【ヴァルフェリアオンライン】明暗
「え? いきなり、何の話です……??」
本当に何の話をしているか分からず、私はコーデリアさんに聞き返してしまう。
コーデリアは表情を変えずに言う。
「チョーコはともかく、オギノーは他の連中から話を聞いてないの」
「ないです」
「チッ」
え!?
舌打ち!!?
表情変わってないけど、今舌打ちしたよ!? コーデリアさんが!!?
というか、門下って何の話だ。ノーブル関係の?
「オギノー。神格の昇格は知ってるよね」
「いえ。そういった情報は」
マジで知らん。
図書館にあった情報に、そんなのなかったけど……?
もしかしてオーガの鬼神とか、ドワーフのフルコース的な隠し要素がノーブルにもあるのか??
「ノーブルはある程度したら、特定の神格に昇格する試練が受けられる。別に義務じゃないから法律には載せてないよ」
「成程……? たとえば、豊穣とかの神格になれる的な」
「うん、そうだね」
つまり、ノーブルの為のパワーアップ要素!
悪くない……悪くない、のだが。
コーデリアさんの話的に不穏要素がある。
「で……昇格する為には、誰かの門下に入る必要があるという事ですか」
「そう。豊穣の神格になりたい場合は豊穣の奴の門下に入るって事。ちなみに昇格条件には必須だから注意しな」
無理、では?
あの性格のノーブルの誰かの門下に入れるかもそうだし。
門下になるって事は弟子的なもんだから、なんかコキ使われそうな。
い、色々不安要素しかない!
すると、急に通知音が鳴り響いた。
コーデリアさんが告げる。
「誰がどの神格の一覧を送っておいたよ。さっきも言ったけど、やりたければやればって奴だから、無理してやらなくていいからね」
「ああ……分かりました。ありがとうございます」
「じゃ」
私が軽く感謝を伝え終えた矢先、コーデリアさんは創造言語の転移で消えた。
通常通り、飲料ゼリー販売に戻っていったのだろう。
さっとコーデリアさんから送られて来た一覧表を眺めてみた。
………うむ。想像通り。
一部想像通りではないのは、あったけど。
ニューソが豊穣神ではなく『雷神』だったとか、ヘーゲルさんが『炎神』だったりとか。
でも、そのくらいで……あれ?
私が再度目を通したら、やっぱり。『ヴェストゥーム』さんがいない!?
大盛料理を提供してくれる宿泊施設を営んでいるヴェストゥームさん。
彼女のように別に昇格していないノーブルも中にはいる。
って事か……しかしなぁ。
多分だけど、基本魔力の都合、私の場合は『豊穣神』とか『土神』『水神』とかの進路しかないのではなかろうか。
『土神』は図書館女性司書のエリーゼさんとヘルメースなど。
『水神』はコーデリアさんなど。
『豊穣神』はレーピオス……という具合だ。
……まぁ、やらんでええか。
それ以上にやるべき事があるから仕方ない。
畑仕事を終えた私は、一旦オギノのアカウントをログアウト。
オーガの不知火のアカウントでログイン。『逢魔鴇』にある私の家に転移する。
そう、残りの『黄鬼流』の試練に合格すればオーガの試練は終わるのだ。
ログイン率が芳しくないというなら、今がチャンス!
「すんませーん。『黄鬼流』の試験、予約が半年先になりますぅ。そんでもよろしいですか?」
なんでやねん!
『ジェルヴェーズ王国』があんなに過疎ってたのに『逢魔鴇』は大盛況だった!
私が居住を構えている『蒼ノ都』は居住条件が条件なので、プレイヤーが少ないのだけど。
それ以外は、全然違う模様。
中央の山脈では新規プレイヤーっぽい方々がレベル上げに勤しんで、『黄金ノ村』は無茶苦茶、人で溢れ返っている!
予約も案の定だった。
これ……あれか。
ノーブルの性能が面倒なのが、結構広まったせいで新規がいなかった現れてなかった奴か。
掲示板などを確認すると……ああ、そうか。
ノーブルが『ジェルヴェーズ王国』国籍取得すると国外に出られないって国際法を気にして、国に行かないでギルドに入って活動してるとかありますね。
な、成程なぁ~……
とは言え、アクセス数は最初期と比較すれば低下している模様。
SNSでも管理AIに対する意見が賛否あって、運営も絶賛炎上中で……どうなることやら。
明日はドワーフの国『ゲルヒィン』の様子を見に行こうかな。
その前に……私は『紅ノ荒野』へ立ち寄った。
激辛食材を求める為に向かうのである。
香辛料以外にも、辛さを備える野菜や肉、魚があるのは、ここだけだ。
食材の倉庫と呼べる『白ノ巾着』にいれられるものに重量は関係ないので『憤怒牛』などの部位が大きいものを買えるチャンス。
ところで……私は一つ思うところがあって彷徨っていたが、やはり無理か。
今後定期的に『紅ノ荒野』は立ち寄る予定があるので別の機会があればって事で……
私が気にしているのは、あのヘリオガさんについて。
結局、彼との関わりは分からないし『タロッツ・オブ・オンライン』での記憶は、やっぱり取り戻せない。
約束したなら……本当に申し訳ないが、思い出せませんって謝罪するしかないのだからね。




