【ヴァルフェリアオンライン】ギルド
私はすっかりある問題を忘れていた。
『エンヴィーバード』を育てなければならない事を。
ドワーフのフルコースの一つにある『エンヴィーバード』を食べればゲーム内時間半日スタミナ消費なし。
破格の隠し要素を活かせない。
とくにVRMMOの特性上、スタミナ消耗がないのは素晴らしい。
ただ、目立ってしまうのも特徴だ。
フルコースに該当する食材を食べると勝手にエフェクトが発生して、ずーっと消えない。
以前活動していた時は、他プレイヤーの視線を掻い潜っていたから掲示板などでも目撃情報は出ていない……筈。
しかし、バイターの仕事中とか畑作業中、クラフト中は疲れ知らずになれる。
『エンヴィーバード』はキャサリンから卵を貰っているので量産するのは簡単。
だけど……面倒な。
卵は料理に使えるのはいいとして『モップシープ』と同じく、後輪を使って環境管理しないと駄目。
しかも、かなり卵を産み落とすので、迂闊に放置もできない奴。
ううむ……どうしたものか。
そんな悩みを抱えながらドワーフのダンテのアカウントでログイン。
『ゲルヒィン』の様子を観察しながら、現地の食材を入手しに向かった。
おお、これはこれはプレイヤーが多い!
クエストを熟したり、クラフト修行をして店舗取得を目指していたり、食事や観光を楽しんで、ギルドの交流も『逢魔鴇』並に活気ある。
私は別に他プレイヤーとの交流をしたくはないけど、人気なさすぎるのもアレだし。
こんな具合にプレイヤーがごった返している環境の方が目立たないまである。
うんうん。まさしくVRMMOって感じだ!
さて、私も私で色々やってみよう。
いつも通り、ダンテは肉弾戦で戦うスタイルなのだが、今日からダンテには装備をつける事にした。
プレミアムパックの無料ガチャで出たAGIアップの奴をね!
あ、そうそう。プレミアムパックには応援がてら加入しましたよ。
ただし、ノーブルのオギノのアカウントだけね。
PN:ダンテ/ドワーフ
Lv25
HP:5000
MP:160
ATK:260
DEF:260
INT:16
STR:140
VIT:140
DEX:130
AGI:16(+170)
基本魔法:『闇魔法34』
種族スキル:『想像感覚』『制作技法』『荷物袋』『武器:拳35』
個別スキル:『観察22』『道具作成31』『毒耐性(小)11』『熱耐性(小)35』『盗難防止』
装備:俊足の革靴(AGI+20) 羽衣フード(AGI+150) 無重量の手袋(闇魔法補正値+30)
こうしてみると課金ガチャの装備補正は強い。
ドワーフでも結構素早く立ち回れてしまうのだ。
個別スキルにあった『図面作成』は『闇魔法』のスキルレベルアップ素材に使ってしまう。
バイター疑惑ってのもあるけど『図面作成』以外にもバイターでスキルレベルが上がるものは素材に使っていくのが基本だ。
あとは『盗難防止』。これもガチャで入手した必須スキル。
プレイヤーが多いと盗難も多発する訳だ。
よし、行くぞ!
私は久しぶりのWFOでの戦闘を開始。
溶岩エリアにいるゴーレムなどの堅い装甲を持つモンスターに『闇魔法』での貫通攻撃を与える!
小回りが利いているのもあって、序盤にいるモンスターは余裕だ。
次に、奥の方にいるマグマに潜む中型サイズのトカゲや、実体のない炎やマグマの塊のようなモンスター。
マグマに潜んでいる敵は、モグラ叩き形式で相手すればいいが。
非実体のモンスターは『闇魔法』を使用しなければ難しい。
おっと、上空からプテラノドンみたいな飛行モンスターが攻撃をしかける。
コイツは接近攻撃を仕掛けるので、そこで攻撃を当てれば問題ないぞ。
最深部には大型のドラゴンがいるのだが……今日はここまで。
復帰戦だから、調子に乗らないようにする。
帰りのスタミナも考えないとね!
帰路の道中に『香石』を入手してからギルドに足を運んでモンスター素材を換金。
最後に食事をしよう!
前立ち寄っていない新たなお店で食事しようとうろついていたら……ちょっとした人だかりが。
それは『ギルドエリア』だ。
あまり触れていなかったが、冒険クエストを受けられる国家ギルドとは違うNPC個人経営のギルドを含めたプレイヤーが設立できるプレイヤーギルドは、『ギルドエリア』に区分けされているのだ。
例の、タクたちが所属していた企業ギルドもここにある。
ギルドには興味がないし、タクの件もあって足を運ぶ気はなかったのだが……
ささっと立ち寄ってみる事に。
ほう、成程~……
今までオギノのアカウントではマップ上でしか観察していなかったが、こういう雰囲気なのね。
上手い具合に企業ギルドと個人ギルドが入り組んでいる。
そして、それぞれのギルドにて店頭販売を行っていた。
しかも……種族が様々入り乱れ状態。
特にエルフ、ハーフリング、ノーブル……他の場所ではNPCとの交流関係上、立ち位置が難しい種族が多くいる感覚。
実際、どういう販売が行われているかというと……
「こちら、毎日のお食事をお届けするサービスを提供していまーす! まずはお試しセットから始めてみてはいかがでしょーか!!」
おお……そ、そう来たか!
毎日の食事を自力で用意するのが面倒な人向けの食品提供サービス!
清潔度、もとい洗濯が面倒な人向けの洗濯サービス!
エルフなどの立ち位置が難しい種族の為のリスポーン地点となる居住区提供サービス!
WFOの操作方法になれない、NPCと交流して教わるのが嫌な人向けの講習サービス!
などなど……本来運営がやるべきプレイヤーが困っている要素を狙ったもので、集客している。
道理で人の集まりがいい訳だ……私も利用してみようかな。
現状、ゲーム資金には困っていないし、居住区に不満もないのだけど、逆にゲーム資金の使い道に困っている状態。
たとえば香辛料の入手には労力がかかるので、手間が省ければ有難い。
って、な、なんだ?
とんでもない人だかりかと思いきや、プレイヤーからNPCのドワーフまで、結構な数があるギルドの前に集結していた。
一体何目的なんだ……ん!?
遠目から確認できたが、ギルド専用の店頭に並んでいたのは『香辛料』!
しかも、あれは逢魔鴇原産の赤鬼が勝負で使う奴だ。
何故、あれを目当てに……!?




