みを浮かべた。


「痛い、痛いよ。お兄ちゃん、琴音ちゃん」


 秋華は全身に走る痛みに耐えられずにそう言うとようやく傷だらけの英雄と琴音が離れた。

 その秋華の言葉で自分たちも重傷を負っていることを思い出したのか、二人ともその場に倒れこんだ。

 だがその表情からは笑みは消えない。


「お帰り、秋華ちゃん」


 琴音がそう言うと秋華も座り込み大きく頷いた。


「うん、ありがとう」


 笑顔でそう返した秋華はふと怪訝そうな顔になる。

 不思議だがここにいるはずの人間がいないかのような感覚が湧いたのだ。

 秋華の目には一瞬だけ琴音の後ろに少年の姿のような透明な幻像が映った。


(あれ? なんだろう……気のせいかな)


 そう思うと秋華は気を取り直して明るい表情を見せる。


「早くみんなに報告しないとね!」


 そう言っていつも通りの秋華に英雄も琴音も安堵したように微笑した。

 祐人は上層に上がる階段の影で皆の笑顔を確認すると納得したように、だが少しだけ寂し気な笑みを浮かべその場から姿を消した。





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