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VRバイターが往く!~近未来の生存戦略~  作者: ヨロヌ


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【ヴァルフェリアオンライン】テイム


それは夕食時、いつも通り部屋から食堂に向かう途中、ちよこさんと出くわした。

珍しく、彼女が私に話しかけて来る。


「あ。今日大丈夫でしたか?」


「……はい?」


「ほら、外でモンスターが暴れてたじゃないですか。私も布の買い出しに行ってたら、巻き込まれちゃって……」


え? 外にモンスターが??

気づかなかったんだけど? だって物音とか何も聞こえなかったし!?

困惑しながら、私は彼女に返事をする。


「すみません。ちょっとログアウトしてたので、その間の出来事だったら分からないですね」


「ああ~、運が良かったですね! 本当に大変だったんですよ~」


意外とフランクに話しかける人だなぁと思いつつ、私は食後に掲示板で概要を把握する。

……例の問題児、タクの仕業かぁ~。

しかも、先日のテイムイベントでゲットした奴が害悪化したパターン!


これには運営も想定外だったようで、改めてタクが起こした騒動の概要と、プレミアムパックと『テイム』の仕様を説明していた。

簡単にまとめると、下記の通りである。


・テイムした動物、モンスターは直ぐにプレイヤーの命令を聞くようにはならない。

 理性的な生物の方が命令を聞きやすく、本能的な生物ほど命令を聞かない。

 本能的な生物を精密にコントロールするには『テイム』のスキルレベル依存となる。


・理性的な野生動物を『テイム』するには友好度が必要になる。

 テイム対象がテイムを受け入れなければならない。

 今回の場合、テイムエッグという強制的にテイム状態になる仕様だった為、多頭飼い状態が

 成立してしまっただけである。


・プレミアムパックで敷地内に侵入を防ぐのは他プレイヤーのみ。

 それ以外のNPC、モンスター、動物は侵入可能となる。


ただし、今回の一件で『テイム』を悪用した害悪行為を懸念した運営は、プレミアムパックで他プレイヤーが『テイム』したモンスターと動物も侵入禁止にすると報告した。


むしろ、今まで侵入できたんかい!?

出来てしまったから、今回の悲劇が起きたのだが……ううむ、しかしだ。

今回の件で、改めて私も『テイム』が容易ではない事を理解する。

故に、躊躇している。


最終的に……もう、どうでもいいや。となってしまった。


ペットをお世話するのは当然ではあるが、VRMMOで武器の為に飼育しなきゃいけないって、冷静に考えたら、無茶苦茶面倒くさくない?と。

他VRMMOならテイムしたら大人しくなって、はい終わり。なのに……

しかも、鳥って鳥頭だから知能が……うん。やめよう。


ランダムエッグは……これ、売れる?

あ、特殊アイテムだから売れない……取り敢えず、まあ、とっておくかぁ。


<称号:一攫千金!>を獲得しました


ふぁ? 急にどうした??

……もしかして。

オークションを確認したら最終的に500万Gで取引されていた。


え!?

もう()()()()G()なんて大金持ってる人いんの!!?

わ、わぁ……怖いよVRMMO……





「タク……ねえ、タク!」


遠征中。

琴葉は苛立ちを隠さずにタクへ声を荒げる。

昨日のことで怒っていないんだ、とタクは油断していたので、ビクッと反応した。

タクは思わず、抱きかかえていたモルを落としてしまう。


「あっ! モル!!」


「モルなんかどうでもいいでしょ!?」


琴葉の言い分に怒りが芽生えたタクがムスっと拗ねた表情で反論する。


「モル()()()って酷いじゃないか! モルは僕たちの仲間だよ!!」


「さっきからモルを抱えてばっかり! 戦闘を私達にやらせてるのはどういうこと!?」


「そ、それは、モルはまだ戦える力がないから、僕が守らないといけないんだ。畑やギルドに残していく訳にもいかないし……それにモルモットは寂しがり屋らしいから、きっとモルモーも同じで」


「だったら、どうして()()()()をテイムしたのよ」


「ちょ、ちょっと琴葉! さっきから酷いよ!! モルを悪く言わないで!」


「遠征に行くって分かってたのよね? それで畑を守る動物が欲しかったって。じゃあ何で、何も役に立たないモルモットなんてテイムしたのよ。本っっっ当に意味が分からない。私達が戦って、自分はモルモットを撫でてるだけ! 見ててイライラする!!」


琴葉の正論にどうにかマウントを取ろうとタクが叫んだ。


「僕が皆の荷物を持ってるじゃないか! ドワーフの僕が荷物持ちをしなかったら、皆はこんな風に戦えてないよ!!」


「そんなの、他の人にやって貰うわよ」


「え」


「タクの代わりのドワーフなんて他にもいるの。ああ、今は自分が荷物を持ってるからってマウントは通用しないわよ。いざとなったら、マーケットで食糧も確保できるんだから」


「ちょ、ちょっと……琴葉――」


タクがふとした時、ある事に気づいてしまった。

モルがいなくなっている。

さっきまで自分の足元にいた筈なのに。

慌ててタクはモルを呼び掛けるが、ここは木々が生い茂り足元が見えにくい森の中。

こんなところでモルを見失っては――


「モル! モル!? どこにいるんだ、モル!」


「モルも貴方に嫌気が差してどこかに行ったのよ。ほら、今度は自分で戦って……」


「冗談じゃない! モルを見捨てるもんか!!」


琴葉はもうどうでもよくなってしまった。

なので、言い放つ。


「言っておくけど、私は遠征を続けるから」


「モルより遠征の方が大事なの!?」


「当たり前でしょ!? タク、貴方は社会人の自覚はあるんでしょうね。私達は、個人のギルドで活動しているんじゃないの。企業のギルドに所属して活動しているのよ」


「企業でも個人でも変わらない! モルを、仲間を見捨てるような真似なんかできない!! ……僕はモルを探す!!」


こうなってはただの拗ねた子供である。

対する琴葉は、拗ねた子供の母親のように呆れて突き放した。


「そう。勝手にしなさい」


二人がそれぞれ仲違いしたのに、他の面々も呆然としてしまったが、ミミたちはタクの方を心配して琴葉を無視してしまったのだった。

捕捉説明

<称号:一攫千金!>

取得条件 一度に100万G以上を獲得する

効果 『商人の服』獲得

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