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VRバイターが往く!~近未来の生存戦略~  作者: ヨロヌ


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タクの日常 その12


タクがWFOにログインしたが、新設したギルドには誰もいなかった。

まだ、誰もログインしていないのかと、タクは能天気に考える。


テイムしたモルモーが足元に出現し、ぷいぷいと可愛らしく鳴いてちょこちょこ歩く。

その光景に、微笑ましく笑いを溢すタク。


「あはっ。おはよう! モル。僕達しかいないけど、ご飯にしよっか」


タクはモルモーの餌を用意し、自分とミミたちの分の料理を作った。

ひょっとしたら、彼女達は遅れてログインするかもしれない。だから無駄になろうと作るのである。

1人で食事を取るタク。


「ミミたち、来ないのかな。………よし、畑を耕そう」


いつものように、ギルドの庭を耕し小さな畑を作るタク。

マーケットで販売されていた野菜の苗を植えていき、ふぅと汗を拭う動作をした。

少し休憩しようと思った矢先。


「ん? あっ!? モル! 駄目だよモル!! モル!!!」


モルモーが、折角植えた野菜の苗を食べているのだ。

何故ここにモルモーがいるかと言えば、モルモーが寂しがらないようにとタク自身が畑に連れてきたのだ。

こうなるのは目に見えている筈なのに。自業自得である。

タクは意を決して、スキルを発動させた。


「『テイム』! 駄目だよモル。これは駄目!  食べちゃ駄目だよ、モル!」


犬をしつける様に、タクは真剣にモルモーを叱りつけるが、モルモーは食べるのに夢中だ。

仕方なく、モルモーの体を抑えつけて「駄目!」と厳しめに言う。

すると「きゅいー!」とモルモーが鳴き叫んだ。

とんでもない悲鳴だったので、タクは咄嗟に手を離すと、モルモーは全速力で駆けだす。


「『テイム』! 戻ってくるんだ、モル!!」


そしたら、タクに吸い寄せられる形でモルモーがタクの傍に移動した。

タクがモルモーを抱きかかえようとしたが、モルモーは暴れる。

これに対して、タクは「暴れないで!」と『テイム』をかけているが、これには何も起こらない。


何度も何度も躾けても、モルモーは何も出来ない。

トイレも覚えない。

待てもできない。

静かにする事もできない。


それもその筈、モルモーに躾なんてほとんどできない。

排便行為は本能のままやっているので、コントロールの仕様がないのだ。


タクが行っているのは、無自覚な()()だった。

彼に悪意はない。

モルモーを躾けて、琴葉たちのストレスにならないようにしようと、彼なりに一生懸命なのだ。


だが、何度も何度も、無理矢理に体を抑え込まれ『テイム』をかけられるのは、モルモーにとってストレスになる。

タクのスキルレベルでは、モルモーの本能的行為を抑え込められない。

それでも、タクの『テイム』をかけられている感覚だけは伝わる。


自分を無理矢理コントロールし、支配しようとしている感覚にはモルモーでなくても嫌悪するだろう。

段々とモルモーは、ぷいぷいと可愛く鳴かなくなった。

常に甲高いきゅいきゅいという警戒・威嚇の鳴き声ばかりに変わっていく。

必死にタクの手から逃れようと暴れ続け、ついにタクの手を噛んだ。


そして、ギルドに初期配置されている棚の下に潜り込んだモルモー。

その姿にタクは呆然とする。


(なんだこれ……前と同じじゃないか……)


何故うまくいかないのだろう。

一生懸命やっているのに、どうして懐いてくれないんだろう。覚えてくれないんだろう。


モルモーの躾けを諦め、タクは冒険者ギルドへ向かう事にした。

道中、タクは案の定、他プレイヤーの畑へフラフラと吸い込まれていく。

そこでは、NPCのヘルメースがプレイヤーに畑に立てる看板のデザインをやると名乗りをあげている場面だった。


(看板のデザイン?! それなら僕にも出来る!)


学校行事でよく、こんな感じの掲示物のデザインを積極的に行い、褒められていたタク。

自分にも出来るから、自分にもやれる事だから。

タクは悪気ないつもりで、自分から名乗り出る。


「僕にも手伝わせて下さい!」


VRMMOではこんな感じでNPCたちと交流を行うものだ。

これまでのVRMMOなら、そうであったから。

しかし、次の瞬間。

タクの頬に衝撃が走った。殴られた? ビンタされた? 自分が暴力に合ったのだと理解した。

衝撃で意識が飛んだ後、タクは畑に倒れた。


正確には、タクの頭部が畑に吹き飛んで、落ちた。


(え?)


向こう側からヘルメースの怒声が響き渡っている。

でも、何を言っているか聞き取れない。

タクはパニック状態で、自分が死んだ事すら受け入れられていなかった。


[あなたは死亡しました。デスペナルティにより、一定時間ログイン不可となります]


(え……え……? なん……え??)


タクが放心して、死亡画面から動けずにいると、しばらく時間経過した後。

強制的にゲーム開始画面へ移行。


何故、自分がこんな目にあったのか理解できなかった。

タクはどうする事もできず……何とか切り替えて、『まほ★まほ』へログインした。

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