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VRバイターが往く!~近未来の生存戦略~  作者: ヨロヌ


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タクの日常 その10


事の始まりは、タクが謹慎中に『まほ★まほ』へログインしていた時。

子供のプレイヤーが泣いているのを放っておけなく、話しかけて知った事件だ。


「うう………ゆみちゃん達を攻撃しちゃったの! 攻撃するつもりじゃなかったのにっ……ゆみちゃん達は信じてくれなくてっ……!」


その時、裏切りを意味するタロットカードの『悪魔』が飛び交っていたという。

証拠もないし、少女の友達も彼女を裏切りものだと嫌がらせをして、学校にすら行くのが怖くなり、引きこもった状態になった。

そう、涙ながら訴える少女を見捨てたくないと、タクは立ち上がった。

他にも同様の被害を受けた子供プレイヤーがおり、彼らと協力して犯人探しをする事に。


その最有力候補が『牧野』だった。

協力者の少年プレイヤーがタクに伝える。


「この人、結構凄腕のプレイヤーみたいで。普段は普通のタロットカードしか販売していないんです。呪いを簡単に解いてしまう人が、低ランクのカードを販売しているなんて怪しいですよ」


「えっと……呪いって?」


「呪いを知らないんですか?」


「あはは、ごめん。僕ってどんくさいから、情報に疎いんだ。君の方が僕より凄いんだよ!」


はぁ、と子供ながら訝しげな表情をする少年は、話を戻した。


「とにかく、技術力があるプレイヤーって事です。彼ならタロットカードの追加効果の付与方法も把握している筈です。まずは直接接触をしないで、彼に警告をする事から始めようと思います」


「なら、僕に任せて! 僕が危険なカードを売らないように言ってくる!!」


「待って下さい! 直接接触するのは危険ですよ!」


「だからだよ! 君たちを危険な目に合わせない為に、僕だけで向かうから!! 大丈夫、僕を信じて!」


「いやあのだから」


少年の制止を聞かず、ドヤ顔の自信満々でタクは牧野の家へ向かったのだった。



タクは久しぶりに【翡翠の都】へ()()()()()

元々、彼はここからスタートしてのだが、それすらも記憶の片隅にやって「雰囲気のある場所だなぁ」と最初、地に足をつけた時と同じ感想を繰り返していた。


「えーと……ここかな?」


そして、牧野の店に到着。

案の定、何も設置されていない、ありのままの庭を見てタクはむっと苛立つ。


「なんだこれ。全然手入れされてないじゃないか。庭も雑草が生えてて、店の外観も蔦まみれ……これじゃあ、お客さんが来ないよ!!」


当初の目的を忘れ、庭の一件で突撃しようとした矢先だった。


「きゅん!」


「へ?」


ひょっこりカーバンクルが草むらから顔を出した。

ん~~っと背伸びをした後、嬉しそうに「きゅん!きゅん!!」と鳴きながら、庭を楽しそうに駆け回る。伸び放題になっていた草むらへゴロゴロ転がる。

更に妖精が現れ、妖精と一緒に遊ぶ光景が広がっていた。


タクは一連の光景をポカーンと眺めるしかなかった。

何故なら、タクが何とかしないと!と刈り取る気満々だった草むらをクッションやカーペットのように楽しむカーバンクルの姿を見たら、思考が停止してしまったのである。


「タクさん! 大丈夫ですか!!」


「えっ……えーと、うん? 大丈夫……??」


子供たちは、離れようとタクを促すのだが。

タクは「でも」と駄々をこねるように庭をチラチラ見る。

子供たちも、何かあるのかと観察する。そしたら


「わっ! カーバンクルだ!!」


「嘘!? どこどこ!」


「ほら、あそこ!」


「ちょ、ちょっと皆、静かにっ。学校の先生が言ってたじゃないか、カーバンクルは警戒心が強いから大声を出したら駄目って」


しっかり者の少年プレイヤーが小声で注意し、皆が「そうだったッ」と小声になった。

カーバンクルは遊び疲れたのか、草むらの上で丸くなり寝息を立てている。

興味津々で観察したり、今の内に画像や動画を取る子供の姿があった。

彼らの姿を見て、タクは何かしなくちゃとなる。


でも、何をすればいいのだろう? この状況で何をしたら喜んで貰えるだろう??


必死に考えた末、カーバンクルについて店の店主たるプレイヤーに尋ねよう! と思い。

カーバンクルを起こさないよう、庭を通って店に入ろうとした。

しかし……


どん!


「うわっ!?」


見えない壁によってタクは突き飛ばされてしまう。

今回に限っては、タクの大声でカーバンクルが目覚めてしまい、カーバンクルは侵入しようとしたタクに気づいたようで姿を隠してしまったのだ。


「タク兄ちゃん!! 何やってんだよ!」


「あ、あはは! ごめん……」


「ごめんじゃない!」


「え?」といつものように、分からない態度を取ろうとしたタク。

タクが普段「え?」だの「えっと?」と、とぼけている()()()()()()態度は、彼の中では「どうして怒っているの?」「何が駄目なの?」という意味合いが含まれていた。

だが、子供たちは素直なので彼の疑問を砕くような言葉をぶつけた。


「カーバンクル、どっか行っちゃったじゃん!」


「もっと見たかった!!」


「あたし、まだ写真とってなかったのに!!」


「ご、ごめん! でも中にいる店主さんにカーバンクルの事、聞こうと思って!! ほ、ほら、皆も知りたいと思ったから!」


「後でやればいいじゃん!」


「今やる意味なかったって!!」


「馬鹿じゃねえの!?」


「サイテー!!」


「あ……その……」


中では泣き出す子供も現れた。

タクが宥めようとすると「タク兄ちゃんのせいだもん!」「タク兄ちゃんのせいでカーバンクルが逃げた!」と拒否する有り様。

これにはタクはどうする事も出来ず、俯く他なかった。

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