【まほ★まほ】キャラクリエイト
次は『まほ★まほ』の事前登録を行う。
いきなり低予算な真っ暗空間のまま、ウインドウ画面だけが表示される。
[これより事前登録のキャラクリエイトを行います]
[まず貴方の性別をお願いします]
LGBTに配慮してか、中立的な性別込みの選択もあるが、普通に男性選択。
続いて、体格、外見設定。
あ、これ面倒くさい奴。
一応、自分の体格基準でお願いしますって音声認識できるか試したけど反応なし。
ここで予算節約すんのやめろ! キャラクリエイトに自由度ないの駄目やろ!
ええい、仕方ない。
まずはランダム設定を選択。そこから体格を調整していくスタイル。
185cmって具体的な設定できひんのか……?
使用感を確認する為に、練習モードで適当に体を動かす。
む、体感は控えめだな。変な挙動もない。
今の所、変なバグはなさそう。あとは……目元が不良みたいにきついから脱力感ある感じにする。
よし、間抜けっぽい。
外見は深緑の癖毛で金眼の男性になった。
プレイヤーネームは……ボブにしようかなと思ったけど、ボブっぽい顔じゃないから止めた(ボブっぽい顔ってなんだよ)。
緑な感じだから草野……いや『牧野』でどうだろう。お、一発で登録できた。
プレイヤーネームが一発で通るの、ちょっと気持ちがいい。
[取得魔法を選んでください]
これも緑魔法の『ジェイド』一択。
<ジェイド>
決して万能ではないけれど、攻撃も防御も回復もできる。
ものの加工だって出来ちゃうバランスのいい魔法だよ。
そうそう、バランス型の魔法。こういうバランス系統ってイマイチな評価になりがちなんだよな。
不安はあるけど、その時はその時で。
他プレイヤーに魔法変えたら?って指摘されても、アバターに合わせてるんです!って主張すればいいし。
[次はキャラクター背景の設定を行います]
すると空間がアンティーク調の電車内に変化した。
いつの間にか、私は設定したアバターの姿になっていて、座席に座っている。
向かい合わせに配置されているボックスシートで、窓の景色は―――何と雲の上。
上空を走る魔法列車という訳だ。
「ここ、座ってもいい?」
中性的な青髪の人物が私に声をかけてきた。
選択肢が表示され「いいよ」「駄目」「……」の三択から選ぶ形式。
なんか、このシーンが『うん十年前の某ゲームのオマージュじゃんwww』とユーザーに突っ込まれていたが、何のゲームか私は分からなかった。
無難に「いいよ」を選択する。
「ありがとう。よいしょ……と。君、これからどこに行くのかな?」
青髪の人物が尋ねると六つの都市の選択肢が表示され、都市の概要がある。
成程、ここから上京する場所を選ぶと。
それぞれの都市が属性に合ってそうだから、ジェイドの都市を選ぼう。
【翡翠の都】
豊かな自然に囲まれた古代都市。その始まりは千年前に及ぶ。
豊富な魔力資源がある一方、強力な魔物が出没する。
「【翡翠の都】か! あそこは静かでいい場所だよ。空気も美味しい。ちなみにだけど何をしに【翡翠の都】へ?」
[のんびり暮らす為に]
[勉強の為に]
[自分のお店を出す為に]
選択肢は上記の通り。
お店を選択すると店のジャンルを設定する事になる。
勉強を選択すると各都市にある学園へ入学できる。
のんびり暮らす為は、何の職業設定もなく、選択イベントが終了する。
結構、重要な選択肢だったりする。
普通は[のんびり暮らす為に]か[自分のお店を出す為に]だろう。
しかし、この二択はVRバイターである事を露呈しやすくなる要素だ。
引きこもって作業する事が怪しまれる要因。
だからといって学園生活をしたいかと問われると、いや、別に……って感じだ。
ここはあえて
[自分のお店を出す為に]
これを選択する!
クリエイト専門活動をするだけなら怪しまれない。重要なのは立ち回りだ。
「いいねぇ、自分のお店! 何のお店を出すんだい?」
[料理]
[衣服]
[武器]
[薬品]
クリエイト要素は簡易的に、というのがVRMMOの主流になりつつある。
一方で、手間のかけたクリエイトには特殊な効果が発生する隠し要素もある。
こう見えて一人暮らしだから自炊はできる方なのだ。
[料理]の選択も可能だが、料理は【ヴァルフェリアオンライン】でもやるよな、と考えたら択から消える。
[薬品]は時間をかける要素ありなので、いい方かもしれないが、これもまた【ヴァルフェリアオンライン】で出来そう。
となると。
私は[武器]を選択する。
「へえ、武器かぁ。あそこは資源が豊富だし、いい武器を作るにはもってこいだよね」
一応[武器]も時間をかける要素がある。一先ずコレでいこう。
「あ、ボクはここで降りないと。今度【翡翠の都】に立ち寄ったら君のお店に寄ってみるよ。それじゃあ」
[これにて事前登録のキャラクリエイト設定が完了いたしました]
[『まほ★まほ』のサービス開始は2×××年4月1日18時です。お楽しみに!]