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【書籍14巻発売!・コミカライズ全2巻】魔界帰りの劣等能力者  作者: たすろう
魔神の花嫁と劣等能力者

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魔神と少女⑧

 英雄はシャフリヤールの双曲剣を何とか防ぐとク・フォリンより借り受けている槍で突きを繰り出す。

しかしシャフリヤールは不敵な笑みを見せながら槍の周囲を踊るように避け間合いを詰めてくる。


「何だ、こいつの動きは!」


「ハハ! 俺とやるにはテメェは弱すぎだぁ!」


 ステップなのか跳躍なのか分からない動きでシャフリヤールが曲剣の間合いに入った。

 シャフリヤールの勝ち誇った目と英雄の必死の目が合う。


〝……ってないな〟


 この時、英雄の脳裏に何処から声が聞こえてきたように感じたがそれどころではない。


(やられる⁉)


 英雄の後ろには秋華がいる。退くという選択肢はない。

 こいつらの目的から考えて秋華に身体的な意味で危害は加えないだろう。

だが自分がここで倒れればおそらくこいつらは秋華を連れていくに違いない。

そして魔神の完全な顕現を成すために考えられるだけの手段を講じるはずだ。


(退けるか! 致命傷さえ避ければ構わない!)


 英雄が明らかに遅れているが槍の柄で剣撃に対応しつつも歯を食いしばる。

 その時だった。

背後から凄まじい衝撃波が二人を襲う。


「ぬわ!」

「何だ⁉」


 英雄とシャフリヤールが完全に体を持っていかれゴロゴロと転がり受け身に専念させられる。

 またその衝撃波は英雄とシャフリヤールのみならずマトヴェイや琴音をも巻き込んでいく。比較的距離があり全体を見ることができた琴音とマトヴェイは障壁を展開することができたためになんとかその場に留まることができた。

 そして全員が衝撃波の発生方向に視線を送る。


「堂杜さん!」

「何て人たちなんですか!」


 琴音とマトヴェイが思わず声を上げる。

 その視線の先では王俊豪と祐人の凄まじい攻防が繰り広げられている。

 長大な青龍偃月刀をまるで小枝のように振り回す俊豪に対し、白金の鍔刀倚白で俊豪の連撃をいなし、弾き、時には反撃を加える祐人がいる。

 二人は互いに互いしか見ておらず、その表情は気迫に満ち他者の入る余地のない武技を惜しみなく投入している。


「おいおい! やるなぁ!」


 俊豪が声を張り上げる。だが決して余裕のある声色ではない。

 祐人は眉間に力を入れて次発の攻撃に対応する。

足元を狙った偃月刀に対し体を地面と平行にして跳び高回転しながら躱し俊豪が偃月刀を引くタイミングを見計らうように倚白を喉元へ薙いだ。

俊豪は青龍刀を引くと共に上半身をスエイバックし紙一重で倚白の切っ先をやり過ごした。

するとすぐに上体を戻し偃月刀で薙ぎ払うと祐人は地面に這いつくばり、そのままの超低姿勢で俊豪へ足払いを繰り出す。

これに「チッ」と舌打ちした俊豪が相対してから初めて後方に跳んだ。


(あ、あいつ……俊豪さんを退かせた)


 一瞬、英雄が信じられぬものを見せられたように茫然とする。

 少なくとも自分より強いと心のどこかで祐人を認めてはいた。

 しかしこれほどの実力を持っているとは想像だにできなかった。

俊豪の圧倒的な強さを英雄は知っているのだ。

幼き頃、父の大威と俊豪が手合わせを見た時から自分の中で俊豪が神格化されるほどの強さを見せつけられている。

だから俊豪を祐人に任せた時も祐人が守備に徹した隙にシャフリヤールたちに一撃を喰らわし、その後、自分が援護に向かうものだと考えていた。

ところが実際はシャフリヤールにも後れをとっている。ましてや戦闘特化ではないにしろもしマトヴェイが本格的に参戦してくれば自分が原因で秋華の守りが崩壊する。

 何故か英雄の中に敗北感にも似た感情が湧いてくる。

 強さを求め、他者を威嚇し、ライバルなどもいないほどのポジションを手にいれようと必死だった。それは事実でも過大評価でもどちらでも構わなかった。

 とにかく早くその目に見えぬポジションが欲しかった。

それらすべてが力なのだと思っていたのだ。

それが抑止にもなり黄家も秋華も守ることに繋がるのだと。

 だが今はどうだ?


(俺はどうすれば……)


すると祐人の怒気をはらんだ檄が飛んできた。


「馬鹿野郎! 何をやっているんだ!」


「……⁉」


(……馬鹿野郎?)


「僕はそっちに行く余裕はないぞ! 君が何とかしろ! 秋華さんを守るんだろ!」


 覇気のある祐人の怒声に英雄が目を見開く。

 それは人生初の同世代の同性からきた叱咤だった。

だが英雄の中にある何かに熱さが灯るのを感じる。

 先日の祐人との本音をぶつけ合った喧嘩の時の熱さがよみがえる。

 そこにさらに祐人の怒声が重なる。


「日和ってる場合か!」


 この言葉が英雄の闘志を吹き上がらせた。


「何だと⁉ 誰に向かって言ってやがる、堂杜! 俺が日和るか!」


「じゃあ、何とかしろ!」


この時、英雄の中に面白い変化が起きていたことに英雄自身も気づいていない。

矛盾するかもしれないがこの瞬間から祐人を今まで以上に信頼し始めたことだ。

それ故か、英雄は怒りの中に冷静さと殊勝さが祐人に対して生まれた。


「おい、堂杜! 何かアドバイスをよこせ! こいつらは手強い」


 最初の定位置に戻ってきた英雄はこんなことを言いだす。


「はーん⁉ 今かよ!」


「うるさい! 何かないのか! 俺に必要な何かは!」


「知らないよ! ただ君は守りすぎだ!」


「は? それどういうことだ」


「守るには攻めるんだよ! ただの防御で時間を稼げるような連中じゃないだろ。駆け引きぐらい覚えろよ。痛い目に合わせれば相手も警戒するだろ! 出し惜しみできる相手じゃないんだ!」


「クッ! お前、後でその偉そうな口を叩いたことを後悔させるからな!」


「言わせておいてそれかよ!」


 直後、祐人は俊豪、英雄はシャフリヤールと激突した。





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