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変わる日常⑥

 聖清女学院の学院長室では今回の将来の共学化という重要案件に伴い、その影響を見るための試験生の名簿を学院長と副学院長とが確認していた。

 副学院長は名簿から顔を上げると嘆息する。


「これでほぼ短期に招聘する男子生徒は決定しましたが……よろしんですか? 学院長」


「それはどういうことかね?」


「いえ……ほとんどの招聘生徒には異存はないんですが、この四天寺家推薦の……というより、ごり押しと言っていいと思うんですが、この4人の生徒」


「良いも何もないだろう? 四天寺家のご推薦だ。他のご父兄からも文句はないだろうよ」


「ですが、同じ学校から4人というのは……。しかも、うち二人は女子学生です。そもそも、上流家庭のご子息を招くのが、その趣旨だったと思いますが」


「まあ、ものは考えようだ。わが校の生徒は異性への免疫が極度にない。そんな乙女の花園に人間性が良いとはいえ、いきなり男子生徒を試験的に招くというのは、そもそも極端な実験なんだよ。招かれる方だってストレスもあるだろう。そこで、この四天寺家の推薦名簿にあるこの二人の女子生徒……すでに共学の高校に通っている女子生徒を同時に招いて、男子生徒との関わり方を教える同性がいるとすれば、学院の生徒たちの混乱は少ないだろうよ? こうやって考えてみると非常に良い考えにすら思うよ、わたしは」


「なるほど……確かに良い考えに思いますね。気付きませんでした」


「まあ、この考えで推薦してきたとは思わんがね。でもまあ、良いだろう。下世話な話で申し訳ないが、四天寺家が寄付金の増額を打診してきた。それも以前の数倍のだよ」


「す、数倍ですか……」


 学院長は名簿を手の甲で軽く叩きながらもニヤッと笑う。


「これでは断れんね。実際、大変、有難い話だし、今回の試験生の在り方の気付きも与えてくれた。今回はこの名簿通りで良いが、これから第二、第三の試験生を招くときは共学に通う女子生徒にもスポットを当てようではないか」


「はい、そのように……」


 学院長は片腕で頬杖をつきながら、流し目で、その吉林高校からの生徒の書類を見ると、なんとも渋い顔をした。


「しかし……この吉林高校から来る4人。むしろ女子生徒の方はいいが、この二人の男子生徒は大丈夫なのかね……?」


「まったくです……。よく注意して見ておきます」


「うむ」


 学院長の座る立派なデスクの上に広げられた書類は名簿の他に、今回、招く試験生たちの詳細が書かれていた書類が並べられている。

 その最前面に並べられたのは今回四天寺家の強い推薦を受けた4人の生徒たちの書類であった。

 その4人生徒たちは共通して蓬莱院吉林高校在校と書かれており、二人の男子生徒と二人の女子生徒である。

 その名は右から、


堂杜祐人どうもりひろと1年生 男子生徒 

 部活動等の所属はなく、クラス内での役割は『お助け係(拒否権なし)』

 現在は担任の指示で校内の草むしりとトイレ掃除を命じられている。

 実家は古流剣術道場を開いている。


袴田一悟はかまだいちご1年生 男子生徒

 部活動等の所属はなく、クラス内での役割は『植物係』

 現在は担任の指示で校内の草むしりを命じられている。

 性的嗜好に偏りがあり、女子生徒には興味がないとの噂あり。


白澤茉莉しろさわまつり1年生 女子生徒

 剣道部所属 中学時代には全国大会準優勝

 成績優秀、授業態度、生活態度すべてに問題がなく、他生徒からの信頼も厚い。

 学級委員長。


水戸静香みとしずか1年生 女子生徒

 剣道部所属

 授業態度、生活態度に問題なし。

 非常に前向きな性格をしており、周囲とのコミュニケーション能力が高い。


 学院長は大きく息を吐く。


「まあ、とにかく来週の月曜日から夏休みまでの短い期間だが、やってみようじゃないか。明日、朝に全校集会で私からこのことを生徒たちに発表しよう。各教員には学院生徒のメンタル面のフォローを重点的にするように指示を頼む」


「はい、承知しております」


 こうして、祐人たちの短期編入が決定した。

 何故、吉林高校から4人の生徒が派遣されることになったのかは、交渉人である神前明良と吉林高校側とのやり取りがあった。




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