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【書籍14巻発売!・コミカライズ全2巻】魔界帰りの劣等能力者  作者: たすろう
魔神の花嫁と劣等能力者

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叫びと想い

「俊豪さん!」


 俊豪が戦線に復帰したことを祐人が喜ぶ。


「む、あいつはさっきの奴か」


 斉天大聖は手を止めて面白そうに俊豪を見つめる。


「はあああ!」


 俊豪が右手を頭上にかざすと重厚な鎧に彩が増し強力な霊力が周囲にチカチカと光を放つ。


(あ、あれは何だ。黄家の【憑依される者】とは違う。なのに強力な神霊をその身に降ろしているようだ!)


「ハッ、王家はな、黄家の源流ともなる家系よ。だから俺の領域も自在海と呼ぶ。黄家の始祖は王家から別れ、独立をしたのが今の黄家ってことだ。その契機になったのがかつての斉天大聖との戦いだ」


 俊豪の持つ青龍偃月刀が人ならざる者を砕き、高位次元の存在すら脅かす力を解き放つ。


「両家の違いは一つ。神霊や英霊を黄家は内包し王家は武器防具として纏うってことだ!」


〝俊豪、我の本体を呼ぶとは久しいな。貴様、日々の修練は積んでおるのだろうな?〟


 俊豪の装備品から威厳ある声が響く。


「まったく契約したはいいが、頭が固くて口うるさいのが叶わねーがな!」


〝貴様! さては修行を怠っていたな! 我があれほど……〟


「そーら、行くぜ! 斉天大聖。母ちゃんにな、祖先の命の恩人の子孫に出会ったら必ず返せって口酸っぱく言われてんだよ!」


〝人の話を聞かんか!〟


 俊豪が新たに現れた斉天大聖へ切り込む。

 魔神クラスの人外に対し何たる自信、何たる胆力、そしてそれに引けを取らない実力をランクSSの王俊豪が解放した。


「喰らえぇぇ‼」


「ほう、その術は知っているぞ! あの時、お前と同じ術を使って楽しませてくれた奴がいたわ!」


「今回はもっと楽しませてやるぜ!」


 俊豪と斉天大聖が超越したスピードで移動し互いに超連撃を繰り広げる。

 二人の姿は消え、衝撃波と火花だけがその移動上に残されていく。


「こっちも始めるぜ!」


 本体の斉天大聖が攻撃を再開する。祐人も即座に迎撃しすべての攻撃を打ち落とした。

 祐人は超攻撃圧の中にもかからず瞳に力が籠る。


「こちらも手札を切らせてもらう。堂杜霊剣術、霊覇封陣れいはふうじん!」


 祐人を中心に強力な封印結界が展開される。

 斉天大聖が驚きを隠さない。


「何⁉ これは貴様、弱体化結界か! 馬鹿みたいに強力な術と剣技ばかり連発しやがって! これだから貴様の先祖も厄介だったんだ。だがこれでは貴様も弱体化するぞ!」


「知ったことじゃないよ。こっちはあんたを倒すことが目的じゃないんだからね」


「むう! これではつまらん。もっと派手じゃねーとな」


 斉天大聖が結界外へ逃れようとする。


「逃さないよ」


 しかし、その行動で生まれたわずかな隙を祐人は突く。なんと祐人は人の身でありながら斉天大聖に肉迫し、長刀倚黒を逆手に持つとその柄で腹部に強力な打撃を喰らわせた。


「カハアッ⁉ ええい、こいつめ!」


 たまらずに斉天大聖が無理な移動を止めて態勢を整えようとしたその時だった。

 なんと英雄がこの一瞬に斉天大聖に駆け寄り飛びついた。


「秋華! いい加減、目を覚ませよ! いつまで皆を心配させるんだ!」


 まさかのこの行動に祐人も目を見開いた。


「こいつ、チビの兄貴か! この俺の体に触るなど!」


 如意棒の先端が英雄の頭部に迫る。

 祐人が必死にその如意棒を打ち軌道を変える。しかし完全には間に合わず英雄のこめかみが深く切りさかれた。

 しかし英雄はその場から離れようとしない。


