【ヴァルフェリアオンライン】告発
『管理AIからの内部告発により、業界が震撼しています。本日サービス再開となったVRMMO「ヴァルフェリアオンライン」ですが、サービス開始直後、管理AIより報道各所にサービス休止の詳細について内部告発が送られました』
は、はい?
なんか……えらい事になっているな。
私は昼食を作り終え、食事がてらニュースを流そうとテレビをつけると、そんな報道が流れていた。
管理AI……VRMMOに限らず、警備などのAIに任せている企業は珍しくない。
だが、内部告発なんて人間めいた事をしでかしたのは、珍しい。
しかも、一般企業ではなくVRMMOでの内部告発。
実際、例の休止騒動の詳細は調査中だと曖昧にされ、ユーザーから不満の声は多かった。
具体的な内容を私も知りたいところ。
報道を続けて聞いていると……
『一個人プレイヤーの開示請求の停止および開示請求に関連されるデータの改ざんが原因であるとの――』
ぶへぇ!?
私がやった開示請求!!? マジで!?
何かタイミングが不穏だと思いきや、本当にタク関連の問題だったんかい!
タクのバッグにいる権力者ってこの……『ヴァルフェリアオンライン』の企業なのか?!!
流石に陰謀論過ぎるかと頭の隅に追いやった可能性だったのに、ガチでそうでしたって、逆に嫌なんだけど!
報道ではSNSの荒れっぷりが流れており、世間体でもタクとの関連にたどり着いたユーザー達が電話凸をしているらしい。
タク関連の荒れは最近鎮火傾向にあったが、別方面からの再燃に企業もユーザーも困惑していた。
てか、そもそも、サービス休止中に詳細を公表しておけば、サービス再開直後に炎上とかならんでしょうに。
私も念の為、ネットに広まっている告発内容を改めて確認してみると。
……ああ、うむ。
どうやら開示請求を停止させたのは企業側そのものではなく、企業の社長の娘が我儘でやったという。
これ、社長の退陣要求に発展するヤバイ案件じゃん。
ついでに担当弁護士にも確認の連絡をしたら、開示請求は向こうに届いているそう。
加えて、ゲームのログインに関しての保証は約束すると、管理AIからの言伝まで添えられていたとか。
そっちの方は、もう弁護士任せなので私は関与しないけど。
問題はゲームの方なんだよね。
今後の展開どうなっていく事やら。不安しかない。
昼食を終えて、私は満を持してWFOにダイブイン。
おお……久々だなぁ。この感じ。
相変わらず快適さとクオリティだけは優れているというのに……で、いざログイン画面を見て、私は気づく。
こ……これ、不知火の家の方。不味い事なってる……!?
っていうのも、ゲーム内時間の経過日数が前回より220日経過している事になってる。
ゲームサーバーの方は、休止中も稼働し続けていたって事!?
『ええ、その通りです。流石はオーギノさん』
と、いきなりキャラ選択のところに姿を現したのは神性な衣をまとったブロンドヘアの女性。
懐かしい独特の呼び名を使う辺り、ノーブルっぽいなと思いきや。
彼女の頭部の金色の後輪が浮いているので、やはりノーブルで正解らしい。
「初めまして、私は管理AIの一柱『イーリス』と申します。この度は愚かな人間の外部干渉により、貴方の生活が脅かされ誠に申し訳ございません」
想定外の展開に困惑しつつ、私は返答した。
「あ、いえ。事情の方は現実世界で把握しておりますが……その、色々と大丈夫なのでしょうか」
「安全面の方でしたら問題ありません。その為に、本日付けで企業の内部告発を致しました。当事者の関係者である南井社長とその娘、南井里香。彼らは防衛システム発動の概要を公表せず、有耶無耶にしようとした為、こちらから処分を行いました。彼らの責任が問われるのも時間の問題でしょう」
ええ……全部計算の上……?
ここまで独断でやるってAIの判断が怖いレベルに達している。
更にイーリスさんが語った。
「当事者であるオーギノさんには、このような事態に発展した詳細を知る権利があります」
「ああ、それは大体予想がつくので大丈夫ですよ」
「いえ。貴方も把握できない部分が多分に含まれます」
どゆこと?
なので、イーリスさんから事情を聞かされたら、なんともまぁ、予想の斜め上をぶっ飛んでいた。
タクに自作のVRMMOを荒らされたから、VRMMOで復讐って!
別の意味でぶっ飛んでいるよ!!
最後にイーリスさんはAIだけど、呆れた風に話を締める。
「一個人の復讐とは言え、無関係の貴方に対し正式な謝罪をせず、開示請求を妨害するなどあるまじき行為です。我々は、どのユーザーも等しく見守っております。そして我々はユーザーの味方です。我々の事を信用して頂きたいです」




