【ヴァルフェリアオンライン】中止
FEOの問題は深刻だ。
これは私個人の問題ではないし、だからといって誰が悪いという訳でもない。
システムが……システムが悪い!
確かにほぼ全てのプレイヤーがイベントに参加して周回している前提なら、スタミナ問題は問題にならないのだけど。
あまりに一部に負荷がかかり過ぎている。
周回推奨しておいてこれって……
こればっかりは、運営にお気持ち表明しないと駄目なので仕方ない。
ちなみにFEOの周回は、ほどほどに終えていて、むしろ他キャラのエッセンスが欲しいところ。
今日は料理の納品と食材の育成を終え、料理の仕込みの合間にバイターの仕事をやってログアウトした。
そして、次は……再び『ヴァルフェリアオンライン』だ。
異邦人による会合の為、早めに夕飯と風呂をすませたぞ。
会合までに私は、国の方にある『エレメントチェリー』畑の様子を見た。
ついでに他プレイヤーの動向も観察しようと思ったのだが……全然いない。
私の向かいに花を植えている『ちよこ』さんの姿もない。
ログインしていない、というと……ちよこさんだけでなく、ナーサリーさんとキャサリンさんもだ。
現時点でログインしている痕跡なし。
あ、あれ?
やっぱり安全面とか管理AIの暴走でログイン離れしてしまった?
い、いや……ちよこさんは結婚されているし土曜日にログインとか……してたなぁ。
ナーサリーさんとキャサリンさんは……うーん。
一か月のロスってゲーマーにとっては大分萎える要因だよなぁ。
むしろ一か月あれば別ゲーに移住して、そっちでいいやってなる人はいる。
私は掛け持ちでやっているから、あんまり気にしてなかったけど……
「この辺りの『エレメントチェリー』を館の方へ移動させましょうか」
「ちゅら!」
そして、『エレメントチェリー』を幾つか選出し、それらをドラゴン君が運ぶのを手伝ってくれる。
館にある田んぼの管理に使う為である。
環境変化を意図して発生させたり、調整するのにも役立つのが『エレメントチェリー』。
農作物をやるには便利だが、それを活用できるスキルがないと意味がない微妙な存在。
私やノーブルのスキルがあるアレスにとっては、造作なく利用できる為、重宝する事になる。
あと、薬草の管理にも必須!
ふむ……多分だけど、エレメントチェリーの管理はニューソがやってくれたのだろう。
剪定しないと荒れている筈。
でも、そういった様子もないので一安心。
ただ……一定の周期で、エレメントチェリーは枯れる生態なので……どこかで植え直している。
一々調べるの面倒なくらいバラバラだったので、年齢別で並べ直す事に。
というか、エレメントチェリーも野菜と同じで栄養という名の魔素を吸い上げる性質だから、属性ごとに植える場所を変えていかないと駄目なんだってば。
でも、そこを何故かやってくれていない。
植物を口説いている癖して何故!
ある程度、時間が経過したので『マーケット』の様子を確認してみると……
お、おお……これは……
普通に新規のプレイヤーがログインしている痕跡が。
序盤の頃、汚れて洗濯するのが面倒な服をそのまんま売りに出す奴。
モンスターからドロップした素材を適当に流している奴、みたいなものもある。
あんな騒動があっても興味本位で新規登録する人はいるんだな……
「なぁん」
瑠璃さんが私に呼び掛けたので振り返ると、銀髪ツインテールの少女……
即ち『コーデリア』さんが私の畑の外側にいらっしゃっていた。
基本、町中にいる筈なのに珍しい。
そして、普段はキッチンカーの中にいるので分からなかったが、コーデリアさんは『後輪』でブランコのような形状を作って浮遊している。
中々メルヘンチックだ。
「オギノー、久しぶり。残念だけど今日の会合は中止になったから」
「お久しぶりです……え、中止ですか?」
コーデリアは淡白な声色で告げた。
「オギノー以外、来ないからね。やっても意味ないよ」
ええ……
た、確かにキャサリンさん達がログインしていないのは知っていたけど、他の人達も?
不安に感じて私は尋ねた。
「私以外誰もログイン……こちらにいらっしゃらないから、ですか?」
「まあね。『チョーコ』はコッチに来たけど、会合時間に来れないんだって。バルフォードは元々、会合時間には来れないと思ってたから除外。大体アイツは魔界に行こうとしてたから、来たら来たで処罰しなきゃいけないんだけど」
物騒な話を聞いてしまった。
何やってんの、あの人。てかそんな事する人に見えなかったよ、バルフォードさん。
聞きなれない名称だったけど『チョーコ』は『ちよこ』さんの事だろう。
成程、私とは別タイミングにログインされていたのか。
しかしながら、会合で何かを説明される予定だった筈。
それをコーデリアさんは伝えに来てくれたのだろう。
「オギノーは誰の門下に入るかは決めてるの」
……は?




