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【書籍14巻発売!・コミカライズ全2巻】魔界帰りの劣等能力者  作者: たすろう
魔神の花嫁と劣等能力者

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魔神と少女⑤

 そう言った途端に俊豪は踏み込んだ。

 その姿は消え、気づけば秋華との間合いに入り込んでいる。


「俊豪さん!」


 その英雄の悲鳴は届かない。

 俊豪は軽々と右手で青龍偃月刀を薙ぎ、それは秋華の頸動脈を正確に狙っていた。


「むう!」


 秋華のアシュタロスが唸る。

 ゆっくりと偃月刀の刃が自分に近づくのが見える。非常にゆっくりだ。

 しかし、それがまやかしであることを最初に会敵したときに学んでいる。


「小賢しい術を」


 アシュタロスは躱す。それは常識を超えた反射と瞬発力で動き、十分なタイミングで背後にスウェイしているように見えた。

 ところがだ。

 偃月刀の刃が喉元直前に来ている。


(さっきもそうだが、それはどういうものなのだ⁉)


 アシュタロスは避けきらぬと判断し右肘で頸部を庇い魔力壁を展開すると、その直前で金属音が鳴り響く。


「貴様は……」


「おい、お前。どういうつもりだ。さっき俺は状況を説明したぜ。邪魔するな、ともな」


 またしても祐人が間に入った。

 倚白の刃に手を当て両手で偃月刀の剛撃を受け止めている。


「それはそっちの理屈でしょう」


「あん?」


「僕は何一つ納得していない。僕は秋華さんの護衛を依頼されている。僕は僕のやり方で秋華さんを救います。その邪魔をするんなら……あんたでも容赦はしない」


「お前、誰に向かってそれを言っているか、分かっているか?」


「知りませんよ。あなたの名を知ったのはここに来て初めてだったんですから!」


 祐人の仙氣が爆発させるとそのまま俊豪を押し返した。


「ほう」


 俊豪が後方に飛びながら眉を上げると笑みをこぼす。

 そして同時に祐人のすぐ後ろにいる秋華の姿をしたアシュタロスはニヤリと笑った。


(ふむ、どうやらこの小僧は我の宿主を目覚めさせ、いうなれば元に戻すことを目的にしているのか……愚かな)


 アシュタロスはこれを利用しない手はない。今の攻防で把握した。

 この目の前にいる少年はかなりの使い手だ。さっきの厄介な長物の使い手とうまく反目させつつ時間を稼ぐ。

 どのような理由であれこの少年は勝手に自分を守るらしい。

 そして先ほどのように一生懸命声をかけてくるのだろう。

 何と馬鹿げていて愚かな生き物か。

 まあ、どうでも良いことだ。

 この間にこの娘のすべてを奪い自分のものとする。

 ただそれだけの事。


(もうすぐだ。秋華……そこの奥にいるのは分かっている。すべてを諦めて我によこせ、お前の存在権を。そして失うがいい、自在の力を)


 祐人が振り返り見つめてきた。

 アシュタロスは下らぬ者を見るように見返すがそれだけだ。こいつをここで殺すより先ほどの俊豪とかいう使い手の盾とする。シャフリヤールたちも同様だ。

 祐人が肩に手をかけてきた。


「下郎、我に触れるな、な⁉」


 何故かアシュタロスに力が入らない。

 祐人が触れている肩から力が抜けていくようだ。


「秋華さん! いい加減に起きろ! 思い出せ!」


 直後、祐人は怒号と共に秋華の頬を力いっぱい張り、秋華の鼻腔から血が出てきた。


「き、貴様ぁ」


「黙れ! お前には用はない。秋華さん! 君はすべてを失う覚悟をしただろう! それですべてを拾おうともした! 挙句に自分は何を望んでいいか悩んだのだろう! じゃあ、師匠として僕が答えを押し付けるよ」


 祐人、続けざまに秋華の頬を張る。


「すべてを拾え! 失ったものがあっても変えてしまったものがあっても日和るな! 君は君のものだ! 昔も今もこれからも! それをだれかのものにするんじゃない!」


「堂杜、お前……」


 英雄は祐人の剣幕に呆気にとられる。

だが今、祐人がやっていることは自分がやるべきことだ。

 それなのに自分の行動の鈍さが情けなくて歯を食いしばる。


(文駿さんの死で俺が変わったことが秋華の罪悪感に拍車をかけていたなんて)


 英雄はこれを知りショックだった。秋華に何も負わせないために強さを求めたことが逆効果になっていた。

 しかも秋華は一人ですべてを解決しようとした。その中には自分や家族への配慮があり、そして万が一のことがあったとしても、自分がどうなったとしてもどうにでもなるようにしていたのだ。


(俺はなんて情けない兄だったんだ)


 この時、祐人がこちらに視線を移してきた。


「英雄君! こっちに来い! 君も秋華さんを呼んでくれ! 彼女はまだ彼女のはずだ!」


「堂杜……!」


 英雄は祐人の目と視線が合うと秋華、俊豪、シャフリヤールたちと順に目で追う。

 すると英雄の奥底から湧き上がる想いが溢れる。


(そうだ……そうだ! これ以上はやらせない! 俊豪さんが何と言おうと知ったことか! この野郎どもも許さない! 俺は秋華を取り戻す。それで昔のように……!)


 すると英雄が己に降ろしていたク・フォリンの兵装がより鮮やかなものになっていく。


「秋華、兄がいるぞ! こんな奴に負けるな! お前の才能をこんな奴に持ってかれるなんてお前らしくないぞ!」


 英雄は祐人の横に走り寄り秋華に問いかける。


「ええい、煩わしい小童どもが。貴様ら、動け。何しにそこにおるのか!」


 そうアシュタロスが言うとやる気の顔のシャフリヤールとやる気のないマトヴェイが頷く。


「来い、マトヴェイ!」


「……はい」


 そこに英雄が立ちはだかる。


「堂杜、そのまま続けろ! てめえらに邪魔はさせるか!」


 霊力の充実が増す英雄はまさにク・フォリンの力を今までになく発揮させている。

 英雄の槍がシャフリヤールとマトヴェイを牽制すると二人はそこで足止めさせられた。


「チイ! こいつはやるな。マトヴェイ、挟むぞ」


 マトヴェイは頷くと左右に展開する。

 この時、アシュタロスがようやく動いた右腕に魔力を込めて祐人の右頬から薙ぎ払った。


「クッ⁉」


 祐人は後方に吹き飛ばされる。

 するとその代わりざまに俊豪がアシュタロスに迫った。


「悪いがここで仕留める」


「「絶対にさせない!」」


 踏みとどまって引き返した祐人と間に入った英雄がアシュタロスの直前で俊豪の剛撃を防いだ。

 これを見てマトヴェイは眉根を寄せる。


(ああ、何てややこしい戦場でしょう! 【天衣無縫】王俊豪のみがアシュタロスを倒そうとし、少年たちを含めた私たちは守ろうとしている。しかし少年たちと私たちは敵対している。ちなみに私は早く脱出したいのですよ)



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