対魔神戦⑧
「待ってたぜ!」
斉天大聖の周囲に霊力によって構築された領域が展開される。
それは向かってくる祐人を自分の相手ができる存在と認めたと同時に本気を出した証でもある。
斉天大聖は多くの人間にも逸話の知られる人外だ。そういった人外は凄まじいまでの自我を持ち、領域は相手の居場所を徹底的に排除する空間になる。そして理不尽なまでに自分自身の能力発現の優位性を作り出し、相手の能力行使は徹底的に排除する。
さらには、ほぼすべて当該人外の存在に関わる独自の特徴を持っている。
つまり魔神クラスの人外たちと戦うということはたとえ能力が同等だったとしても常に不利な状況から戦うことになる。
そして今、魔神クラスにして超上位の神格を持った人外の領域と祐人の領域が重なる。
重なった途端、両者の領域は互いの場所を、互いの領地を奪い合うように猛烈に押し合う。
「失せろ」
斉天大聖の数トンある如意棒が軽快に振り下ろされ、祐人の脳天を襲う。
祐人の眼光が強さを増す。
両刀を巧みに操り同方向に傾けて魔神の剛撃を横に逸らした。
祐人の右下の石床に小さなクレーターが発生する。
しかしその深さは見ただけでは測れない。
この一撃にどれだけの力が籠められているのか常人では理解が及ばないであろう。
だが祐人はこれだけの力を見せつけられているにもかかわらず表情に変化はない。
祐人は一息吐くと膨大な霊力と魔力が体の中心軸に集まり超仙氣を体中に漲らせる。
「堂杜霊剣技、不壊不倒」
祐人はなんとその場に両足を左右に広げてとどまった。
この姿勢を見て斉天大聖は額に無数の血管を膨れ上がらせる。
「この小童が! この俺と……この破壊の申し子、斉天大聖と正面至近でやり合おうってのか!」
周囲に霊力の撃風が発生し英雄や琴音は発しただけの霊力圧に必死に抵抗する。
斉天大聖はまるで誇りを傷つけられたかのように烈火のごとく怒りを露わにし、赤き霊力がさらに深紅へと変貌すると如意棒を頭上で振り回した。
「貴様の髪の毛一本すら残さん!」
同時に超連撃が発動した。
もはや人間一人がどうこうできる攻撃ではない。
少なくとも英雄や琴音にはそう思えた。
あまりに速すぎるためなのか超高等の術なのか分からないが、一つの攻撃で数百、数千もの如意棒が繰り出されたようにしか見えない。そして妙だがそれぞれは非常にゆっくりに見えるのだ。
「堂杜!」
「祐人さん!」
思わず二人は悲鳴にも似た声を上げる。
しかし、返ってきた言葉は違った。
「今だ! 二人とも僕の後ろから秋華ちゃんへ声を! はあああ‼」
祐人が迎え撃っている。
詳細はもはや分からない。
しかし祐人はその場で立ち止まり、超仙氣を纏った体と二振りの刀ですべての攻撃を打ち落としている。
「ぬううう!」
「はああああ!」
英雄と琴音は動いた。
自分でも驚くくらい無謀なことをしているのかもしれない。だが妹を、親友をこの時を置いて助ける時はない。このことが二人を奮い立たせた。
そして何よりも堂杜祐人がその時間を作ってくれている。
堂杜祐人なる少年がここにいるという奇跡を無駄にしてなるものかと二人は強く思った。
「秋華! 馬鹿野郎! 兄の声が聞こえないのか!」
「秋華ちゃん! 秋華ちゃんは友達を置いてどこかに行くような真似はしないでください! 秋華ちゃんは私にとってたった一人の親友なんです!」




