対魔神戦⑨
鬼気迫る斉天大聖と祐人の攻防は止まらない。
ついに斉天大聖の怒りは頂点に達する。
「ぬうう! この俺を侮るか! その傲慢さ、死をもって償わせてくれる!」
天界人たちをも圧倒する力を持ち、あまたの妖怪どもを屠ってきたこの斉天大聖に対して選んだこの戦い方が許せない。
何故ならこの少年は斉天大聖の最も得意で最も有利な間合い、そして常人ならばいるだけで弾け消えるほどの領域内で踏みとどまり戦うことを選択したのだ。
それはつまり、たとえ不利な状況であろうともこの斉天大聖を正面から小細工なしで押さえつけると言っているに等しい。
高位人外のプライドは存在意義と同義だ。
これを認めることなど、ましてやこの斉天大聖にあり得るはずはない。
「はああ!」
だが祐人は踏みとどまる。
踏みとどまって正面から斉天大聖と相対している。
周囲には具現化しそうな霊力の破片と火花、そして衝撃波がまき散らされた。
この間にも英雄と琴音は必死に声をかける。
しかし、英雄と琴音は気づいている。その触れるだけで存在が消失する破壊の余波は自分たちの方へは来ない。
そう、祐人が守ってくれているのだ。
(むう! こいつ、この俺と戦いながら仲間を⁉ いや、この戦い方は……?)
この時、斉天大聖の表情に変化が現れる。
「ハハハ……ハッハッハー‼」
突然、斉天大聖は大笑いをした。だが手は緩めない。それどころか天井知らずにスピードは増していく。
「そうか! 分かったぞ。貴様の術、この剣技、身のこなし、何よりもこの手強さ! お前はあいつの血筋か! またしても俺の前に現れるとはなんという因果よ! 東の海より来た超越者の霊剣師!」
「はああ!」
祐人は構わずに斉天大聖のスピードに対応する。
英雄たちは斉天大聖の変化など気にする余裕はない。だが魔神から発する霊力の変化を感じ取った。気のせいかもしれないが攻撃性が薄まったような感覚だ。
そして祐人は斉天大聖の言いように眉根を寄せる。
「黄家と組んでまた俺を調伏しようというのか! 面白い! こんな機会が訪れようとはなんという奇縁なのだ。そう、たしか奴の名はアイン……アインハード!」
「……⁉」
祐人はさすがにその名を出されて驚きは隠せなかった。
何故ならその名は堂杜家の始祖の名だ。
激しい攻防は続けたままに斉天大聖はまるで喜んでいるかのように語りだす。
「何故、その名を!」
「何だ、知らないのか。お前はあ奴の子孫なのだろう? それは寂しいな。いや、というよりだ! 語り継がなかったのか! あの野郎、それは許せんな」
気分を損ねた斉天大聖が如意棒を繰り出しながら口元で印を結び、術を唱える。
祐人の背筋に悪寒が走る。
直後、祐人たちの背後になんともう一人の斉天大聖が現れた。
「ふふん、俺は気分がいいが今、悪くなった。すべての手札を切るぜ。さあ、お前はどうする? まだそいつらを守りながら戦うか?」
「クッ!」
祐人がここで初めて顔を歪めた。
英雄と琴音は硬直する。
しかしこの時、新たに現れた斉天大聖のさらに後ろから声が上がる。
「おーおー、待たせたな。堂杜だっけ? こっちは俺に任せておけ」
そこには青龍偃月刀を携え、中華の重鎧を身にまとった王俊豪が不敵な笑みを見せていた。
「多分な、そこのガキは王家にとって古い恩人なんだわ。だからここからは俺も全力でいかせてもらう! 来い、関帝聖君! お前の力を俺によこせ!」