「英雄君! いったん離れろ!」


 と祐人が叫ぶと今度は逆方向から琴音が斉天大聖に飛びつく。


「秋華ちゃん! 私の声が聞こえないんですか⁉ 私ともう会えなくなってもいいんですか⁉」


「琴音ちゃん!」


「ええい! 煩わしいぞ」


 まさかこの魔神クラスの斉天大聖に抱き着いてくる人間など想像だにしなかった斉天大聖が僅かに狼狽えるも怒りを露わにする。

 これは祐人にとっても予想できなかった出来事だ。

 戦場を熟知している祐人が慌てる。

 手の出しようによっては二人にも危害が加わる。今の祐人はその一挙手一投足が魔神と張り合える力を持っているのだ。

 斉天大聖が二人を振り払おうとする前に祐人がその行動を抑止するように足に倚白を放ち、上方では倚黒で如意棒をけん制した。

 非常に難しく繊細な場面。


「秋華!」

「秋華ちゃん!」


 この愚かにも思える行動ではあったが二人はこの拮抗した状態がいつまで続くのかは分からないと考えた。いや、むしろ長くはないと感じていたのだ。

 そしてそれは正しかったと言える。

 いくら超人と化した祐人でも斉天大聖を相手に自分たち二人を守り、ましてやあえて倒さずに声をかけ続けさせるなど至難の業どころか神にでもなろうかというほどの難題である。

 だから思い、感じて、悟ったのだ。

 この時に何をするかしないかでない。

 何でもいいのだ。


「戻ってこい! 秋華!」


 とにかく秋華を絶対に失わなければ何でもいい。


「何⁉」


 この時、僅かではあった。

 斉天大聖の表情に揺らぎが生じた。


(チビが起きやがったのか⁉)


 その斉天大聖の変化を祐人は見逃さなかった。


(秋華さんの意識が戻ってきている⁉)


 ここで祐人は刀を封印空間に戻すと二人を守るように斉天大聖に飛びつき如意棒を掴んだ。

 所有権のない魔神の武器を掴むことは自殺行為に等しい。それは世の理に反する行動なのだ。屈服させず、承諾を得ずに人外の持つ物は自由にできない。

 如意棒を握った祐人の両手がシューっと反発を受け、焼けるような痛みが走る。


「グウウ! まだだ!」


 英雄と琴音は周囲など見えていない。

 ただ夢中で呼びかける。

 もうこれしかないのだと斉天大聖にしがみつく。


(秋華、俺はお前が優しいことを知っていた。お前が苦しんでいたことも知っていたんだ。文駿さんが死んだ時、とにかく強くなってお前も家族も家も全部、俺が引き受けると決心した。でも、お前はその俺の姿を見て罪悪感を持っていたんだろう? 自分のせいで文駿さんが死んで、兄も変わってしまったと。でもそれは違うぞ、秋華!)


(秋華ちゃん! 私の親友、秋華ちゃん! あなたが最初に私の心を解放したの! 秋華ちゃんはすぐに私の本質を見抜いたよね。でもそれってきっと私たちがちょっと似ているって思ったからでしょう? あのままだったら私は自分の心を殺したまま生きていたわ。でも今はそんなの生きてると呼ばないって自然に思えるようになったの。それは秋華ちゃんのお陰なんだよ)


 英雄と琴音の二人は涙を浮かべて再び喉が擦り切れるほどの声を張り上げた。


「秋華! 答えろ! お前の帰りを待っているんだ! 俺はお前も含めたこの家を支えるために強くなろうしたんだ! やり方が合っていたかなんて知らん!」


「秋華ちゃん! 今度はね、今度は私が秋華ちゃんを助けてあげたいの!」


 そして今度は優し気な声色で二人はささやいた。


「でもさ、お前がいなくなったら俺は……強くなること自体、意味がなくなるだろう?」


「だってそれが私ができる、親友って言ってくれた秋華ちゃんにできる贈り物だから」


 この直後、斉天大聖の姿に異変が起きた。





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