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VRバイターが往く!~近未来の生存戦略~  作者: ヨロヌ


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タクの日常 その6


タクと共に残った面々でモルを捜索。

実際は、タクが『テイム』を使用すれば直ぐに発見できたものの、彼はスキルの概要を確認しないタイプなので彼らは自力でモルを捜索するハメになった。


そして、やっとのことで発見したモルだが……


「モル! こっちにおいで、大丈夫だよ」


木の幹の下が空洞のようになっており、モルはそこの奥ですっぽり収まる形で動かなかった。

何度も、どんな風にタクが呼び掛けても澄ました顔のまま、動かないモル。

タクは事を重く受け止める。


「……僕がモルを落としたせいだ。また酷い事をされると思って、出て来てくれないんだ」


落ち込むタクをミミたちは宥めてやる。


「タクは何も悪くないにゃ!」


「あの時、琴葉の奴が急に話しかけたからだろ? アイツの方が悪いじゃねえか!」


「タク兄。私が魔法でモルを出してあげるから、落ち込まないで」


最後のシィの提案に対し「駄目だよ!」とタクが叫んだ。


「そんな無理矢理外に出したら、モルが精神的に傷つく……モルモットは臆病でストレスがかかりやすいから、丁寧に扱わないと。モルが落ち着くまで待ってあげよう」


そんなタクの優しさに感動する彼女ら。

だが……ふとミミがある事に気づく。


「た……タク? え、なんで??」


「ミミ? どうかしたの??」


「だっ、だって! タクのアイコンが()()()()()()……!!」


「「「えっ!?」」」


タクのプレイヤーアイコンが赤い。

即ち、タクがPKを行ったという証である。

そう……王国内にてタクのテイムモンスターが暴れ回り、他プレイヤーたちを蹂躙していた。


運営が修正を行うまではタク自身が実行犯ではない為、PK判定を下されなかった。

しかし、今回の一件でテイムモンスターの判定が修正されるのと同時に。

飼い主たるタクにもPK実行犯の判定が下されてしまったのである。


これで漸く、タクは自身のログを見返して事態を把握したのだ。


「そ……そんな……ゴブたちが……どうして……どうして……!」


彼は基本通知をきっている。

琴葉に注意されている部分なのだが、作業に集中したいタクは、通知音やログが目障りになり、作業中は切って、そのまま。なのが常であった。

ゴブリンのゴブを含めたモンスターが、他の動物を倒して経験値の糧にした事、他プレイヤーをPKした事。

あまりの事実に、タクは涙が抑えられなかった。


「僕はこんな事するつもりじゃなかったのに……! このゲームおかしいよ! どうして普通にテイムが出来ないんだ!!」


他VRMMOならこうはならなかった。

どうしようもない言い訳だが、実の所、他のミミたちも同じ事を感じていた。


彼女達は元々プロプレイヤー。

VRMMOの操作感には慣れている方ではある。

しかし、そんな彼女たちですらWFOの独特な世界観と操作に不便さを感じていた。


「うん。タク兄の言う通り。私も魔法が全然上手く出来ない」


エルフのシィは、エルフなのに全く魔法を使いこなせなかった。

それは彼女が闇魔法を選択してしまったからである。

闇の魔素は、魔素の中で最も重い。コントロールしようと持ち上げるだけで苦労する。


「うにゃ……確かに、色々覚える事が多くて大変にゃ」


獣人のミミは、せっかくの大罪スキルを全て使いこなせていない。

七つの大罪を初期状態から取得しているのだが、一気に七つの属性を把握し、全てを使いこなすなんてのは単純思考の彼女には無理な話である。

謂わば、宝の持ち腐れ状態だった。


「はぁ……あたし、腹減っちまった。タク、飯出してくれ」


オーガのアキは、直ぐに満腹度が減ってしまう。

ちょっと動くだけで空腹感が発生してしまう。最早食事が一種の作業になるレベルだった。

他プレイヤーが『小食』スキルを欲しがるのは無理がない。


タクがアキの為に予め作っておいた食事を取り出す。

そして、彼女達へ告げた。


「アキが食べ終わったら……琴葉を追いかけよう」


「え!? も、モルはどうするの!」


「モルは……置いて行こう。モルも目を離すと穴を掘って畑を荒らしちゃうんだ」


「そんにゃ……」


「本気か? タク」


「だって言う事を聞いてくれないんだ。仕方ないよ……このゲームは他と仕様が違う。もうテイムはしない。皆、迷惑をかけてごめん。琴葉にも……謝らないと」


流石のタクも学習をした。

学習するまでに膨大な勉強料が払われてしまったが……

反省した彼を見て、彼女らも同情する。


「仕方ないよ、タク兄。仕様が普通と違ったもん」


「気にすんなタク。PKだって事故みてぇなもんだろ。落ち込むなって」


「タク……気持ちは分かったけど。本当にモルを捨てちゃうの……?」


「……うん」


タクはモルとのテイムを切った。

モルの方は、相変わらず澄ました顔で穴の奥から動かない。

それを見たタクは、あれだけ世話したのに、全然懐いていなかったんだ、とモルへの気持ちが完全に冷めた。

ここまでお読みいただきありがとうございます。

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