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【書籍14巻発売!・コミカライズ全2巻】魔界帰りの劣等能力者  作者: たすろう
魔神の花嫁と劣等能力者

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魔神と少女③


 アメリカ能力者部隊SPIRIT数名は黄家から二キロメートル離れた高層マンション屋上に後退し黄家を監視していた。


「クッ! カハアッ」


 軍から支給された超高性能の単眼鏡で黄家の屋敷を覗いていたイーサン・クラークが突然、膝をついた。


「イーサン⁉」


 ナタリー・ミラーが驚き腹部を押さえて苦し気に蹲るイーサンに手をかける。


「あ、あなた、まさか能力を使ったわね」


「ナ、ナタリー、いいからSPIRIT本部とペンタゴンに連絡だ。軍用の偵察衛星で黄家をマークしろと」


「そんなことよりあなたが……」


「いいから早く! 連絡が先だ、早くしろ! そうしたら撤退する」


 苦し気に咳き込みながらも迫力のある声色で命令を下す。


「分かったわ。ボビー、今の内容を報告しなさい! あなたたちはイーサンを横たえて撤退準備! ケイン、あなたは医療セットを持ってきて私を手伝って!」


 それぞれが即座に行動に移す。

 ナタリーは真っ青な顔色で横たわるイーサンの胸に両手をかざした。するとナタリーの金色の髪の毛がフワッと浮かぶ。


「こ、これはまさか……」


 ナタリーは目を瞑りイーサンの体の状態を確認していく。

 彼女は世界で数人しか確認されていない希少な能力者、回復系能力者であり、その状態をスキャン能力によって理解することができる。

 しかし回復できるのは肉体の損傷のみであり病気、毒などの状態異常に対する回復能力は持っていない。しかも損傷した肉体を治すことはできるが、その対象もそれ相応の生命力を使うためにすぐに元気になるということではない。

 ナタリーは深刻な表情で目を開きイーサンを見つめた。


「どうだ、どこを持っていかれた?」


「あなた、肝臓の半分と右足の骨と筋繊維、血液の一割がなくなっているわよ! これだけの代償は今まで見たことないわ! 一体、何の情報を得たのよ」


「あ、後で言う。それより早く治してくれ」


「本当に! あなたのその馬鹿げた能力は何なのよ! 【真実の犠牲者】だか何だか知らないけど、私がいなければただの自殺じゃない」


「まあ、そう言うな。代わりに重要な情報を得た。分かるだろう? 肝臓の代償に得たのだからな」


 イーサン・クラークはSPIRITの前線指揮官であり最重要人物でもある。

 彼の能力は表向きには戦闘系能力者と伝わっており、実際、高い戦闘力があると知られている。

 しかし、彼はもう一つの固有能力の持ち主であった。

 当然、このことは秘匿されている。

 その能力こそ【真実の犠牲者】だ。

 この能力は相手や事象について代償を払うことによってその真実を知る超レアスキルである。

 ではその代償とは?

 それはその真実の重要度に応じてイーサンの肉体が消えるのだ。

 何が消えるのかはこの能力を使ってみなくては分からない。

 突然、心臓が消えて死ぬことも考えられる。

 ちなみに勧誘前のナタリーの能力を知るために【真実の犠牲】を使ったときは両足の筋繊維がすべて消えた。

 では真実の重要度はどうやって決まるのか? 

 それはイーサンも知らないと言った。

 しかし一度だけイーサンはナタリーにこう伝えたことがある。




「俺の勘だがな。この能力の代償の強弱は恐らく〝この世界が向かう未来への影響度〟に関係するのだと考えている」


「何よ、それ。あなた漫画の主人公にでもなったつもり?」


「フッ、まあ、今まで心臓や両肺といった即死レベルのものはなかった。そう考えると代償は情報の重要性に対して大分、ミニマムにしている能力なのかもしれない。そう考えると費用対効果は高い」


「自画自賛とかやめてよね。私はあなたがその能力を使うたびに慌てて働かされるのが嫌なの。できれば使ってほしくないわ」


 SPIRITは彼をスカウトするのに途方もない金額、政治的優遇、その他、数々の超法規的優遇を要求されて与えたと言われているが、この能力を知る数少ない人物であるナタリーは信じていない。

 何故なら、彼がこの能力を知るきっかけになったのは幼いころに自分の母親の病気が何なのかを知りたい、ということを願ったのが最初だったからだ。




 ナタリーは肝臓の辺りに両手を移し精神を集中させて癒しの力を発動する。

 彼女の体を優しいグリーンのオーラが包む。

 するとイーサンはふう、と息を吐き体を起こした。


「助かった、ナタリー。すまない」


「ふん、能力を使うときは先に相談してほしいわ」


「分かった、次回からそうすることを約束する」


「それで何が視えたのよ」


「うむ、今、あそこに顕現した魔神の名前とどこから来たのか」


 イーサンの淡々と語る内容にナタリーは顔を青ざめていく。


「魔神ですって⁉ とんでもないことよ。黄家は機関に連絡はしているのかしら」


「そして、それを画策した組織『クラヴェス』。どうやらかなり危険な連中のようだ」


「クラヴェス? それは……」


「あとだ。王俊豪の能力が分かった」


「なっ⁉ 馬鹿! そんな貴重な情報を得るから今回のようになるんじゃない! 私が治療する前に死んだらどうするのよ!」


「ああ、能力発動タイミングの運が悪かった。いや、助かったのだから運が良かったのかもしれないな」


 イーサンはナタリーの肩を借りて立ち上がると撤収の準備を始めた。



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