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VRバイターが往く!~近未来の生存戦略~  作者: ヨロヌ


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タクの日常 その13


『まほ★まほ』のタクのリスポーン地点にある店。

その庭には、咲き誇る美しい宝石のような花々があった。

目の前にあったものだから、しげしげと庭の様子を眺めていたタクだが、隣から「えー!」と叫び声が上がった。


「嘘! カーバンクル見たかったのに~!!」


「これ酷くない? 他プレイヤーの害悪でいなくなっちゃうなんて」


「何かずっと店の周りにいるプレイヤーがいたらしいよ。絶対ソイツの仕業だって!」


各々話し合っていた女性たちが、タクの姿を見るなり、何か気づいて慌てて去る。

去り際にも「やだ!きもーい!!」と嫌悪の感情剝き出しの言葉を吐いた。

彼女達が見ていた庭……店の概要欄をタクは初めて確認する。


[カーバンクルのイベントが第三者に妨害され――]


タクは庭に入ろうとして、カーバンクルが驚いて消えてしまった事を思い出す。

更に、女性プレイヤーたちの反応。


「そんな……僕は、そんなつもりじゃ……」


タクは逃げるようにログアウトする。


(僕はそんなつもりじゃなかったのに! ただカーバンクルの事を知りたくて、庭が気になって……!!)


しかし、どんなに言い訳しようが、タクのせいでカーバンクルが消えた事実は消えない。

今更、自分の悪い噂が広まっている事を理解し、羞恥心が爆発し、ログアウトするのだった。



逃げ込むようにタクは『FEO』にログインする。

折角のレイド戦だが、ゼウスのエッセンス不足も相まって中々難易度高いレイドボスを倒せなかった。


(今日こそ倒せるように頑張ろう!)


と、タクが切り替えたのも束の間。

通知を基本切っているタクでも、最初は申請やメッセージを確認する作業から始めるのだが……


[レイドのチャットみろレイドのチャットみろレイドのチャットみろレイドのチャットみろ]


[すみません。レイドのチャット確認してください。お願いします]


[範囲攻撃は味方を巻き込むので止めて下さい!]


[ゼウスは範囲攻撃しかねーんだから共闘部屋入るな]


(な、なんだこれ……)


とんでもないメッセージの数々が。

一部のプレイヤーが自分に悪口を言っているのだと、最初は思っていたタクだったが。

グループ内チャットを確認しても、同じような事を他プレイヤー達が語り合い。

タクが非難されていた。

範囲攻撃が味方を巻き込む仕様なのに問題がある、というプレイヤーもいるが。

それを差し引いても、チャットをロクに見ない方が問題あると言う。


(そんなの……言われなきゃ……)


でも、プレイヤーたちは必死にメッセージを送っていた。無視していたのはタク自身である。

不味いと思い、慌ててグループ内チャットに謝罪文を書き込むタク。

それに対する返事は来ず。

他プレイヤーがいる時や会話する途中に、チャットへ書き込んでも、タクをいないもののように扱う。

あっという間に返された掌に、タクは塞ぎ込む他なかった。



しばらくした後、タクは再びWFOにログインした。

現実にいても何もする事が無いので、結局VRMMOへ逃げ込むしかないのである。

タクは、新設したギルドにリスポーンする。

ギルドに所属している状態で、フィールドにて死亡した場合。ギルド内にリスポーンされる仕組みなのだ。


[デスペナルティにより、あなたのレベルが1低下しました。一部のアイテムがロストしました。詳細は以下の通りです]


という画面が、タクの眼前に表示された。

別にデスペナルティ自体は、タクも他VRMMOでも体験しているので、焦りはなかった。

今日一日、タクを影に落とすような出来事ばかりで気が重すぎるだけ……


ミミたちの食事もポリゴン粒子となって消滅しかけていた。

ギルドの中も、あまり綺麗とは呼べない状態である。

モルモーの糞が相変わらず、あちこちに落ちているので、ただただそれを回収するタク。


「……琴葉たちが戻って来るかもしれない」


口にして自分自身を奮い立たせるタク。

その希望をタク自身が踏み潰した事さえ自覚せずに、タクは再びミミたちの食事を作り直した。

モルモーは……相変わらず、棚の下から動こうとしない。


タクがゆっくり近づくと……


「きゅーい!」


「モル、ごめんよ。大丈夫。大丈夫だから。ほら、ご飯だよ」


「きゅいきゅいきゅいきゅいきゅいきゅいきゅいきゅい」


「怖がらなくて平気だよ。無理矢理引っ張り出さないから……ほら、ご飯を……」


「きゅいきゅいきゅいきゅいきゅいきゅいきゅいきゅい」


最早、鳴き喚くだけの獣と化したモルモー。

途方に暮れていたタクは、自身のステータス画面を見て、ある事に気づく。


「そうか……! スキルレベルだ!!」


急いで『テイム』のスキルレベルを上げようとするタク。

何がなんでもだった為、手持ちのスキルを全て『テイム』の強化素材にした。


「よし……! 『テイム』!!」


「きゅいいいいいいいいいっ!!!」


今までの悲鳴の中で最も甲高いものをあげるモルモー。

モルモーの悲痛な叫びを聞いたのに、タクは「くそ!」と悪態をつく。


「駄目だ! まだスキルレベルが足りないんだ……!! もっとスキルレベルを上げないと……」

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